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シトシトシト

 夕飯を作り終えると、私の周りが静かになった。窓やベランダを叩く雨音もしない。


 最近では滅多にないことだけれど、これはもしや、本当に天気予報が大ハズレしたのではないか。


 そんな大きな期待を胸に食卓の準備を終えて、いそいそと窓辺に寄る。レースのカーテンを捲ると、私は窓の外に目を凝らした。


 室内の光を反射した窓からは、夜の姿となった外の景色を見ることは難しい。窓に鼻をくっつけて外の様子を伺っていると、次第に目が慣れてきた。


 雨粒は私の目には見えないけれど、既に小さな水たまりができている。雨粒がシトシトと音もなく水たまりに波紋を作り、その範囲を広げようとしていた。


 分かっていたことではあるけれど、期待を裏切られた私はがっかりしながら力任せに分厚いカーテンを引き、外と室内を厳重に分ける。


 それなのに、音のない雨音がシトシトシトと、私の後をついてくるような気がして、私はパタパタパタと必要以上にスリッパを鳴らして、窓から離れ、食卓へ逃げ込んだ。


 もう、天気予報を疑うのはやめよう。最近の天気予報の精度の高さは、折り紙付きなのだから。むしろ、いつが雨のピークで、いつ頃止むのかまで正確に時間を示してくれているのだから、それを頼りに、万全の対策を行うべきなのだ。


 私は自身を戒めつつ、急ぎ気味に夕食を平らげる。それから、少し雑に洗い物を済ませると、浴槽の準備を整え、また、パタパタとスリッパを鳴らしながら自室へと駆けこんだ。


 天気予報を全面的に信じるのであれば、雨のピークは深夜を過ぎた頃になるはずだ。それまでに、眠ってしまわなくてはならない。つまり、時間を逆算すると、長風呂の私は今すぐにでも風呂に入らなければ、リラックスタイムを逃すことになるかもしれないのだ。


 慌ててメイクを落とし、パジャマとスマホを手に、またパタパタパタとスリッパを鳴らして、今度は脱衣所へと駆ける。


 脱衣所で服を脱ぐ前に、もう一度出窓から外を確認する。雨は相変わらずシトシトだったが、気のせいか、水たまりにできる波紋が大きくなっているような気がした。


 まだ大丈夫だろうか。


 一抹の不安を抱えながらも、のんびりとはしていられない。私は、勢いよく服を脱ぎ棄て、浴室のドアをパタリと閉める。


 ザバザバと勢いよくかけ湯をしてから、シャワーをキュッと捻る。途端にサァァァとシャワーが雨のような温水を吐き出した。


 似たような音なのに、どうしてシャワーの音は平気なのだろう。

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