第0話 第2章 濁りゆく光
すいません、かなり長いかもしれません。
誤字も有るかも知れないのでどうか頑張って読んで下さい
光の国ルフェルティア王国と闇の国カラピオ国が戦いを始めた。しかし、その戦力には今までには無かった差が出来ていた。特攻隊と護衛隊を総動員しても尚一方的な展開となり、早くも王国は破滅のピンチを迎える。
所変わりここは王国の大広間、集会や祝杯の際に使われる本来神聖な場所なのだがその美しい景観は後数分で終わるだろう。
大広間の中央には二人の人間が身を寄せあっていた。その体の小ささから少女と分かるが一人の少女は藍色の剣を持ち、一人の少女は漫画などでよく見る杖を持っている事からユリアとルルだと分かる。二人は何か会話をしていようだ。
「ルル、ここはもう駄目かも…貴女だけでも逃げて」
「そんな!お師匠様を置いて逃げるなんて出来ません!」
「お願い…もうすぐグルニアがジーク軍とここに来るの、このままだと皆殺されちゃう。
だから私が時間を稼げばフリューナスの転生魔法で皆助かるの…」
「お師匠様…」
「行って…ね?」
「…分かりました。絶対、絶対後から来て下さいね」
辛い別れを払拭する様に二人は抱き合った。
数秒の抱擁の後二人は離れ互いに行動に移す。ユリアは剣を構え、ルルは避難した国民が居る神殿へと走る。
ルルの背中が見えなくなると見計らった様にジーク軍がユリアを囲む。
『別れの挨拶は済んだか?ユリア』
嫌味たらしく嘆く様に声を掛けて来たのはジーク軍指揮する大悪魔、グルニア。
「別れ?馬鹿な事言わないで、これは再会の約束だよ」
『だとしたらとんだ嘘つきだな、二度と会う事が無いと知っているのに』
「嘘かどうかは貴方が決める事じゃない!」
『…御託はもういい。後悔するんだな仲間と死ねない事を!』
両者の怒号を皮切りにジーク軍の兵士、イルビス、コルディアが一斉に飛び掛かった。
「てやぁ!」
しかし彼女は王国最強の護衛隊隊長、いくら頭数があるイルビスでもたった一太刀で真っ二つにされる。
『グオオォォオ』時折、防御に優れたゴルディアに剣が向くとキィーンと高い金属音が空をかける。
「いくら防御力があっても…私の敵じゃない!」
藍色の剣が青く光り、ゴルディアを切り刻む。《ティルオネ》は希望・信頼の剣、今のユリアに並大抵の武器で戦いを挑んだら瞬時にゴミクズと化すだろう。
「えい!たぁ!」
彼女はこの戦いに少なからず勝利を感じていた。イルビスやゴルディアなど眼中に無く、グルニアさえ倒せば良いと考えている。
このまま下級の相手を切り続けても使う体力と魔力何てたかが知れている。それに、グルニアだって自分を差し置いて国民を殺しに行く事は無い。つまり、自分がこの場で戦い続ければ何時かチャンスは来ると思っていた。
しかしそれは戦いの事だけに過ぎない。
『きゃぁーーー!!』
突如避難所である神殿から悲鳴が聞こえた。
「…!?まさか」
神殿からの悲鳴、戦いで精一杯だったユリアには予想外だっただろう。
そう…ジーク軍が神殿を襲撃したのだ。
神殿にはまだ兵士やルルか残っているがそれでも相手は何をするか分からない、下手をしたら人質を取られる事だってあり得る。
焦りを感じて居る時、その姿が滑稽に見えたのかグルニアが口を開いた。
『何をそんなに焦っている、貴様が錯乱すると剣が鈍るのではないか?』
まさかのアドバイスだった。
グルニアはティルオネの特性を知っていた。
その剣は希望・信頼を糧にする代わりに、焦りや戸惑いなどのネガティブ要素を感じ取るとか力が半減してしまう。ユリアを本気で戦わせる為にアドバイスをしたのだが、グルニアにとってはユリアの本気など大した事では無いと分かりきっていたのだ。
楽しむ為に。
それを察する事が出来なかったユリアは
「(っと…おちつかなきゃ。神殿に私が行ったらこの大群を連れて行くのと同じ、ここはルル達を信じて戦うしかないかな)」
揺らいでいた心を落ち着かせティルオネを握る。一刻も早く駆け付けたい衝動を抑え剣を振るい続ける。
一方神殿では
「これでラスト!」
丁度イルビスを倒しきったところだった。
「しかし…ユリアは大丈夫なのか?」
「やっぱり隊長だけでは心配だ、総員援護に向かうぞ!」
一人、また一人と言葉を発するにつれ兵士の士気が高まる、が。
「なりません!!」
一つの甲高い声が兵士の荒声を遮った。
「お師匠様は私たちを助ける為に一人で戦う事を決めたのです。だから、だからどうかお師匠様を信じて下さい」
今にも泣きそうな声でルルは兵士と国民に語りかけた。
「ルル…」
士気高まる兵士も自分たちがしようとしてた事に気付く。一種の裏切りだと言う事に。
空気が少し冷めたところである老人が口を開く。
「その通りじゃ、確かにユリア一人でジーク軍全てを相手するのは厳しいかもしれん。
じゃがユリアの持つティルオネは彼女自身の希望、そして我等の信頼を糧とする。
だから信じよう…ユリアを」
「国王様…」
口を開いたら老人は国王のフリューナス。彼の言葉に説得された兵士はその場に留まりただユリアの帰りを待った。
落ち着きを取り戻した神殿にある声が響く
『皆、聞こえてますか?』
ジーク軍と戦闘中のユリアの声だ。
彼女の姿が無いことからテレパシーだと分かる。…良い忘れてたがユリアも魔法に関してはトップクラスの実力を兼ね備える。
「おぉ、ユリア無事だったか…」
『フリューナス…はい、今の所は。それと…大切な話があるの』
「何じゃ?言ってくれ」
余程大切な話なのか次の言葉までの合間が
長い。
『フリューナス、転生魔法の準備をして』
「!!」
転生魔法というフレーズが上がると国民、兵士含め全員から驚きの声が挙がる。
「…勝てそうなのか?」
フリューナスだけでは無い、全員が固唾を飲んで言葉を待つ。
『あと少しかな…、準備が出来たら詠唱を始めてね。終わる直前でそっちに駆け込むから
』
「わかった…無茶はするなよ。」
『お願いします』
交信が終わると一際大きい声でフリューナスが魔方陣を描けと急かす。
『…ルル』
先ほどは全員に聞こえていた声がルル一人に集中する。
「はい、何でしょうお師匠様」
周りに悟られ無いようにルルもテレパシーで返す。
『campa cavallo che l'erba cresce 』
ユリアはとある言葉を発した
「っ!?お師匠様まさか」
『…』プツッ
ユリアがからの返信も無くテレパシーが途絶える。
「お師匠様!お師匠様ぁ!」
テレパシーが途絶えているので当然声が届く事も返って来る事も無い。
ルルの頭に浮かんだ不吉な二文字
【 自爆 】
ユリアは全員が逃げたら自身の魔力を全て解放してジーク軍を王国ごと吹き飛ばす気だ。
そんな危険な技を所持し、出来るのはユリアぐらいなのだから。
そんな事を考えていると
「魔方陣が描けたぞ!皆、中へ」
転生用の魔方陣が描き終わり、フリューナスが転生の詠唱を始める。
テレパシーを終えたユリアは目の前の敵にティルオネを向ける。
「残念でしたね、これで貴方は国民全員を殺す事が出来なくなりました。つくづく考えが分かりません」
目の前の敵、それはジーク軍率いるグルニア。何故二人は先ほどまで行ってた戦いを一時中断していた。
ユリアに国民全員を逃がす為に猶予を与えたからである。王国の破滅を目論むグルニアだがこれでは意味が無い。客観的・主観的に見ても何を考えているか本当に分からない。
「後悔しても遅いですよ?」
自信有り気に言うユリアだが内心焦っている。イルビスやゴルディアとの戦闘で思ったよりも体力・魔力を消費し、思わぬダメージを喰らってしまった。自爆用の魔力は残してあるにしても、まだ解放出来ない。国民を巻き込まない為には時間が足りなかった。
まだまだ時間を稼ぎたいユリアだったがその
願いはグルニアによって阻まれた。
『さて…始めようか。本当の殺し合いを』
グルニアの口角が上がる。
周りの空気が冷たい、この空間だけまるで闇の国の様だ。
「っ…」冷や汗がユリアの頬をつーと伝う。
静寂が辺りを包み一国を賭けた戦いだと感じさせない。
ポタッと汗が地面に零れる、スタートの合図だ。
「はぁ!」 『おら!』
始まりと共にユリアとグルニアは衝突する。
ユリアが振るうティルオネとグルニアが振るう闇の剣が音を立てる。
「っあ!」
しかし齢15の少女と齢100を越える悪魔では
その差は経験が上回った。
ユリアの体は長い滞空時間の後体制を立て直し、着地する。
「まだまだ!」
ユリアは強くティルオネを握る。勝利の希望に溢れているユリアの心を感じ取ったティルオネは今までより青く輝いた。
『そうで無くては詰まらないな』
余裕を見せるグルニアは手を前に翳す。
「魔法を使う気ね…」
通常なら魔法による相殺を選ぶのだが、そんな無駄遣いは出来ない。
残された手としてティルオネで受け止めるしかない。だがその様子を見たグルニアはある事に気付く。
『ん?…くくく、魔法相殺かと思ったのだがまさか剣で受ける気か?余程自信が有るのか…、魔法を使いたく無いのか…』
恐ろしい程勘を冴えてる悪魔だ。
ユリアの焦りはピークに達してきた、しかも錯乱を感じ取ったティルオネの輝きは濁り力が半減してしまった。
「…!しまった」
『図星だったか…』
翳した手の平から黒曜石に似た玉が造られる。
「くっ…」
死を予感したユリアに落ち着きなど無かった。
『早い死を弔ってやろう』
一層大きくやった玉が放たれる直前
『もうすぐで詠唱が終わります』
ルルからのテレパシーが来た。
『今の声はテレパシーか?』
「…そうよ。もうすぐ詠唱が終わって私以外の全員が助かる。貴方が仕向けた事でしょ」
『そうか…やっとか。ご苦労だったな、ユリア』
「…え?」
バシューン
ユリアが先ほどまで見ていた場所にグルニアは居なかった。代わりに背後から何回も聞いた声が聞こえた。同時に振り返ると黒い光線がユリアの腹を貫く。
ユリアは言葉を発する暇無く意識を失った。
僅か数秒にして決着はついた。、今までの緊張が嘘のようにあっさりと。
テレパシーの突然の途絶えにより神殿内はどよめきに包まれていた。
「そんな…お師匠様から言葉が返って来ない」
ルルはその不安を一番に感じていた。
「ユリア…まさか…!」
嫌なニュースが飛び交う、誰しもが認めたく無いが誰も反論は出来ない。
そんな中…
『随分時化た顔の国民だな』
皆が待ちわびた幼さの残る声ではなくドスの聞いた恐ろしい声が聞こえ、目の前にグルニアが現れた。
誰しもが確信した。ユリアが死んだ、と。