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浅井長政がやってきた  作者: 杉勝啓
9/14

予言のDVD

用を済ますと長政は手を洗いたいと思いましたが、どうすればよいか分かりませんでした。そこで思いついたのは風呂場で手を洗うということでした。風呂場なら、使い方を昨夜、健太に教えてもらっていました。長政と直経、健太、大人2人と子供1人、狭い風呂では窮屈でしたが、意外に楽しかったのです。万福丸がもう少し大きくなったらあんな感じだろうかと思いました。万福丸のことを思い出すと茶々や市のことも思い出されました。

はあ、市に会いたいな。おそらく、直経も自分と同じで家族に会いたいだろうに。


長政がリビングにいると直経が座っていました。

「爺、手を洗ったか」

「いや、某もそう思うのですが」

「風呂場で洗ってこい。風呂場ならやり方が分かるであろう」

「そうですな、では」

直経は風呂場に向かい、間もなく戻ってきました。


直経が戻ってくると長政は何やら丸い板のようなものを持っています。

「お館様、それは」

「うむ。この箱はてれびで、この板はでぃーぶいでぃというらしい。ここに入れて、こう、操作をすると、昨日、見た芝居が繰り返し見れると健太とやらに教えてもらった」

「それは面妖な」

「とりあえず、やることもないし、見てみようと思う」

長政が操作をするとテレビに画面が映し出されました。


画面は織田信長と帰蝶の婚礼のシーンからはじまりました。どうやら、織田信長を主人公とした話のようです。話はどんどん進んでゆきます。


今川義元を破った桶狭間、美濃攻略、稲葉山城落城、岐阜城下の建設、足利義昭を奉じての上洛、そして、姉川の戦い。朝倉義景の自刃、ついで、浅井長政の自刃となった時、二人は顔を見合わせました。

「お館様、これは」

「ここで、わしは死ぬということか」


その後も話は続き、長篠の戦い、本能寺の変。織田信長を討った明智光秀が土民に殺されたところで、話は終わっていました。


「爺、どう思う」

「まさか、そんな」

「この芝居では姉川の戦いといっているがおそらく野村合戦のことであろう。それまでの話は我らが知っている話の通りではないか」

「しかし、某もお館様があの織田信長の首をかっ斬ったところを確かに見たのですぞ」

「だが、今にして思えば、あれは信長の影武者ではなかったのではと思うのだ。そうすればつじつまがあう」

「まあ、今はこうしても仕方がない。元の世界に、戻る方法を考えねば」

「その、お館様は、元の世界に戻りたいと?」

「何が言いたい」

「もし、お館様がこの世界にとどまるなら、お館様が自刃する未来もないということです」

「確かにここでいれば命は助かるしれぬ。だが浅井の誇りはどうなる。正義は我らにある。もし、元の世界に戻れて、この通りの運命があったとしてももがいてみせよう」


「ふう、やれやれ、因果な主を持ったものです。あの時、信長を殺しておけば」

「すまぬな。わずかな供回りで江北に会見にやってきた信長を討つことをわしの矜持が許さなかったのだ」








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