お迎えする
子犬をね、お迎えしたんです。
この寒い中でね、ブルブル震えてて。
黒い豆柴かな。犬種詳しく無いんですけど。
あ、豆柴って犬種じゃないんですかね。
団体によって扱いが違うとか何とか聞いたような。
柴犬のうち、成長しても小さければ豆柴って。
何ならさらに小さい、小豆柴もいた気が。
いずれにしても分からない。
豆柴っぽいな、なんて何となく思った。それだけのことで。
そういえば、豆柴の子犬と柴犬の子犬って見分けつくのかな。
いや、両親が豆柴なら子は豆柴なんだろうなとは思うんです。
でも、柴犬同士からも小さな子が生まれることもあるだろうし。
……って、話が横道だな。
子犬、柴か豆柴か、とにかくそれっぽい子犬をお迎えしたわけです。
寒い日に。
九時ぐらいか。夜の。
そりゃ、寒いですってば。
何せ二月だし。
そしたら、ベタもベタに「くぅ~ん」とか声。
あれ、分かっててやってる。
こう鳴いたら放っておけないでしょ、って。
実際に放っておけなくて。
声のする方を見たら、箱。
初めて、リアルに見たんですよ。可愛がってやってください、なんてメモが貼られた段ボール箱を。
けど、酷いと思いません?
マンションね、別にペット禁止とかじゃなくて。流石に煩かったり、出る時に部屋が荒れてたら問題にはなるでしょうけど。
とりあえず、飼えるわけですよ。
いやね、それは別に良いんです。苦手な人もいるし、同情はしても飼えないのも分かる。
でもさ、こう、通報と言うか。ね?
どこかに連絡するとか、誰もしてあげなかったのかなって。
箱の感じとか、中のミルクだとか、ほんの数時間って風には見えなくて。……捨てられてから。
ってことは誰も気付いていないなんて、そんなことあるかなって思ってしまって。
気付いておいて、何もしなかった。
分かります分かります。
捨てた人が一番酷い。飼えなくなったなら飼えなくなったで、何かしらしなくちゃならないですよ。生き物と暮らす、生命を預かるってそういうことですから。
で、仮に通報して、そういう元の飼い主だと疑われたりとかしたら最悪です。それも分かる。
分かるけど、分かるから、余計やりきれなくて。
俺はたまたま、実家に犬いるから平気だっただけなんですけど。
それなのに犬種とか良く分からないのか、って話ですよね。
仕方ないです。うちにいるの、特殊なんで。
犬は犬なんだとは、そこは間違ってない、……はず。
え?
ミックスじゃないです。犬種不明とか、そういうんでも。
……あー、これ、言わないでもらえます?
ネットニュースの記事にはしない、って。
オフ?
あー、それです、オフレコってやつで。
それなら大丈夫です。言います。
ケルベロスです。
三つの首がある、それですよ。
地獄の番犬?
んー……、ちょっと違うんだけども。まぁ、良いか。
そういうのです、そういうの。
ニックネームとかじゃないですよ。
本物です。れっきとした。
写真?
無いですし、見せても信じないでしょ?
見に来ます?
って言うか、見てもらうつもりで来たんですけどね。
犬拾った話?
本当ですよ。ただね、ちょっと違う。
子犬はもう冷たくなってました。
だから、俺がお迎え出来たんですけどね。基本、生きてると無理なんで。
やっぱり気付いてませんでしたか。
いや、いるんですよ。結構。
でもね、まぁ、摂理ってのがありまして。
ええ、撫でるのは無理だろうけど、見てやってください。
マジにデカいっすから。




