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大師匠は大嘘つき 〜剣なんて握ったことの無い俺がでまかせで妹に剣術を指導したら、最強の剣聖が出来てしまいました〜【毎日21時更新】  作者: ロナルド愛


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第7話 敗北を知りたい妹 その1

 国家存亡の危機にまで追い詰められた王国軍が、その劇的な反攻作戦により勝利を勝ち取ってから既に三年が経過していた。


 三度目の戦勝記念日の今日。王宮では各地より招かれた諸侯や名士が次々に国王へと拝謁を願い出て、一方で記念日の主役とも言える白騎士団はというと、早朝から王宮内の警備や要人の警護などの雑務で多忙な時を過ごしていた。


「レイラ閣下。お召し物の用意が整いました、この場はわたくし達に任せて、早くお召し替えを」


 息を切らせた若い部下が、レイラの傍らにひざまずき急かすように言った。


 記念の式典は正午より執り行われる予定である。白騎士団長こと剣聖レイラも、もちろん戦勝式典には出席しなくてはならない。そしてその後、王宮の宴の間で開かれる晩餐会にも当然出席しなければならないのだ。


 だが、もともと田舎育ちのレイラは慣れない宮中の行事というものが苦手であった。出来ることなら出席したくないとすら思う。しかしこの戦勝式典と晩餐会だけはいくら剣聖の名をもってしてもどうすることも出来ない。何故なら、彼女こそが先の大戦を勝利へと導いた『救国の英雄』だからである。


 ただ、その際の衣装がレイラにはどうにも馴染めないのだ。せめてもう少し控えめであれば……。そう思う。


 昨年の式典でも彼女の周りには、救国の英雄となんとか交友を結びたい多くの貴族や諸侯が集まって黒山の人だかりになっていた。自分よりも歳上の白騎士団の幹部達を従えて、自らはその真ん中でただ一人、無駄に綺羅びやかな隊服を着込むために否が応でも目立ってしまうのだ。


 レイラ自身は何としてでも今年は、他の隊員と同じ普段の隊服に勲章といった出で立ちで参加したかったのだが、やはり今年も周囲の者達がどうしてもそれを許してはくれ無かった。



 今朝早くから団長自らが陣頭に立って隊員達に指示をしていたのも、あの派手な衣装を着たく無いためであった。


「いや、今回はこの身なりで良い。私はこの普段の隊服のほうが性にあっているのだ。そなた達こそ朝から働き詰めであろう。私の事は構わずに休みを取ってくれ」


 レイラはわざと隊務が立て込んでいて今は手が離せないといった表情を作って、そう言ってみる。


 しかしこの鬼ごっこは、隊士たちにとってすでに恒例の行事となっていた。


「閣下。逃げようったって無駄ですよ。毎年同じことを言わせないで下さい。我々が帝国軍に勝利出来たのも貴方あってのことなのです。その主役がこの様な普段着では周りが困惑致します」


「しかし……。あの式典用の隊服はちょっと大袈裟すぎないか?肩に付いた金色の飾りとか、無駄に大きい勲章とか。それと……あの首から掛けるジャラジャラと重たい金でできた首飾り」


 あげつらえばきりがない。ただそれを言ってみたところでどうしようも無いことはレイラ自身も分かっている。


「なんと。もうお忘れになったのですか?あれも勲章でございます。先の大戦で閣下の多大なる功績を称え陛下から賜ったものでございましょう。それを首飾りなどと……。さすがに戦勝記念の日にあって、あの勲章を身に着けぬ訳にはいきません」


 今年もまた昨年と同じやり取りであった。このいつも身の回りの世話をしてくれる部下もさぞうんざりしているであろうが、レイラ自身もそれは同じこと。どうやら今年もあの派手な衣装を着込まなければならないらしい。


「しかし……」


 そう言いかけてレイラはもうこれ以上駄々をこねるのをやめた。


「今日だけのご辛抱です。なにとぞご辛抱を」


「あぁ。分かってはいるよ。言ってみただけだ」


 ホッとした表情を見せる部下に、レイラは言い訳の様にそう言った。


 王宮の中に用意された一室で、小間使いの女達の手によってテキパキと意に沿わぬ自分の姿が仕上げられていく。レイラは鏡に写るその姿を黙って見つめていた。


 ――不思議だ……。自分はただ、兄と共におとぎ話の勇者の様に、ただ冒険がしたかっただけなのに……。


 今、鏡に写る姿は、自分一人だけ。隣にいるはずの兄はいない。


 ハァ……。


 レイラの口から思わずため息が漏れた。


 レイラは人形の様に完璧に仕上げられた自分の姿に気後れする。いったい何故自分はこんな事をしているのだろうか。


 


「それで……。また今年もアレを為さるおつもりですか?」


 着替えが終わった事を見届けた後、確認でもするように、傍らに控えていた部下の一人がそう言った。


「もちろんだとも。」


 レイラは迷うこと無く答えた。


 それが国王との約束だ。レイラがこの国に留まる事と引き換えのたった一つの条件なのだ。


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