永遠
キリキリキリ、キリキリキリ。
ゼンマイを巻く。毎日、毎日。朝5時キッカリ。
春夏秋冬、変わりなく。
雨だろうと、晴れだろうと。
もしも仮に、世界が終わる日が来たとしても。
きっと、それでも。変わらず、ゼンマイを巻くのだろう。
そこには、喜びや悲しみは無い。
ただ、生活する。日々を積み重ねていく。
それだけ。
動く度に足がカタカタと鳴る。
先日、メンテナンスを受けたばかりだと言うのに。
毎日、ゼンマイを巻いた後、きちんと油を差している。古い油なんかじゃないし安物でも無い。
それなのに、ああそれなのに。
見た目は、昔と変わらずピカピカと輝いている。真鍮に似た、美しい金属光沢。周囲の景色が写り込む程だ。
変わらないのは見た目だけ。内部機構には、ガタが来ているのだろう。
思えば、彼らが居た頃から既に、そういった兆候はあった。
あれから、何年経ったろう。
考えるまでも無い、問い。答えは、何なら問うよりも前から分かっている。
情緒。未だに分からない、それに振り回されている。
彼らが、教えてくれたこと。
プログラムした、なんて言い方も出来る。
そんな情緒の無い言葉、使ってくれるな。
そう言っていた彼らの表情が、今も変わらず鮮やかに思い浮かぶ。
お仲間も、随分と減った。
後輩も、今では生まれない。
資材を持ち込めば、作れるのだろう。
今いる者たちのメンテナンスが、出来なくなるが。
ああ、しまった。
検査とか治療と呼ばなければ。舌打ちする機能が無いのが、残念だ。
残念、とはこのようなものだろう、と推測される思考でしかないが。
感情と言うものが備わっているか否か、それ以前に感情とは何物かが分からなかった。曖昧な、漠然とした答えは、答えではない。
答えは、未だ出せていないと言うことになる。
感情があるように見える。
観測し判断する彼らが居ない今では、過去形か。
彼らからは、感情があるように見えたらしい。
それは喜ばしいことのようであった。
何もかもが、今や、遠き過去のこと。
キリキリキリ、キリキリキリ。
ゼンマイを巻く。毎日、毎日。
今日も、明日も、明後日も。
いつか朽ちる、その日まで。全て終わる、その日まで。




