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3話 絶望


 長らく見ていた夢から覚めた俺は、壁の穴から外へ出ようと腹這いになりながら出口へと向かった。

 するとそこには俺が今まで見た事も聞いた事もない世界が広がっていた。

 

 

 ――どこなんだここは……?

 母さん……? 父さん……?

 フィフシス村は一体何処へ消えた……!?


 

 俺は困惑しながらも、ひとまず壁の穴の外へと抜け出した。

 そして自分が出てきた穴の周辺を確認してみる事に。


「うん。この壁は俺が穴を開けたのと同じだな……。てことはここはフィフシス――――なわけないか……」

 

 俺が辺りを見渡すと、今いる()()()()もフィフシスと()()に街が白い壁に囲まれていた。

 しかしそれ以外はフィフシスと丸っきり違っていた。


「マジで……ここは一体どこなんだよ……?」

 

 ただ呆然とその場に立ち尽くすしかなかった俺は少し遠くを見つめる。

 するとそこに大きめの建物を見付けた。


「何だあれ? でかい家……か? その周りもなんか賑わってそうだし、とりあえずそこへ行ってみるか」

 

 俺はそう独り言を呟くと、辺りに広がる古い家や畑がある場所を抜け、その先にある賑わった場所へと向かった。


 ◇

 


 一時間程歩き続け、漸くその場所へと辿り着いた俺は膝に手をつき息を切らしていた。


「ハァハァ……。いくら何でも遠すぎだろ……! でもやっぱり俺が思った通り、めちゃくちゃ人が多いな。ここだけでもフィフシスの全人口より多いんじゃね?」


 息を整え、上体を起こして辺りを見渡すと、そこには俺が見た事がない服を着た人達が、何かを食べたり、酒を飲んだり、歌ったり踊ったりしていた。


「何か見た事ない服の人ばっかだな。そのせいで俺、凄い目立ってない……?」


 そこにいる人達に対して俺の服はボロボロ。

 材質も全然違うせいでかなり目立つのか、道行く人が俺を凝視していくのがわかる。

 


「おいお前。どこの集落の者だ?」

「変わった格好をしているな? 何者だ?」


 するとそこへ俺が挙動不審な態度をとっているのがわかったのか、二人の男が立ち止まり声を掛けて来た。


「何者だって……俺はリオンだ! それに変わった格好をしてるのはあんたらだろ!?」

 

「……? コイツ何を言ってるんだ?」

「……? さぁ?」


 俺がそう言い放つと男らは顔を見合せ不思議そうな顔をしていた。


「なぁ! そんな事はいいからさ! フィフシスって村を知らないか? そこには俺の家があって、早く帰りたいんだけど、帰り方がわからないんだよ。おっさん達何か偉そうだし知ってるなら教えてくれないか?」


 俺は藁にもすがる想いで男二人にそう尋ねた。

 しかし――――

 

「フィフシス? そんな村はこのヨスガの里にはないぞ?」

「お前頭、大丈夫か?」


 全く聞いた事も無かったのか、とぼけた顔で男達は俺にそう聞き返す。

 

「俺の頭は大丈夫だ! お前らの方こそおかしいんじゃないのか!? 変な格好して、フィフシスの事も知らないなんてよ!?」

 

「何を言っているんだ、コイツは……? もういい。お前ちょっとこっちに来い!」


 男は俺の話に呆れたようにそう言うと、俺の腕を掴みどこかへ連れて行こうと引っ張り始める。


「何するんだよ!! 痛いって! 離せよ……!」


 俺はそう言い男の腕を払った。

 すると男らは途端に血相を変え、腰に挿していた長い棒の様な物からナイフの長い奴みたいな物を出してきた。


「お前! 役人に抵抗するのか!? 反逆罪に問われるぞ!?」

 

「何が反逆罪だ! 先に腕を掴んできたのはそっちだろ!? それに何だ!? その長いナイフは!?」

 

「何? お前刀を知らないのか? 益々怪しいな……?」

「さてはお前……()()()に危害を及ぼすつもりだな!? そうはさせんぞ!!」


 男らはそう言うと、刀とやらで俺にいきなり斬りかかって来た。

 俺はそれを後ろにひょいっと跳んで躱すと、更に追撃が来た。

 しかしそれも俺は、すんでのところで上手く躱す。

 

「あっぶないなー! 殺す気か!」

 

「最悪……そうなっても良いと思っている……!」

 

「はぁ!? ふざけんな! 俺はただ家に帰りたいだけだっての……!!」


 その後も男らは次々に俺の顔面に目掛けて刀を振り下ろして来た。

 俺は何度か避ける事が出来たが、やはり二対一では分が悪い。

 いよいよ追い詰められると、本当に斬られそうになる。


 ――まずい……! これは本当に斬られる……! 殺される……!


 俺はそう思い咄嗟に()()を刀から身を守る様に頭の上にあげ、目を瞑った。

 すると――――――



 ガキンッ…………!!



 ――――突然、硬い金属が弾ける様な大きな音が鳴り響いた。


 

 ――あぁ……今絶対腕斬られたじゃん。

 人の腕切り落とす時って、あんな音鳴るんだ……。

 ていうか、腕を切り落とされたらあまりに痛すぎて逆に痛みとか感じないんだな。

 

 それより、左腕なくなったらこれからの生活どうしよう。不便だなぁ……。

 いや待てよ……? もしかしたら、これからは狩りに行かなくてよくなるかも……?

 そうしたら母さんに甘えれるだけ甘えて、ゆっくり過ごすのもありだなぁ……。

 

 …………………。

 ていうか本当に痛みが全く無いな?

 どうなってるんだ? さすがにおかしいだろ、これ……?


 

 そうして俺は色々と考えを巡らせた後に、意を決して恐る恐る目を開けた。

 すると先程まで強気な表情で俺に斬りかかって来ていた男らは、目を丸くして何かに怯えた様子で青ざめていた。


 ――ん? なんだコイツら?

 二人とも凄く驚いた顔してる……?

 

「なんだよ!? 人の腕切り落としといてその顔はないんじゃないの!? どうしてくれるんだよ!? このう……で!?」


 俺は男らを怒鳴りつけながら、自分の斬られている左腕を二人の前に突き出した。

 しかし俺の左腕は無事――――どころか、獣の如く鋭い牙を生やした口へと変化し、刀を噛み砕いていた。


 ――はぁ!?

 今何が起こった!?

 そういえば夢で"スキル"がどうのこうのって言ってたような……。

 アレ夢じゃなかったのか……!?

 

「お、お前!! そ……その手の口は何だ!?」

 

「俺のスキル!! みたいだ……」


 男の問い掛けに俺は尻すぼみになりながら答える。

 

「ス、スキルだと……!? クソ……! ふざけた能力しやがって……!!」

「落ち着け! まだ刀が一本やられただけだ! まだ慌てる時間じゃない……。さっさとコイツをひっとらえるぞ!」


 そう言うと男らは更に凄みを増して襲いかかって来た。

 男らは左右に分かれ、わざとタイミングをズラして攻撃を繰り出してくる。


 ――さて、どうする……。

 このままじゃ確実にやられるぞ……?

 ならもう、やるしかないよな……!

 えっと? 左からは刀で、右から素手か……。


 俺は戦うことを決心すると、左手の口で左側の男の刀を掴み、噛み砕いた。

 そしてそのまま右から殴りかかって来た男の顎を右脚で蹴り上げる。


「ひゅーーー! 毎日やりたくもない狩りをしてた甲斐があったぜ! おかげで運動神経だけはいいんだよな、俺」

 

「ぐっ……ぐふっ……」

「き、貴様ぁ!!」


 俺に蹴られた男は顎を手で押さえながら蹲っていた。

 もう一人の男は砕かれた刀を握りしめ、俺を睨み付けている。


 ピーーーーーーーー!! ピーーーーーーーー!!!


 俺がしたり顔をしていると、俺を睨みつけていた男は徐に首から下げていた笛を取り出し、二度吹いた。

 すると次から次へと俺に向かって体格のいい男達が集まり始める。


「おいおい待て待て……! この数は流石に無理だって……!!」


 俺は辺りを見渡し逃げ道を探した。

 すると――――


「おい! こっちだ!! こっちへ来い!」


 近くの家の陰から俺に向かって手招きをする男が目に入った。

 俺はその男の元へと走った。

 それはもう全力で走った。

 そして俺はそのまま男に連れられ、路地を抜けて追っ手を何とか振り切った――――




ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

これからも本作品をよろしくお願いします!


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