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第二話『第一試合』

『昨夜、Sayaさんが殺害されました』


 早くもひとりが欠けた円卓に、ガイドのアナウンスが響く。


「……誰から話しますか?」

 予想外の出来事に声が震えた。それでも役割を全うするために、僕は言葉を絞り出す。

「ケイ! お前、昨夜なにしてた?」

 いきなりタクマさんが大声で啖呵を切った。向かいのケイさんを睨むその目は疑念に満ちている。対する彼は銀縁メガネのブリッジを指でそっと押し上げながら、涼しい顔で答えた。

「タクマさん、わたしを疑ってるんですか? どんな根拠で?」

「オレはお前んとこに診察に行ったが、留守だった!」

「それは残念。わたしは昨日、ライトさんの警護をしていましたよ」

「本当か?」

 タクマさんの質問を受けて、ライトさんは頭を揺らしながら返事をする。

「うーんどうかなぁ。ボクは部屋から出なかったけど、ドアの下から人影が見えてたから……ケイさんの警護はウソじゃないと思うな」

「むっ……そうか、すまん! 疑って悪かった!」

 ふたりがかりの証言を受けて、疑念が晴れたようだ。タクマさんは礼儀正しく、しっかりと頭を下げた。

 ケイさんは優しい表情で謝罪を受け入れる。

「お構いなく。タクマさんもわたしが留守と把握していたのですから、診察はウソではないでしょう。我々の証言に矛盾はないようです。となればラッキーさんとシュウさんのどちらかが犯人ということになりますが……」

 彼は一転、鋭い目を光らせて僕とラッキーさんを交互に睨んだ。

「僕は違います! 昨夜は、Sayaさんの身元を調べていました。彼女の職業は……〝塗装屋〟でした」

「ぷっ……あっはははは!」

 彼の迫力に押されて思わず早口で返事をした僕を、ラッキーさんが指を差して笑った。笑いすぎて、ヒィヒィと過呼吸になって咽せている。

「ラッキーさん! なにがおかしいんですか!」

「ちょっと待って……あはは」

 ひとしきり笑ってから、ようやく彼女は喋り始めた。

「あぁ、笑った〜。ダメだよシュウさん、ウソが下手すぎ」

「ウソなんて!」

 思わず叫んだ。彼女はなにも知らないはずだ。現時点で証拠なんて、なにも……焦る僕を前に、彼女は笑い涙を拭いながら口を開く。

「だってアタシ、知ってるもん。シュウさんが出掛けたの。Sayaさんの部屋までしっかり足跡がついてたよ……残念だけど、アタシが〝塗装屋〟なんだ」

「そんなっ! デタラメだ!」

 焦る僕に、他の三人が一斉に畳み掛けてくる。

「この焦り方は……怪しいよねぇ」

「どうやら、決まったようですね」

「観念しろ! ニセ警察官め」

 マズい、この流れは本当にマズい。どうにか抵抗して反論の糸口を探らなければ。

「違う、僕はやってない! ラッキーさんがウソをついてるんだ!」

「そんなに言うならアタシは別に、順番に追放してくれてもいいけどね」

「っなら、先に彼女を!」

 僕の必死の提案も空しく、ケイさんが冷酷に投票ボタンを押す。

「その余裕のなさ……むしろ自白しているようなものですよ」

「現状、職業はみんな割れたんだ。となれば〝警察官〟より〝塗装屋〟が残ってた方がありがたいからなぁ」

「待ってよタクマさん、彼女は〝塗装屋〟じゃないんだって! そうだ、ケイさんのアリバイも本当か分からない! ライトさんが見た人影は、ペンキを塗りに行ったSayaさんのものかも知れないでしょう?」

「あー。言われてみれば、確かにその可能性はあるかも」

 ライトさんは首を傾げて投票を止めたが、ケイさんが横槍を入れる。

「なら次は、わたしが追放されても構いません。皆さん、今回は彼に投票を」

「全員騙されてる! いま僕を追放したら大変なことになるぞ!」

「まぁ、今回は運が悪かったってことで。次、頑張ろうよ」

 そう言いながら結局、ライトさんも投票ボタンを押した。

「そんなぁ……」


 あり得ない。ラッキーさんはウソをついている。でも、理由は言えなかった。この場でその根拠を言えば、それは同時に僕がSayaさんを殺した証明になってしまうから。

 そう。理由はどうあれ、皆の予想は正しい。今回の犯人役は……この僕だ。


――ビーッ【投票終了】


《投票結果》……ラッキー/一票 シュウ/四票


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