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第2話 第12章 ルル唯一の失敗

「よろしくお願いします♪柊さん」


「あぁ…う、うん。よろしく」


何故ルルがここに居るのか、何故六高の制服を着ているのか、まったく分からない。


「ルカ良かったね~マネージャー仲間が増えるよ」


「え!?本当ですか?嬉しいです!」


……口ぽかーんの私を放って置いて、会話がどんどん進んでいく。


ふむ……見たところ完璧にルルなのだが、それを確かめる証拠が無いな…。しかも名前がルカ、と呼ばれているのにいきなり…


『何故この体にした!?』


とは聞けない。


何か方法は無いものか……。


口に手をあて、うーんと唸っていると


「柊さんの入部はもう決定してるんですか?」


とルルが部長らしき人に尋ねた。


『うん。決定事項だよ』


…もう…決められた。しかもマネージャーとして。


「でしたら……マネージャーの業務をお教えしたいので、預からせてもらせますか?」


『いいよ~みっちり教え込んでね?』


つくづくルルの考えが分からない。


「え?…あの……」


「さ、行きますよ?」


私の意見を聞かずに手を引いてきた。

なすがままに連れて行かれる姿は何とも滑稽に見えるかも知れない。



無言のルルは私の手を引きながら、屋上に続く階段を上っていく。


何なんだこの空気。


……………そして屋上前の扉に着いたが、突然ルルが歩を止めた。


「少し待っていてください。…………」


そう言った後、ぶつぶつと何か唱え始めた。

呪文…か?それにしても何故呪文を使うのだろうか。


「……よし。では行きましょうか」


どうやら魔法を掛け終えたらしく再び手を引き、歩を進めた。




屋上というのは学生だけに限らず先生方にとっても憩いの場であり、常に人が居るものだ。


しかし、今日に限って屋上には誰も居らず殺風景なものだった。



屋上の中央付近にある対面式テーブルに2人腰掛けると、ルルが口を開いた。


「お久し振りです鍵山陸さん。あ、今は違いましたね。柊雪華さん」


「な、何でここに…居るの?それとさっきのルカって…?」


取り敢えず一番聞きたかった事を聞く。


「そうですね。まず名前の事ですが私はこの空間軸では"一ノ瀬ルカ"と名乗ってます。ここに居る理由は分かり易く言えば不安だったからです」


「不安って……そんなに信用されてないんだ…私って」


「いえ、その事では無くてですね…。覚えてますよね?貴方の設定」


「勿論だけど…それがどうしたの?」


そんな重要な事を忘れられる筈が無い。

寧ろ、墓まで持っていけそうだ。


「はい。その事で不安がありました」


「ど、どんな…?」


もしかして相当グロテスクなものなのか?

それより惨い事か?


「それは………」


ごくり…。

と生唾を飲み、次に来るセリフに備える。


さぁ、どんなセリフが来るんだ?


「私の家を設定し忘れました」


「………ほえ?」


余りにも突拍子な事を言われ、変な声が出てしまった。


「え?い、意味が分かんないだけど……え?」


「だからですね、設定の時に私の家を設定し忘れて住む家が無いのです」


「えぇ!?今までどこで暮らしてたの?」


「野宿してました」


その上のどや顔。呆れてしまう。


「で、でも六高に居るってことは住所とかの個人情報書いたでしょ?どうしたの?」


「適当な住所を書きました。まぁ、魔法で上手い具合に弄ったので簡単にはバレませんよ」


「ご飯とかは?住所無しだとアルバイトも出来ないよね?」


流石にこれはどうだろうか。少しはぐうの音も出るだろう。


「魔法を使って雑草を栄養満天のサラダ・肉や魚に変え、水道水を沸騰させて結界の中で湯俗みをしてました」


「……一人の女子としてそれはどうかと思うな…」


「冷食をお弁当に詰め込む姿は一人の女子としてどうかと思います」


うぐっ。その事を言われると何も言い返せない。


「そ、それは……時間が無くて…」


「はぁ…」


ルルは…

私が魔法を使って綺麗な弁当にしてなかったら大変な事になってましたよ、と言いたそうなため息が漏れていた。


「それで…その不安がどう私と関係あるの?」


「……お願いします!同居させてください!」


急に押し黙ったかと思ったら、物凄い勢いで肩を掴まれ、そう言われた。


身長差があるので結構怖い。


「い、今まで野宿してたから大丈夫じゃないの?」


「寂しいんですよ!それに公園は真夜中になると

酔っ払いやチンピラがいて落ち着いて寝れません!」


ど、どんな暮らしだったんだ…。


しかし…相当寂しかったのか、鼻息荒く懇願しているところから推測出来るように本当に寂しそうだ。


それなら…


「わ、分かったから!一緒に住もう?ね?そうすれば寂しくないよ」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


まぁ、私の家は本来5人暮らし用の部屋だから一人暮らしは正直広すぎる。


しかも設定は自分の意思とは無意識に作動しているので、気付かないうちにどんどん心細くなりそうだ。


設定上だからな。設定上。


「では今日からお邪魔します。学校にも住所変更の事伝えておきますね」


「もう魔法でどうにかする気だね」


「魔法は私のアイデンティティですからね」





………こうしてルルが新しい家族となりました。


…またしてもルルの策略にはめられた!?


ひょっとして私って相当な…バカ…なのかなぁ?






番外編



「―――という訳で、今日から柊さんと一緒の家に住みます」


何故か行われた報告会。


部員全員が耳を傾けてる。


「えー!ズルいズルい、ルカばっかり」


「でも柊さんの了承も貰いましたから」


「ぐぬぬ……」


特に反発したのが凛。まぁ、昼休みから不発ばかりだったからな。


「柊ちゃん!私も今日から住ませて!」


「ええ!?」


凛が突然可笑しくなった。


『何だ何だ~部長の私を放って置いて楽しいことか~?私も住むーー!』


「部長まで!?」


『私も!』 『ズルいぞ皆!私も立候補』


続々と集まっていくホームステイ。


本気じゃない…ですよね?

…………ですよね!?




結局この日は部活動顧問の一声によって、私の家へのホームステイは延期となった。


「延期って事は中止じゃないんだ…」


「まだチャンスはあるからね♪」


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