表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/47

二人

 赤銅色の髪を汚れた風がなぶるに任せた。

 後で洗えば、それで済む話。

 しかし、この煤けた臭いは鼻にこびりついたまま離れそうにも無い。

 マスクなんてもの、最初から一度も着けていなかった。

 私の顔を、見せなくちゃならないから。

 あの子に。

「今日はあの丘まで進むつもり。そう。最低でも、ね」

 独り言。

 あの子はもう、いない。

 幻覚や幻聴は、無縁だ。

 いっそ見えたなら、聞こえたなら。そう考えたことは何度もあった。

 見栄を張るのはやめるか。

 日に、何度もある。今でも、今、この時も。

 あの子が私を呼ぶ時の、じわじわと温かなものが体中に広がる感覚。

 もう思い出の中にしか、私の中にしか残っていない。

「でも、鮮明なまま」

 そう、まるで摘みたての花のように。

 あれは、カモミールだったっけ。小さな白い花。ほのかな甘い香り。

 ハーブティーにすると、何だか普通の草っぽくて。二人で笑いながら飲んだな。

 カモミール、あれから一度も見ていない。植物を目にする機会そのものが、今では無くなったに等しい。

 思い出の中のカモミール。思い出の中のあの子。

 私たちはいつだって二人だった。

 きっと今だって。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ