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ヒーロー・チェーン  作者: 清泪(せいな)
Ep.3:自己

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22/54

.2 愚妹

 なんかわーわー言うとります。

 引きこもりの兄貴のことなんかほっときゃいいのに、クソ妹はどうも俺を出したいらしくてね。

 傍観決め込んだ両親様と対立する毎日。

 俺がニート生活始めたのも両親様のせいなんだから、お金払って養うのも贖罪の一種で、それに甘んじちゃうのも悪いわけではないと思うんだけど。

 兄だけ甘やかされるのは、不平等だとでも思ってんのかねぇ。

 んじゃ、てめぇもどん底味わえやクソ妹。


 ああ、殴りたい。

 わーわーうっせぇ、妹ぶん殴りたい。

 ボコボコにしたら静かになるかな?

 いや、静かになるまでボコボコにしようかな。


 でもさ、部屋出たら負けなわけ。

 両親様の贖罪もそこで終わるわけ。

 それはダメでしょ。


 家族としてね、罪の重さを理解させてやらんとならんのよ。

 だから、俺は出んよ。

 一歩足りとも、出ん。


「オイ、クソ兄貴! 出てこい!!」


 ついに乗り込んで来やがった。

 なんだかんだで俺の部屋(ここ)まで乗り込んで来ないかと思ってたけど。

 来やがった。


「起きてんでしょ、出て来いって言ってんの!」


 ドアを壊す勢いでノックするクソ妹。

 最終的には蹴破るつもりか?


「ねぇ、お願いだから! 出てきてよ!! ねぇ、せめて、開けてよ!!! お兄ちゃんっ!!!!」


 リアル妹にお兄ちゃんって呼ばれても微塵も萌えませんが?

 いや、なんかいつもより必死すぎて引くわー。


「お願い、お願いだから、早く!!」


→わかったよ、出ればいいんだろ?

 だが、断る。


 嫌々ながらドアを開けたら、そこには全身を赤く汚したクソ妹が立っていて。

 いつもなら近づくことすら嫌がるクソ妹が、何故だか俺の胸に自分の額をくっつけるようにもたれかかってきて。

 俺の腹には、冷たくて痛い何かが突き刺さって。


「やっぱり、やっぱりだ」


 ゆっくりと一歩下がっていくクソ妹。

 その目は充血しきっていて、涙を流してるくせに強く俺のことを睨んでやがる。


 は?

 やっぱりって、何だよ?

 腹が痛くて上手く声が出せない。


 腹に冷たい何かが刺さってる。

 それが俺の血で生温かくなるのがわかる。


「首筋の痣」


 痣?

 言われて俺は首筋を触った。

 右側に変な感触がある。

 これが、痣?


「ヒーロー・チェーンって知ってる?」


 ああ、マジか。

 ステマじゃなかったのかよ、クソ!


「兄貴、どうせクソだから自分の事だけしか考えてないんでしょ?」


 自分の兄貴刺したヤツに、クソ呼ばわりとは。


 ふざけんなよ、リア充イベントじゃないのかよ。

 オナニーも許されねぇのかよ。

 理不尽どころかどん詰まりじゃねぇか。


 自分を助けたければ変身して死ね、ってか。


「さっきね、お母さん、モンスターに喰われたよ。きっとお父さんも玄関先で喰われてる。モンスターの口元に足、引っ掛かってた」


 さっきの騒ぎはそれか。

 モンスターは標的の俺を殺すまで、通りすがりを殲滅する。


「私ね、死にたくないの。こんなクソ兄貴のせいで死にたくないの! あんな化け物に喰われたくないの!!」


 クソ妹は腹部に刺した何かを強引に引っこ抜き、また刺してきた。


 痛い。

 もう痛すぎて、一周回って、また痛い。

 感覚なんてさっさと無くなればいいのに。

 痛さだけが明確に残ってやがる。


「死にたくないの、だから早く死んでよ!」


 グシャグシャとよくとまぁ刺しやがる。

 

 でも、すまんな妹よ。

 俺はなかなかしぶといらしい。


 ほら、聞こえるか妹よ。

 足音だ。

 唸り声だ。

 もう間に合わん。


 大体、刺しにくる暇があったなら逃げれば良かったんだ。


 ああ、やっぱり、クソだな、お前は。

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