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第15話


「……なんとも、あっけない」


 魔眼とは、こうも常識外れな能力なのかととフニは思う。ギルヴァも魔眼を持ってはいたが、しかし同じ魔眼にも格の違いがあるのだろう。


 目の前には首を失ったギルヴァの死体が転がっている。こういうとき、ギルヴァの首を掲げて勝利を宣言するのが正しいのだろうが……


「……ばっちぃので、触りたくないですね」


 放っておくことにした。


「代わりはこの細剣(レイピア)で十分でしょう」


 ギルヴァの血に濡れた細剣(レイピア)――これが、勝利の証とならないはずはあるまいと。フニは天高く、決闘を見届けた全ての国民に向けて、その証明を突き上げた。


 未だ理解が及ばず固まったままの全ての民に、フニは宣言を飛ばす。あまりの静寂ゆえに、死に体のフニの声であっても十分に響き渡りそうに思えた。


「――『第二位』、改め『第一位』フニ・サーチレイ。今この瞬間より、ボクが『第一位』の座を名乗らせて頂きます。……どうぞ、お手柔らかに」


 すると数秒の沈黙を挟み。

 直後、雲を割くほどの怒号がフニを包んだ。


 聞こえてくるのは祝福ではなく、感謝と歓喜。フニが第一位になったことよりも、ギルヴァの暴虐を止めたこと自体に、皆は喜びを見せていた。


「……フニ様」


 ドレスに身を包んだままのサーシャが、ゆっくりと近づいてくる。


「サーシャ、無事でしたか?ギルヴァに変なことされませんでした?」


「わ、私は何ともありません。それより大変なのはフニ様の身体です。急いで医者へと向かいましょう。……平気そうな顔をしていらっしゃいますけど、明らかに即死級の大怪我です」


「そうですか?いや、そうですね。言われてみれば、確かに死ぬ寸前な気もします。……というかボク、三秒後にぶっ倒れるらしいです」


「え?……え、フニ様!?」


 と、宣言通りに真っ青な顔で倒れ込むフニを、サーシャは寸でのところで受け止める。あわやその衝撃で死んでしまいそうなフニではあったが、その後すぐに現れた担架に乗せられ、国一番の医師の元へと運ばれて行った。


 目立つ魔眼も鳴りを潜め、フニの瞳は元に戻っている。


「し、しっかりしてくださいフニ様!もうすぐ!もうすぐ治療を受けられますから!」


「……大丈夫ですって。ちょっと左腕が無いだけです」


「それ何も大丈夫ではありませんからね!?」


 むしろ大丈夫な部位など一つもない、と救助に関わる面々は思う。サーシャを含めた全員が、「いいから静かに寝てろ」と怒鳴りつけたくなるのを堪えつつ、全力で走った。


 そんな風に担架で運ばれる中、ふとフニの視界に気になる人物が映り込む。勝手に流れていく風景の中で、小さな女の子が泣いている姿を見つけたのだ。

 その少女の悲痛な泣き叫び方は、迷子どころでは済まないように思える。


「……サーシャ、少し止めてください。すぐそこに泣いてる女の子が」


「一体何を仰っているのですか!?こんな状況で止まれる訳がないでしょう!!それに泣いている女の子など何処にも居ません!」


「え?……いやでも、そこに」


「皆さん急ぎますよ!フニ様は幻覚を見るほど生死の境をさ迷っている様子です!」


 うわぁ幻覚扱いされた……としょんぼりするフニだが、しかしサーシャの反応は演技に見えない。加えて他の医師らもサーシャと似たような反応で、少女を見た人間は一人も居ないようだった。


――まさか、本当に幻覚なのでしょうか……?


 意識が朦朧としていることもあり、フニはフニで自分の見たものを信じきれずにいる。「自分にしか見えない少女」か「ただの幻覚」の二択で選ぶなら、やはり後者の方が現実的か。

 フニは少し不安に感じつつも、結局何も見なかったことにして、そのまま大人しく運ばれるのだった。



☆ ☆ ☆



 小さな女の子が泣いている。皆が歓喜に叫ぶ中、一人の少女だけが泣いていた。

 周りは大勢の人で溢れ返っているのに、誰一人として声を掛けようとしない。助けようとはしない。見ようとすらしない。


「ぐすっ……。フニの為に、頑張ったのに。フニが死んじゃったら嫌だから、頑張ってたくさん未来を調べたのに。……黙れって言われた。フニに、嫌われちゃった」


――否、誰にも見えなかった。


 ポロポロと流れる涙を拭いながら、誰にも聞こえない嗚咽を洩らす。金色の髪の小さな少女は、大好きな人に拒絶された事実に、うわーんと大声で泣き続けた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ええぇぇ……リガミア様、憎めなくなるじゃん……。 作者さん! 技名考えるの最高ですか!! もう、本当、作者さん戦闘シーン格好良すぎ! あの、親愛や尊敬を示す語彙、なんであんなに知ってるんです…
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