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浅井長政がやってきた  作者: 杉勝啓
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ここはどこ?私は浅井長政

「う・・ここは・・どこだ・・」

長政が気がつくと、周りは白い壁に囲まれている。身に着けていた鎧兜も剥がされている。奇妙な台の上に寝かされている。ふと横を見れば、同じような台に、遠藤直経が寝かされていて、大いびきをかいている。

「爺!無事だったか」

長政は奇妙な台から飛び降り、自分の傅役であり、浅井家の家老のその男を揺さぶって起こした。

「お・・お館様・・」

「気がついたか」

その時、カチャリと音がして、部屋に誰かが入って来た。

「市!」

長政は愛しい妻の名を呼んだ。

だが、様子がおかしい。つややかな長い髪は変わりないが、その慎みのない衣装はなんだ。素足をそのように晒して・・・

「気がついたのね。まったくコスプレもあそこまでゆくと滑稽だわ。本物の鎧・兜だなんて」

「こ・・こすぷれとはなんじゃ」

「はぁ・・あんな恰好、コスプレマニアでもなきゃしないわよ。それにしてもよくあんな重い物、身につけてられたわよね。あんたはともかく、こっちのおじいちゃんまで。年を考えなさいよ」

「な・・なんだ・・市、その蓮っ葉な物の言い方は。仮にも浅井長政の妻ともあろうものが」

「市?妻?なりきってるのかもしれないけど、人を巻き込まないでよね。この忙しいのに倒れていたあんたたちを見つけて救急車を呼んで、この病院まで連れてきたんだから、感謝してよね。それに私の名前は葉子。石倉葉子」

「きゅうきゅうしゃ・・びょういん・・」

「お・・お館様、某が思うにここは異国の国では、南蛮とも違う」

「だが・・ところどころわからぬ単語はあるが、しゃべっているのは日の本の言葉のようだが。それに市が外ツ国の言葉などしゃべれんだろう」

「いえ、あの娘もお方様によく似ておられますが、あの物言いといい、品の無さといい、とてもお方様とは」

「それもそうだ。市ならあのような慎みのない衣装を着たり品の無いしゃべり方をするはずがない」

「何をごちゃごちゃ、言ってるのよ。とにかく私も忙しいんだから。気がついたら家族を呼んで迎えに来るなりなんなりしてもらったら。先生は特に悪いところはないって言っていたわよ」

「それもそうだ。では、小谷に使いを出して赤尾にでも迎えに来てもらおう」

「ですが、ここは異国の地、小谷からどれほど離れているやら」

「娘、ここは何という国だ」

「はぁ・・何寝ぼけたこと言ってんの。ここは日本。ジャパン。ジャパニーズ」

「確か、南蛮人が我が国をそのような名を呼んでおったな。では、ここは日の本か。それにしてもこの部屋は変わっておる。ああ、もしかしてここは南蛮寺か」

カチャリと音がしてまた誰か入って来た。入って来たのはこの病院の医師だった。

「ああ、気がつかれたのですね。どこも異常はありません。会計を済ませたら帰って頂いたら結構ですよ。保険証を今度お持ちいただいたら差額はお返しいたしますので」

「それにしても、立派な鎧・兜ですな。それに刀も銘はありませんがかなりの業物ですな。それに手入れも行き届いているので、保存状態もいい」

この男も奇妙な格好をしているが、刀の良しあしがわかるとはなかなかの男か。

「そ・・そうなのだ。あの刀は私の手にしっくりなじんでいてな。あれで織田信長の首を獲ってやったのだ」

「は・・はあ・・面白い事をおっしゃる。確かに何人もの血を吸ったと見られますが。かくいう私もこういう骨董品には目がありませんでな。どうでしょう。私に譲っていただけませんか」

「それは出来ぬ。私も気に入っているからな」

「そうですか。残念ですな。あの刀なら1000万は出しても惜しくない」

「いや、万両でも譲ることは出来ん」

「ちょっちょっと、そんなにあの刀って、値打ちのある物なの」

「ああ、銘はないが、多分、名のある刀工がわざと銘を入れなかった物だと思われる。それにあの鎧・兜も新しく見えるが、安土・桃山より以前の物だ。こちらもかなりの物だ」

ほう。この男、なかなか分かっているではないか。だが、あづ・・ち・・もも・・や・・まとは何だ。

「まあ、残念ですな。気が変わられたらここへ連絡してくださいよ」

医師は長政には名刺の裏に電話番号を書いて渡すと、病室を後にした。

「ね・・ねぇ・・折角、こうしてお知り合いになれたのですから、私の家にでもきません」

こんなカモ見逃す手はないわね。うまくゆけば1000万よ。なんか、トロそーなコスプレバカと爺さんだしね。ふふふ・・

「いや、これから小谷に帰らねば、信長を討った以上、戦後処理が待っておる」

ありゃー、まだなりきってんのか。このバカ。あれ織田信長を討ったのって、明智なんとかじゃなかったっけ・・まあ、いいや、そんなことどうでも・・うまくおだてて・・・とりあえず、つきあってやるか・・え・・と、こいつ誰だったけ・・、

「そう言えば、お名前も聞いてませんでしたわ」

「名乗らなかったかな。浅井長政だ。浅井備前守長政。そして、この者は私の傅役の遠藤直経だ」

「浅井長政様に遠藤直経様ね」







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