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群島と子どもたち2

 いま自分がいる場所は、軌道船ヒューストン号の座席の上だ。周囲はほの暗く、計器の明かりが明滅を繰り返しているだけ。子どもたちの姿も、彼らの前で講師をしていたハルタカ自身もこの場には影も形もない。


「しまった、()()()から追い出されちゃったのか……」


 ハルタカらオービタルダイバーの子どもたちが生まれつき網膜に埋め込んでいる網膜下端末インプラント・アイリス。それが描き出していた仮想現実空間から追い出されてしまったのだと、遅れて状況把握する。


「――おお、もう終わったのかと思ったら、ネットの接続不良かよ」


 操縦席側から陽気な声がかけられる。この大柄な金髪男は、ヒューストン号の操縦士を務める同級生のヨンタだ。


「やっぱ、マジでネットのどっかが壊れてんじゃねえかな。他のやつらからも繋がり悪いって話をちょくちょく聞くぜ。中継衛星の故障なのか通信障害なのかはわからんが、オレもたまにヒヤッとさせられる」


「………………ああ……うん、ぼくもちょうど今そんな気持ち」


「ただでさえ、ここんとこの箱舟どもの出現率は普通じゃねえ。あのASの迎撃網をどうやって突破できてんのかはわからんが、倒すたびに次のが上がってきやがるから、人間様もキリがねえってみんなボヤいてる。戦闘に支障が出ねえうちに、中継衛星の全基点検を申請しといた方がいいかもな。オレとお前でコンビ組んで行けば、ちょうどいい点数稼ぎにもなるし、VX9のテストにもなるぜ?」


 ――そういえば、さっきのテスト中にヒューストンを見失ったのとも関係があるのかな。


「ん、どした、ハルタカ? まだ脳みそが現実に戻れてないのか?」


「いや、大丈夫……ただ、まいったな。だって、講義途中に目の前で講師がバグって消滅したら、さすがに子どもたちもびっくりしたろう。今ごろあっちはパニック状態になってるかも」


「どうせ呼び出された上級生が面倒見てくれてんだろ。どのみちお前の責任じゃねえよ。お前に仕事押し付けてバックレた本来の講師が悪い! だいたい、帰港中なのに仮想ダイブして遠隔通信でガキどもに講義とか、お前もムチャやるぜ」


 そんな呆れた声を上げつつも、ハルタカのことをいつも心配してくれるヨンタだ。彼の隣の席で、副操縦士役をしてくれている後輩のトニアの横顔が苦笑していた。


「……って、そういや今日のムチャは二回目だったよな? ハルタカお前、頭イイわりにたまにそういう考えナシなとこあんのな」


「あはは……ちゃんと考えての行動なんだけどな。それに軌道船を操縦できないぼくはいま手持ち無沙汰だし、空き時間の有効活用には積極的になるべきだよ。講師役はいい点数稼ぎにもなるしね」


 皮肉めいた言い回しを真似て返してやる。


「へいへい。てめえの成績よか、まず基地に着いた後の始末を付けましょうね?」


 うげ、思い出したくもない。そうぼやくハルタカだった。


「さあ、間もなく到着だ。オレらのジェミニポートへ――――」



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