第1話・亡霊の番人
※挿絵は生成AIによるものです。
※人体の欠損等の暴力的な描写を含みます。
「あれはなんだ? この惑星に生命反応はなかったはずだぞ」
上陸班の指揮をとるサトウ少尉は、かすかに胸のざわめきを感じた。
「こっちに近づいてきます」
その『物体』が、無人の街並みの向こうから、姿を判別できる距離まで迫る。
「生物ではないな……? ロボットのようだ」
甲殻類に似て、四足歩行で歩き、前脚が2本ある。体高は人間と同じくらい。装甲はオフホワイトだが、砂で汚れてくすんでいる。
「あなたは、この星の住人か?」
手順どおりにコンタクトを試みるサトウ少尉。だが、ロボットは、サトウの言葉を無視して、建物の間を通り、接近してくる。
「翻訳機のスイッチは?」
「入っています。こちらの言葉は通じているはずです」
そう言っているうちに、ロボットは先頭のブラウン保安員の目の前まで来ていた。
作動音がかすかに聞こえ、胴体のランプがチカチカと点滅している。
前脚は、鎌のように鋭く巨大な刃物になっている。ロボットが、その片方を振り上げた。
「まずい、撃て!」
サトウ少尉が喚くと、ブラウンを含む全員がレーザー銃を構えたが、発射するより早くロボットが鎌状の前脚を振り下ろした。
ブラウンの両腕が、銃を握ったまま宙を舞った。それが落ちる前に上半身が両断され、両腕とともに地面に落ちた。
ブラウンは、悲鳴を上げるヒマもなく絶命し、下半身が崩れ落ちた。サトウは、一瞬、息を呑んだが、すぐに冷静さを取り戻した。
2、3人の保安員が、同時にレーザー銃を発射した。レーザー・ビームは、すべて命中したが、ロボットは少しひるんだだけで、ふたたび前脚を振り下ろした。
リー保安員の身体が、袈裟懸けに斬られ、ドチャ、と音を立てて地面に落ちた。
「レーザーの出力を最大に」
サトウ少尉が叫んだ。保安員が、グリップのボタンを操作し、発射する。
最大にセットしたレーザーが命中すると、ロボットの動きが止まった。
「今だ!」
さらにもう1人がレーザーを撃つと、ロボットの胴体部分が爆発した。
全員、とっさに身を屈めるが、ガルシア保安員の頭にロボットの破片が突き刺さり、倒れた。
「ドクター!」
サトウの呼びかけに応じ、軍医のドクター・サリバン大尉がガルシアに駆け寄ってしゃがみ込んだ。医療キットの小さなモニターを覗くと、静かに首を振った。
「なぜ、ロボットが攻撃してくる。惑星は無人なのに」
サトウ少尉が誰にともなく言うと、ナカノ伍長が口を開いた。
「少尉。ここは、いったん船に戻ったほうが……」
「ああ。全員、シャトルまで……」
「少尉! センサーに反応が。まだ何かがいます」
「位置は?」
「たぶんさっきと同じロボットです。すぐ近くです」
「数は?」
「わかりません。ですが……、囲まれています」
「全員、レーザーを最大にセット」
上陸班の全員が円陣を組んだ。どの方向からの攻撃にも対応するためだ。
「どこだ?」
「目の前です!」
「何もいないぞ」
サトウは、ハッとなった。
「上だ!」
皆が見上げると、建物の上に何体ものロボットがいた。ロボットたちは、一斉に飛び降りて襲い掛かってきた。
「撃て!」
レーザーの光が建物を照らした。1体のロボットに命中し、空中で胴体が破裂する。そのまま地面に落ち、4本の脚を痙攣させた。
だが、ロボットは次々に襲ってくる。
そのうち1体が、タムラ保安員の発砲と同時に、その上半身を切り落とした。最大出力のビームはあらぬ方向に飛び、スミス保安員に命中する。スミスは、蒸気になって消滅した。
「全員、シャトルに急げ!」
上陸班は退却を始めた。シャトルはほんの50メートル先だ。
レーザー・ビームと悲鳴が飛び交う。
「まずい。……このままでは全滅だ」
「少尉、この出力では、レーザーのバッテリーが持ちません!」
「わかっている。とにかく、シャトルまで急ぐんだ」
サトウ少尉が、銃のトリガーを引いた。だが、弱々しいビームが出ただけだった。
「くっ。バッテリー切れか……!」
サトウは、ロボットに銃を投げつけた。むろん、ロボットは意に介さず、一歩一歩、サトウに迫ってくる。
「くそう……!」
サトウ少尉はつぶやき、右手を腰に伸ばした。
「これを……、使うしかないか」




