最近見た映画のはなし その2
私は昨年の8月、友達と宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を観に行き、心を動かされた。そしてその勢いで、ここに映画の感想や映画を見て感じたことをエッセイにして投稿した。そして最近また、とても考えさせられる映画に出会った。だから今回はその映画について思うままに感想を語っていきたいと思う。
その映画とは、3月8日に公開されたばかりの映画「マイホームヒーロー」である。「マイホームヒーロー」は、もともと昨年の秋に深夜枠でドラマが放送されており、今回の映画は彼らの7年後を描いた作品となっている。しかし彼らの過去に何があったのかは映画内でもきちんと語られるため、ドラマを見ていなくても十分に楽しめる作品となっている。そのため今回はドラマのあらすじについては割愛させていただくが、このドラマを一言で表すと、壮大な家族愛の話だと私は思っている。そしてこのドラマを踏まえたうえで、映画を見ると正義とは何かについて深く考えさせられるのである。
私はもともと見た後に余韻が残る映画が好きだ。後に残る感情は何でもいい。スリル満点のアクション映画を見た後のワクワク感でもいいし、感動必至の恋愛映画を見た後の何とも言えない幸福感でもいいし、ミステリー映画を見た後の謎が全ての謎がつながった後の爽快感でもいい、とにかく映画館を出た後も映画館でスクリーンを見つめているときの感情を引きずることのできる映画が好きなのだ。
映画「マイホームヒーロー」も余韻の残る映画だ。しかし後に残る感情は、決してハッピーなものとは言えないだろう。私が見終わってすぐに抱いた感情は、辛い、だ。とにかく、辛かった。主人公が今までに重ねてきた行動を考えれば、妥当な結末(むしろ丸く収まったうち)なのだが、それにしても辛かった。容赦のない現実を突きつけられて、フィクションなのだからもう少しお情けがあってもいいのではないかとも考えたこともあったが、このリアリティがこの作品の面白さの秘訣なのだろう。
少し話を戻すが、私がなぜこの映画をわざわざ(しかも公開初日に)観に行ったかというと、ここに書くのが恥ずかしいくらいしょうもない理由なのだが、好きな俳優さんが映画に出ていたことと、主題歌を務めているEveさんが好きだからである。好きな人同士のコラボだ!と勝手に沸き立ち、意気揚々と初日のチケットを予約したのである。そんな理由で観に行ったものだから、正直映画を観る前は、ここまで見入ることになるとは全く予想していなかった。(むしろアクションシーンと主題歌が聞ければそれで十分だと思っていた・・・)だからこそ本当にこの映画に巡り合えたことに感謝をしている。
この映画には、何度かいわゆる「泣ける」場面が存在する。実際に上映中は私の隣に座っていた制服姿の女の子が鼻水をすする音が何度も聞こえてきたし、すすり泣きの声もあちこちから響いていた。私はひねくれた人間なので、「泣ける」場面ではできるだけ感情を押し殺して、意図的に泣かないように映画を見ていた。しかし、ラストシーンの佐々木蔵之介さんの数秒の演技では、自分でも涙を流していることに気が付かないほど自然に涙を流していた。
ネタバレを避けるために、どのようなシーンなのかという説明は省略するが、あの数秒に今まで見てきた主人公の、決して正しいとは言えない行動への答えが出ていると私は捉えた。主人公は間違ってなどいない。少なくとも自分の行いに後悔はしていない。この映画には様々な家族の在り方が描かれ、様々な愛の形が描かれている。だけどどの家族の形にも間違いはなく、それぞれが互いに思いやることのかけがえのなさを改めて感じた。
正義の反対は悪ではなく、異なる正義だという言葉を最近聞いたことがあるが、まさしくそれを思い知らされる映画だったと思う。「正義」という難しいテーマを題材にした作品だからこそ、抱く感想はひとりひとり大きく異なったものになると思うし、この映画を見た人がいたら感想を聞いてみたいというのが素直な気持ちだ。そして、このエッセイが誰かに映画「マイホームヒーロー」に興味を持ってもらうきっかけになれるのなら、それはとても幸せなことである。