序
特定の脳の状態に特定の「意識」が対応するとき、そこには何かが起きる。そのときまさに起きていることを垣間見ることさえできたなら、それこそ科学史上の業績すべてが色褪せるくらいの偉業となるだろう。
――ウィリアム・ジェームズ(一八九九年)
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そこに光は無かった。
いつからそこにいるのか、この空間はなんなのか、分からない。ただ、目覚めたという感覚と、外の存在に対しての内なる自分を認識する……いわゆる自我と呼べるものを持っている自覚だけがあった。
なにか掴めるものはないかと手探りするも、手は空を切る。足も地につかず、重力も、上下の感覚もない。途方もなく深い穴を落ち続けているように錯覚する。
やがて、遠くに小さな光が見えた。まるで一滴の白いインクが落とされたように、その光はじわじわと世界を侵蝕していく。点は線となり、線が重なって面を描き出し、その面が全てを覆い尽くして、空間の高さや奥行きが生まれる。そしてそれらの表面を多様な色彩が駆け巡った。
浮かび上がるのは、いくつかの球体。巨大な火球を中心に、大小さまざまな球体が規則正しく動いている。知識があれば、それらが太陽系と呼ばれるものだと認識できただろう。
視点は自然とそのうちの一つ……青い球に近づいていく。その球体は生命の営みによって光り輝いていた。分厚い空気の層を突っ切り、地上に降りて行く。そして日本列島と定義されるエリアのうち、赤く灯るポイントに焦点が合う。
見えてきたのは、山中で轟々と燃え盛る館。かつては優美であったはずの館は、もはや建物としての原型を留めていない。それでも最後までその存在を証明するように、木造の全てを燃料に周囲の草木を煌々と照らしていた。
その火の中に人影が見える。
彼女は、名を東幸運といった――
幸運は目の前に現れた人物に向け、高らかに宣言する。
「ようやくお出ましだね……もう言い逃れはさせない。アナタが、一連の事件を起こした張大十从众㐺……」
〝張本人だ〟そうビシッと決めて、アタシはそのまま事件を解決しようとした。でも、彼女のセリフは変になり……つられるように、世界の全ての要素がどんどんと間延びしていく。
そしてそのまま、取り返しがつかないほど重くなって、ついに文字 通 り
世
田
介
山
月
月
十
土
目
衣
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file name :『もつれ館多重殺人事件』
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