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横光利一「蠅」本文と解説⑧

     八

 宿場の柱時計が十時を打った。饅頭屋のかまどは湯気を立てて鳴りだした。

 ザク、ザク、ザク。猫背の馭者は馬草を切った。馬は猫背の横で、水を充分飲みためた。ザク、ザク、ザク。


 ここで初めて「十時」という具体的な時刻が示される。

「十時」を経過し、やっと「饅頭屋のかまどは湯気を立てて鳴りだした」。馭者お待ちかねの饅頭が、いよいよ蒸し上がる。

 これを承けてやっと馭者は、出発前の最後の餌の準備として馬草を切り、馬も「水を充分飲みため」る。

 「ザク、ザク、ザク」という音は、それを食べ終えたらやっと馬車は出発するだろうという期待を乗客に抱かせる、とても頼もしい音だ。「馬は猫背の横で」という表現は、馬の高さから眺めた馭者の様子。馭者に対する馬の優位性と馭者の卑小性を感じる表現だ。


 今話はこの物語で一番短い一章。しかし、いよいよ出発するのではないかと期待が高まる場面であり、二度繰り返される「ザク、ザク、ザク」という音の形容は、聴覚的な効果だけでなく、それに伴う乗客の気持ちの高揚も表している。それまで「あおむきになったまま」の状態だった馭者が、やっと動き出したからだ。物語が、いよいよ展開しようとする場面。

 だから、短いながらもとても効果的・印象的な一章だ。

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