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ケサランパサラン(2)

 なんだ?


 周囲を見回してみても、音の出どころらしき物は見つからない。


 ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……


 それでもやっぱり聞こえる。眉を顰めている間にも、不思議な音はだんだんと近づいてきているような気がする。


 ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……


 初めは微かだったその音が、今ははっきりと聞こえる。


 ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……


 ハッとして見上げた私の鼻先を、白いものがフワリと掠めていった。思わず両手で包むようにしてそれを捕まえる。


 咄嗟のことに、考えるよりも先に体が動いてしまったが、果たして素手で捕まえても大丈夫な物だったのだろうか。


 恐る恐る両手を目の高さまで上げる。手の中に何かがいる感触はない。きっと捕まえ損ねたのだろう。そっと指の隙間から手の中を確認してみた。


 パチクリとした2つの目玉と視線がぶつかる。


 声にならない叫びと共に、捕まえた形のままの手を思いっきり伸ばして顔から遠ざけた。


 なんだ今のは?


 何かを捕まえたままの手を見つめる。手の中には、やはり、何の感触もない。


 疲れ目のせいで、見間違えたのだろうか。


 しばらく手を開くことも出来ずじっとしていた。しかし、何かが手の中で動く気配はない。


 特に変化もないので、意を決して離していた手をゆるゆると引き戻す。耳を傾けてみた。モゾモゾと動く音もしない。


 ずっとこのままというわけにもいがないので、えいやっと勢いに任せて両手を開いてみる。


 何もいなかった。


 安堵の息を吐き、それからはハッと息を呑んだ。泥だらけのはずの手のひらが、粉をはたいたように真っ白になっていた。


 やっぱり手の中に何かいたんだ。


 得体の知れない恐ろしさが背筋をゾゾゾと駆け上る。その時またあの音が聞こえてきた。


 ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……


 ばっと空を見上げると、向こうの空に白い筋がひとすじ見えた。


 私はサンダルを脱ぎ捨て、部屋へ駆け込む。窓をピシャリと閉めれば、あの不思議な音は聞こえなくなった。


 ホッと胸を撫で下ろし、怖い物見たさでもう一度窓を開けてみる。


 窓の外は、先ほどの薄明かりの景色から一転、雨上がりのすっきりとした晴天に光り輝いていた。もちろん、あの不思議な白い筋も見当たらない。


 しかし、首を傾げた私の耳には、またあの音が聞こえた気がした。


 ……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……ケサラン……パサラン……

完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

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