冬
甘酸っぱい
ほろ苦い
君はどこに行ったのだろうか
今何をしているのだろうか
ため息混じりに吸った冬の空気で、あの日の思い出が微かに香る
最初のきっかけは、もう忘れてしまった
おぼろげに笑顔と、教室の情景だけが浮かぶ
優しい人だったのは覚えている
その時の友達にも打ち明けなかった気がする
今となってはいい思い出なのだが、あの頃は一喜一憂が彼のものだった
冬は好きだ
彼女の好意には気がついていた
冷やかされるのが怖くて気が付かない振りをしていた
結局卒業式でさえ伝えられなかった
あの日のマフラー越しの笑顔が忘れられない
ポケットから滑り落ちたハンカチ
気がついた瞬間、反射で声が出た
拾って渡す
その瞬間、目を見てしまった
その時射抜かれたのだ
冬は嫌いだ
たった0.5秒反応が遅れた
俺だってハンカチには気が付いた
チャンスと思うと同時に躊躇いが生まれたのだ
俺が拾っていればきっと両思いになれたに違いない
でもアイツは良い奴だ
悔しさをからかいで紛らわすとしよう
冬は春の前の季節。ただそれだけだ。
春が来たら就職
地元の企業に入るだけだ
一つ心残りがあるとすれば
こいつと離れる事か
少し天邪鬼なところはあるが一緒に居て楽しい
俺の気持ちを伝えるつもりはない
忙しくなれば次第に気持ちなんて薄れていくさ
風化させ
鎮痛させていく
稀に起こる幻肢痛は
むしろ過去を彩るスパイスなのだ。
Fin
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