小谷城落城
浅井長政と遠藤直経は男に導かれるままま、ある部屋に入り、ティシャツとGパンに着替えました。
「洋子からだいたいのサイズは聞いていたけど、何とかさまになっているじゃないか。そうそう、ウィッグも持ってきたんだよね。あんな重い鎧兜の上に、髪までちょんまげなんだから。なりきるのもいいけどほどほどにしなよ」
な、なんだ、この男は馴れ馴れしい。しかし、この、衣装は軽くて動きやすいな。小谷に、帰ったら、この、衣装を、取り入れるのも悪くないな。などと考えていると洋子がやってきました。
「ああ、どこへ行ったのかと、思ったわ。なかなか、いいじゃない」
「ああ、洋子、で、これからどうする?なんならこの男うちで雇ってもいいぞ」
「え?あんたの店で。それもいいかもね。見た目はそれなりにいいからね」
長政と直経を、よそに勝手に話をしている二人に憮然とした表情をした長政。
「そんなことより、われらは、早く小谷に帰りたいのだが」
「何、まだ、そんなこと言ってるの?いい加減にしてよね」
はあ、この刀がなきゃこんなバカ相手にはしないんだけどね。洋子は長政が手に持っている刀をチラッ見ました。とりあえず、うちに連れて帰るか。
「龍二、ありがとね」
「おう、ま、うまい話になるといいな。鎧兜はそこのコンビニからお前の家に送っておくよ」
あの無礼な男は龍二というのか、長政が、思ったと同時に二人はタクシーに、乗せられました。
「おい、なんだ、これは鉄の箱が走っているのか」
「もう。いいわ。いつまでも、そうやってなりきっていれば」
二人が連れてこられたのは洋子が住むアパートでした。
な、なんだ、この建物は。なんだか小さな部屋がいくつも並んでいるようだが。長政はその一室に手をかけ、引こうとしましたがびくともしません。
「あ、ちょっと、人の家になんてことをするのよ。私の家はこっちよ」
洋子がカチャっとドアを回して開けました。その様子に長政と直経は目を丸くしました。
「爺、ここは本当に日の本なのか。今の戸といい、鉄の箱、それに鉄の箱から見た景色もおかしい」
「某も、何かがおかしいと思っていました」
洋子の部屋に入るとそこには子供がいました。どうやら、テレビを見ていました。そのテレビに長政の目は釘づけになりました。そのテレビには小谷城落城という文字があったからです。
な、なんだと、小谷城落城だと?