人にとことん甘い君へ、今日もそこにかこつけて溺れてしまおう
恋人の髪に触れる。
柔らかいその水色の髪を梳けば、目の前に対面しているクリスティはくすぐったそうに身をよじった。
「♪」
そうして「今度は自分の番」と言うように、こちらに寄っては俺の髪を梳く。
やさしく、優しく。
「眠くなりそうだな」
「ねる?」
身を離し、腕を広げてこてんと首をかしげるクリスティア。その愛らしさに、寝る気はないが胸へと体を沈めていった。
すりよって、さらされている肩や鎖骨の冷たさを堪能する。息を吸って、その甘いにおいで肺を満たし、名残惜しむように息を吐いた。
またすり寄れば、俺の頭を抱きしめて、すり寄り。俺と同じようににおいを嗅ぐ。そうして満足げに息が吐き出された。
「いーにおい」
「同じシャンプーだろう」
言いながらも、彼女の意見には同意して。引き寄せて、今度は俺が彼女を抱きしめた。
「甘いな」
「あまい?」
「あぁ」
彼女の髪の匂いを嗅いでこぼせば、首をかしげてまた俺の髪へと手を触れ、近づいてにおいを嗅ぐ。
「…あまい?」
「女特有なんじゃないのか」
「ほかの女の人嗅いだことあるってこと??」
「んなわけあるか……。小説とかでよくあるだろう、そんな表現が」
そう言えば納得したらしく。
「びっくりした…鼻凍らせるところだった…」
なんとも物騒な言葉を吐いて俺にすり寄ってきた。その物騒さに、思い出すのは親友のこと。
「……お前らのその物騒さはなんかそっくりだな」
「レグナ?」
「自覚があるのか……」
「よく言うから…」
「物騒さ以外にもそっくりな点が多いしな」
人懐っこく見える割にはどこか一線引いているような部分があるところ。
なんだかんだ「一人」という環境も好きなところ。
他にも、きっと挙げていけばどんどん出てくるんだろう。そう、考えながら彼女の髪を梳いていれば。
「それ言うならカリナとリアスもそっくり」
「どこがだ」
「そういうところ」
ふわ、っと笑うその笑みが可愛くて、けれど言われた言葉は複雑で。いろんな意味でのどがぐっと鳴る。その間にもクリスティアは指折り共通点を挙げていく。
「人と一線引くような言い方するのに、一線引けないところでしょ。心が強いところ」
あとねー、とのんびりした声で挙げられていく共通点には「そうか?」と思うところばかり。
そんなに一線を引いていないとも思わないし、心はめっぽう弱い方だ。それはカリナもだろう。他にも挙げられていく共通点は、自分の認識とは逆で。
首をかしげていたら、それに気づいたクリスティアはこちらを見て楽しそうに笑う。
「そういう無自覚なところもそっくり」
なんて、それはもうレグナみたいに、にっと笑うから。
「お前とレグナもとことんそっくりだ」
居心地の悪さにそう苦笑いして、逃げるように彼女の甘いにおいへと飛び込んだ。
『人にとことん甘い君へ、今日もそこにかこつけて溺れてしまおう』/リアス




