表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーロー・チェーン  作者: 清泪(せいな)
Ep.2:恋人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/54

.9 虚ろに揺らぐ

 私を守るということは、自身の命を投げ出すということ。


「だからさ、暫くそばにいてほしい。全てが終わるまで、俺に守らせて欲しい」


 モンスターがいつ現れるかは、ワイドショーでは言ってなかった。

 元から決まってないのか、誰も証言出来ていないのか。

 そもそもモンスターなんてモノがいるかどうかも、怪しい話なんだ。


「あのね、翔。私ね、付き合っている人がいるの」


「そ、そっか。そうだよな」


 正直、ヒーロー・チェーンとかいう都市伝説も、織田翔のことも信じられない。

 姑息だとは思わないけど、しつこい性格の織田翔が、嘘並べて私を口説こうとしてるのかもしれない。

 だから、判断基準だった。

 滴のことを言って、織田翔がどう反応するのか、が。


「じゃあ、その彼氏にも説明させてくれないか。ヒーロー・チェーンのこと」


「説明、って。ねぇ、何でそんなにヒーロー・チェーンのこと信じられるの?」


 あまりに嘘臭い都市伝説を、こんなに信じられるのは不思議だ。

 私なら例え痣が出来たって、偶然で済ますし、馬鹿らしくて人に話そうなんて思わない。


「俺さ、やっぱりまだ來未のことが好きなんだよ」


 織田翔は首筋を擦りながらそう言った。

 それ以上の説明は無かった。

 それが全てなんだ、ということ。


 やめてほしい。

 そういうのを真っ直ぐな瞳で言うのは。

 さっきまで虚ろな瞳だったのに、一瞬かつての力強さを取り戻していた。

 あのキラキラした、瞳。

 夢を追う、瞳。

 今はその対象が私なのだろうか?

 私を守ることが、夢なのだろうか?


 織田翔は、今、私を選んだのか。

 全てを捨てて。


 私は――私は何を選ぶ?


 織田翔。

→佐波滴。


「ごめんね、翔。私、翔の言ってること信じられない」


 輝いていた瞳が、再び虚ろに揺らぐ。

 織田翔の瞳を曇らせているのは、私のせいなのだろうか?


「そっか……そうだよな。久しぶりに会っていきなりこんな話、信じられないよな」


 織田翔に嘘をつかれたことは無かった。

 だけど、あまりにもあまりな話だ。


 ヒーロー・チェーン?

 都市伝説?

 なんだそれは、としか言いようが無い。

 

 きっと織田翔はアメリカに行って、夢に破れて、疲れて、壊れたのだ。

 だから、ありえないヒーローごっこにすがってるのかもしれない。


「ねぇ、話はそれで終わり?」


 そう思うと急に冷めてきた、いや覚めてる自分を再認識出来た。

 私は、織田翔との恋愛ごとからすっかり覚めてしまっている。

 その感覚は、自分でも驚くほど言葉として音に乗る。


「ああ、終わり、だ」


 織田翔の歯切れが悪くなった。

 私に取りつく島もないことを理解したのだろう。

 虚ろに揺らぐ瞳に、悲哀の色が混ざる。

 今すぐ泣き出してしまいそうだった。

 元カレのそんなみっともない姿を見たくなかったので、私は早々にこの場を去ることにした。


「もうこれで最後だから。さようなら」


 織田翔は返事もろくにせず、頷くだけだった。

 一発ぶん殴ってやれる空気じゃなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ