開かない扉
「もう、あのバカたち、どこへ行っちゃったのよ」
葉子は、長政と直経の姿を探していました。実は二人はまだ病院の入口にいたのでした。外来の時間が終わってしまい、戸は閉ざされています。
「爺、この扉は閂もかけていないようなのになぜ開からんのだ」
「そうですな。しかも全体がギャマンで出来ているようですし」
「ギャマンなら、割れるであろう、割って出るか」
「しかし、ギャマンは高価なもの。弁償を求められれば、小谷の蔵を空にしかねませんぞ」
「それは困るな」
と、その時です。その横の夜間入口から、イケメンのお水系の男が入ってきました。長政と直経に目を止めると声をかけました。
「あ・・あんた、浅井長政さん?」
「な、なんだ。この男は馴れなれなしい。奇妙な恰好をしておるし、それに軽そうな男だ。まあ、きれいな顔はしておるが」
「お前は誰だ?]
「ああ、俺、葉子に頼まれたんだけど、あんたたちののその重そうなコスプレのかわりに服を持ってきたんだけど」
長政と直経は顔を見合わせました。
「しかし、この鎧をおいておくわけにはいかん」
「それなら、心配ないって、宅配で葉子んちに送っておくから。こん病院コンビニもあるんだよね」
「た・く・は・い・・・こ・・んび・・に・・とは何じゃ」
はあ・・・なんだ・・・こいつ・・・頭がいかれてやがんのか・・・でも・・まあ、葉子の話だといい金になると言う話だしな。あわせてやるか。
男は、頭の中で考えをまとめたようです。