ババババババ
ババババババ……
突然の打たれるような音に、飛び起きる。
夢かと思ったら、激しい打撃音は現実だった。カーテンを少し開け、窓の外を見るが何も見えない。視界を奪ってしまうほどの豪雨が、窓に、ベランダに、地面に激しく打ち付けている。
天気予報の大当たりを嘆きつつ、ベッドへ戻り、スマホの画面で時間を確認すれば、先ほどから2時間程経っていた。時刻は草木も眠る丑三つ時。
だけど、こんなに騒がしくては、草木はきっと眠れない。私だって眠れない。
布団を頭まですっぽりと被って、ギュッと目を瞑る。しかし、雨の音が私の心に激しく打ち付け大きな波紋をいくつもいくつも作っていく。
耳にはイヤホンをしたままなので、布団とイヤホンのおかげで、これでも幾分かは音が小さくなっているのだろう。しかし、外がうるさい。
試しに、先ほどの小川のせせらぎを再生してみたが、ババババババとチョロチョロサラサラが混ざって、なんだか気持ちが悪い。
これでは、全然眠れない。
仕方がないので、小川のせせらぎは諦めることにした。「1/fの揺らぎ」も豪雨にはかなわないということか。
私の周りには、ババババババと激しい豪雨の音が渦巻く。家が壊れてしまうのではないかと思わせるような激しい打ち付けに、思わず布団をきつく握り、カタツムリのように布団の中で身を固くする。
一向に収まる気配のない雨音は、完全に私から睡魔を追い払ってしまった。
それどころか、どうやら雷様を連れてきてしまったようで、突然バーンと大砲を打ったような大きな音を辺りに響かせた。
雷様の威力は絶大で、窓がビリビリと振動する。どこか、近くに落ちたのだろうか。
イヤホンを耳栓代わりにギュッと耳を塞いでみても、一向に静かにならない外の宴会に、私は堪らず布団を飛び出した。
私には、まだ伝家の宝刀が残っている。
本棚の前に仁王立ちになり、分厚いファンタジーものの本を取り出す。
もう何度も読んだが、何度だって物語の世界に没頭できるこの本は、周りの音を遮断してくれる、私にとって伝家の宝刀なのだ。しかし、時間感覚さえも遮断してしまう諸刃の剣でもあるのだが。
物語の世界に深く入り込んでしまい、何度も夜を明かしてしまったことがあるこの本を読み始めれば、雨音も雷も気にならなくなる。
そう信じて、私は急いでベッドへ戻る。布団を深く被り、布団の中をスマホのライトで照らす。
とっても読みにくいけれど、向こうの世界に行くまでの辛抱だ。