匿名通報
(エルフ王国国営テレビ制作 1100027年)
ワーウ、ワーウ、ワーウ、ワーウ!
けたたましいサイレンを鳴らしながら、警電空馬が空を疾走しています。
違法薬物の原料となる別天地の、大規模農場が潜入捜査により見つかったからでした。
薬物の製造から販売まで全てを行っており、これまで王属警備隊によって壊滅させられた暴力団の資金源の多くが、この団体によるとのことです。これにより、ここ二百年続いていた暴力団と王属警備隊との戦争にも、終止符が打たれると見られています。
(モザイク処理を施された、売人達の亡骸の映像)
死体、死体、死体。死体の山です!
多くの死体は、顔が判別出来ぬ程に損壊しております。
今ご覧いただいている映像は、王属警備隊が現場に突入して直後のものです。戦闘行為は、小競り合いさえも起きておりません。
……ええ、そうです。今回も、です。
(一瞬、言い淀むナレーター)
今回もまた、例の、匿名の通報を受けての出動です。
別天地の栽培農場と隣接する薬物の製造工場にいた者を皆殺しにした上で、匿名による通報をしたと見られています。
(この間、画面にはエルフ王国エルフィリア第8代エルフィリア王エルフェ2世の写真)
ちなみに農場は異空間に転移させた上で、あらゆる認知不可呪文を重ねてかけていたとのことです。
警備隊隊長は会見にて、次のように語りました。
「匿名の通報により、薬物の規制は一挙に進むと見られております。暴力団の壊滅にも繋がると我々は考えております。…………えぇー、そしてまた今回も関係の無い話で恐縮なのですが、親愛なる我らが王には、王宮でゆったりと過ごしていただきたい! そう、強く思っております。……関係ない話をして、申し訳ありません。会見は、以上」
(軽快なBGMと共に、誰が見ても無意味な変装をして、街を歩くエルフェ2世の写真がスライドショーのように流れる)
一体、匿名の通報を行ったのは何者なのでしょうか?
事件は解決しましたが、こっ……、この大きな謎は……、未だ、えー、未だに、…………残されたままっ、となって、おります。
(感情を押し殺すような棒読みに、吹き出すのをこらえているような変な間が時折挟まる)




