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ヒーロー・チェーン  作者: 清泪(せいな)
Ep.5兄弟:

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38/54

.4 飲み会

 入社三年目。

 二年目の後半ぐらいから、一年目に参加した新人社員研修で一緒になった同期達と一緒に飲みに行くことが増えてきた。

 新入社員研修のグループワークの時に仲良くなったメンバーの中で、今でも連絡を取り合っている人達が結構多い。

 もちろん、小鳥遊優希もその中の一人だ。

 彼女とはあれから、何度か社内ですれ違うことがあったのだが、お互いに会釈を交わす程度しか関わり合っていない。

 小鳥遊さんは総務部で、僕は海外事業部に所属しているので業務上のやり取りも特にない。

 たまに廊下で会った時に、目が合うくらいだった。

 ただ一度だけ、彼女が何か言いたげな目でこちらを見てきたことがある。

 その時はいつもと違って、小鳥遊さんの方から目をそらされてしまった。

 あの時の目の意味はなんだったんだろうか?

 気になりはしたが、直接聞くことも出来ずにそのまま時は過ぎていった。


 そして今日、僕は同期の男数人と会社の近くの居酒屋に来ていた。

 

「いやぁ、お前はいいよな~。俺なんか、まだ女の子と付き合ったこともないんだぜ?」


 ビールの入ったジョッキを片手に、同期の男が愚痴をこぼすように言った。


「いや、別に羨ましがられるようなことでもないけど……」


 小鳥遊優希との関係性を公言してはいないのだけれど、社内に二人共いるわけだからそういう事柄に勘の働くヤツは一人か二人かはいるものだ。

 学生時代から思うのだが、そういう勘の働くヤツはどうしてもう一歩踏み込んで空気感を把握していないのだろう。

 僕と小鳥遊優希との関係性を良い感じであるとしたまま情報が止まっている。

 僕が彼女の気持ちを蔑ろにした結果、悪くなっているとも言える。

 この飲み会だって、最初は女性陣も参加予定だったのに小鳥遊優希が辞退したことを発端に次々と女性陣が辞退していった。

 結局残ったのは男性陣だけだった。


「なんだよ、贅沢言うなよ! 俺はもうそっちの道を諦めたっていうのに!」


「そうそう! 俺たちなんて彼女いない歴=年齢だぞ?!」


「そんな事言われても困るんだけど……。まあ、僕の場合は向こうから来てくれたってのもあるし、正直、あんまりモテる方じゃないと思うけど」


「くっそぉ、これだからイケメンは!」


 僕の言葉を聞いた男達が悔しそうな声を上げる。

 実際、僕は顔立ちが整っているとかそういった類ではない。

 どちらかと言うと、無愛想であまり笑わないタイプなので、人によっては怖いと思われてしまうこともある。

 だけど、昔からよく女子には好かれることが多かった。

 その理由はよくわからない。

 中学高校大学と、周りの男子からはその点では妬まれることもあった。

 だが、不思議と女子には嫌われることはなかった。

 おそらく、そのおかげで今こうして楽しくやっていけているのかもしれない。


「ほら、もっと飲めよ!」


「ああ、ありがとう!」


 同期の一人が半ばヤケクソ気味に注いでくれたお酒をノリに合わせて一気に飲む。


「おっ! やるじゃん!」


「じゃあ、こっちも!」


 さらに別の同期が僕のグラスに自分のグラスをカチンと合わせてくる。


「かんぱーーーーーーーーーーーーい!!!」


 そこからは飲んで騒ぐだけになった。


「そういえばさ、小鳥遊さんって彼氏いるのかな?」


「えっ?知らないのか?あいつ、この間、男と一緒に歩いてたらしいぞ」


「マジか!?」


「なんでも、相手はうちの会社の社員だとか」


「えぇ? それって……まさか……不倫か?!」


 小鳥遊さんの話題が出た途端、みんなが口々に話し始めた。


「おい、その辺にしとけよ。本人が聞いてたらどうするんだ?」


「あ、わりぃ!」


 誰かが注意すると、その話はそれで終わりとなった。

 僕はというと、何とも言えない気分になっていた。

 やめろよ、なんて彼氏面の出しゃばった言葉は言える資格があるのかどうか危うかった。

 僕と小鳥遊さんの関係性を囃し立てられても困るから下手に庇い立てして、その噂の男性と誤解されても困りものだった。

 彼女の好意を拒んだのは僕で、彼女のことに率先して関わるのは躊躇われた。

 どういう理屈で不倫だと疑ってるのかはわからないが、彼女が幸せであるならばどんな形でもいいじゃないかと思うことにした。

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