第2話 第16章 変色する人と目玉焼き
「…………」
ジュージュー
「………」
朝起きた時から上の空が続いている。
魔獣のこと・カラピオのこと・武器のこと。
つじつまが合わない訳じゃないけど何故か腑に落ちない。
「……ルカも詳しく教えてくれないし…。
どうしたら良いのかな…」
そう。ルカと学校で会ってから何回も聞いたが
ルカは一向に
『いつか話しましょう』
と言ったきり何も言ってくれない。
それ程言いたくない事でもあるのか…はたまた、言ってはいけないのか。
どちらにしろ今の私には理解出来ない。
「はぁ…。まぁ、いつか分かるからいいかな」
答えがでない問に時間を掛けても棒に振るだけだ。
そう結論付けたその時―――
「柊さん!?焦げてますよ!火を止めてください!」
ルカが驚いた様な口調で叫んでいた。
「え?焦げるって何が……あー!?」
きゃー!朝御飯のベーコンエッグがフライパンの色と同化してる!
「あー!もう取れてよぉ!」
フライ返しで必死にガリガリと、焦げ付きを削る。フッ素加工が剥がれやすくなるから余りやりたくないけど…、もう手遅れかな?
「お待たせ……」
よし。何とか剥がす事に成功しましたよ。
……削った位置がくっきり残ってますが。
「…柊さん?お言葉ですがこれは…?」
もう、そんな分かりきった事を聞かないでよ…。
しょうがないから教えてあげよう。
「ベーコンエッグだよ?」
「真っ黒です!墨汁をソース代わりにした様にしか見えません!」
む、失礼な。目玉焼きには塩コショウでしょ。
まったく…これだからお子ちゃまは…。
「やれやれ…ルカは苦い物が嫌いなんて…随分お子ちゃまだね」
「苦い物が嫌いとか、そういう問題ではありません!これは炭ですよ!」
「何言ってるの?しっかりテカってるでしょ?」
「…あの。自分で言ってて悲しくありません?」
…分かってますよ!ちくしょー!
「だ、だって…自分のミスって認めたくないから」
「どこの政治家ですか!自分の非を認めてください。そうすれば私が魔法で何とかしますから」
「…ごめんなさい」
自分のプライドを捨て謝った。
一日の始まりである朝御飯を抜かす事が許せなかったからね。
「………えい」
焦げ付いた物体に魔法を掛けるルカ。
あの杖関係無いよね?
それとも戦闘用なの?
「はい、どうぞ。これで食べれますよ」
すっかり生き生きとしたベーコンエッグがお皿の上にこんにちわしてる。
やっぱりこうでなきゃね♪
「丁度トーストも出来てますし、良いタイミングですね」
「うん。それじゃあ食べよう?
いただきます」
カチャカチャ…
「ルカ?」
「はい?」
私としては物凄い気になるんだけど…
ルカは?マークを浮かべている。
「何でナイフとフォーク使ってるの?」
高級ホテルか!
箸を使いなさい、箸を。
「え?じゃあどうやって食べるんですか?」
「箸は?」
「箸……とは何ですか?」
…もしかして箸っていう概念が無いのかな?
「これだよ。こうやって挟んだり、切ったりして食べるの」
「こ、これですか?……んしょ…持ちにくいですね…?」
「最初は結構難しいからね~。取り敢えずこれで食べてみてよ」
「は、はあ。……ぁ…えい……ぅぅ…この!」
焦れったかったのか、ベーコンエッグをザクッと刺しそのまま口に運んだ。
行儀わる!
「違うよルカ。こうやって持つの」
見せられただけじゃ分からないよね?
箸って。
だから――
ピトッ
「っ!?ひ、ひ、柊さん!?」
「ほぇ?どうしたの?」
何か可笑しい事したかな?
使いにくそうだったから手で教えようと思っただけなのになぁ。
「こ、こんなのズルいです…」
ルカは俯いて顔を赤くしている。
風邪ひいたのかな?
ちょっと失礼して……
「うん…熱は無いね」
「―――!?――!?」
よかったぁ、体調に悪いところは無いようだ。
安心安心。
でも…
「………パクパク…」
ルカは口をパクパクと動かしたままフリーズしてしまった。
何だか鯉みたい。
ピピピッピピピ
あ、そろそろ時間だ。
「ルカ。行くよ?」
「…は、はひぃ」
……大丈夫…だよね?




