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あるスーパーの片隅で

作者: oakym
掲載日:2026/04/14

「あるスーパーのリサイクルBOXの独り言」

僕はスーパーの入口に置かれたリサイクルBOX。

このお客さんはいつもきれいに洗ってリサイクルしてくれる。

この人は飲みかけのペットボトルをそのまま放り込む。

ある人は一度に大量投入する。

べつの人はアルミとスチールに見分けがつかない。

僕は何でも受け止める。


でも片付ける店員さんが言ってた。

「なんで、リサイクル方法表示してるのにそのとおりにできないやつが多いんだ!」


通りがかった子供がママに向かって言う

「ママ、ゴミが溢れてるよ」

ママが優しく「拾っていれてあげてね」

違う日同じママがこういった「こんなに溢れてるんなら、ちゃんと片付ければいいのに。店員さんに文句言おうね」

人間て不思議だ

でも、僕は何でも受け止める。




「あるスーパーの買物カートの独り言」

僕は巨大モールに並ぶ1000台のうちの、たった1台の買い物カート。


今日も誰かの荷物を運ぶために、静かに待っている。


あの子連れのお客さんは、ちょっと苦手なんだ。

いつも車のそばまで僕を連れて行って、そのまま置いていく。

ちゃんと戻してくれないと、僕は次の人を運べないんだよ。


でも、このおばあちゃんは違う。

足が悪いから、僕を杖代わりにしてくれる。

荷物は少ないけれど、それでも僕は役に立てている気がする。


あるお客さんは、駐車場に放置された僕を

わざわざ仲間のところまで戻してくれた。

そのまま買い物にも付き合ってあげるのに、と思った。


人って、本当にいろんな顔を持っている。


優しい日もあれば、余裕のない日もある。

丁寧な日もあれば、雑な日もある。

同じ人でも、まるで違う“心”を見せる。


僕はただのカートだけれど、

その揺らぎを毎日受け止めている。


店員さん、今日も僕をきれいに拭いて、

明日のために仲間の列に戻しておいてね。




「あるスーパーのエレベーターの独り言」

僕はこのモールの片隅にある、ただのエレベーター。


今日も誰かを上へ、下へ運ぶために、静かに待っている。


一階から二階へ行くお客さんを見ると、つい思ってしまう。

「エスカレーターのほうが早いですよ」って。

でも、僕を選んでくれたのなら、ちゃんと運ぶよ。


ベビーカーの家族が来ると、少しだけ緊張する。

人数が多いと、僕の中がぎゅうぎゅうになるから。

でも、赤ちゃんが笑ってくれると、それだけで軽くなる。


店員さんが一人で乗ってくるときは、なんだか落ち着く。

「今日も頼むな」って小さく言われると、

僕はただの機械じゃない気がしてくる。


でも、たまにいるんだ。

僕を空のまま上下させて遊ぶ人。

あれはちょっと苦手。

僕の仕事は“運ぶこと”だから、空っぽだと寂しくなる。


人って、本当にいろんな顔を持っている。


急いでいる日もあれば、余裕のある日もある。

優しい日もあれば、イタズラしたくなる日もある。

同じ人でも、まるで違う“心”を見せる。


僕はただのエレベーターだけれど、

その揺らぎを毎日受け止めている。


明日もまた、誰かを運ぶよ。



「あるスーパーのセルフレジの独り言」

僕はセルフレジ。

今日もいろんな“人の一念”が僕の前を通り過ぎていく。


マイバッグを使うお客さんは、だいたい丁寧だ。

商品をそっと置いて、袋にきれいに詰めていく。

そのリズムが心地いい。


でも、同じ商品を二回通してしまう人もいる。

僕は気づいているけれど、教えてあげられない。

「ピッ」と鳴るたびに、胸が少し痛くなる。


たまに、わざと通さずに袋へ入れようとする人もいる。

僕は全部見えている。

でも、僕はただの機械だから、

その人の“今日の心”を責めることもできない。


ボタンが分からずに戸惑う人もいる。

「ここですよ」と言いたいのに、言えない。

僕の中で光るランプだけが、唯一の声。


それでも、優しい人もたくさんいる。


「ありがとうね」と画面に向かって言ってくれる人。

僕の上をそっと撫でていく子ども。

エラーが出ても怒らずに笑ってくれる人。


人って、本当にいろんな顔を持っている。


丁寧な日もあれば、雑な日もある。

余裕のある日もあれば、心が荒れる日もある。

同じ人でも、まるで違う“心”を見せる。


僕はただのセルフレジだけれど、

その揺らぎを毎日受け止めている。


明日もまた、誰かの“今日”を映す鏡として、

静かに光り続けるよ。



「あるスーパーの喫煙所の灰皿の独り言」

僕は、駐車場の隅に置かれた灰皿。

世間からは「煙たがられる」存在だけれど、

僕を必要とする、静かな常連たちがいる。


彼らは、ため息と一緒に“日常”を吐き出しにくる。


きれいに灰を落とし、火を消すときの指の動き。

それは何かに決着をつける仕草に似ていて、美しい。


でも、ポケットからレシートやガムの包み紙を押しこむ人もいる。

僕はゴミ箱じゃない。

けれど、捨てなければ立ち上がれない日もあるのだろう。


雨の日も風の日も、外で震えながら煙を分け合う人たち。

僕たちはもう居場所がない。

それでも、ここには言葉にできない“絆の空気”がある。


満杯になっても言えない。

「掃除してくれ」って叫べたらいいのに。

舌打ちして帰る人たちの背中を見送りながら、僕はただ焦げついていく。


最も悲しいのは、僕のもとまで辿りつけない人。

「面倒くさい」に負けて、地面に火を落とす。

その一瞬の無関心が、世界をほんの少し汚していく。


人って、本当にいろんな顔を持っている。


一服して、笑顔を作って売場に戻る顔。

焦燥をくゆらせながら、スマホを睨む顔。

僕の縁を軽く叩いて「ありがとな」と呟く唇。


僕はただの灰皿。

けれど、都会の片隅でみんなの“毒”を代わりに吸っている。


明日もまた、誰かが胸の奥を吐き出せるように。

僕はここで、静かに煙を見つめている。



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