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第12話


「……まさか、え。お前?」


 ギルヴァはフニと目が合った瞬間、フニの考えを理解した。刺し違えてでも殺してやる、という絶対の覚悟を見た。


「ふ、ふざけないでよ……っ」


 フニが神速に至るまでの時間はあと僅か。それまでにフニを殺しきらねば、次に刃を突き付けられるのはギルヴァの方だった。


 本気の『飛撃魔法』を放つだけの時間の無いギルヴァが選んだのは、急所を狙う連撃である。首だけは細剣(レイピア)で隠され狙えないが、しかし『腕』『胴』『両足』と、「攻撃を止める急所」は幾らでもあった。

 

「死ねッ!!!」

 

 数多の『飛撃魔法』がフニの身体をズタズタに裂く。全身は血に染まり、フニの真下には血溜まりが生まれた。傷の上に傷が重なり、傷の境目すら分からなくなる。


 だが、それでもフニの瞳は揺らがない。斬撃の嵐に身を置いてもなお、殺意の色は薄まらなかった。


 そして、響く。


「――――《残響》」


 フニの姿が、また消えた。


 限界まで加速した己だけの世界で、フニはギルヴァとの距離を一瞬で詰める。世界からは色が消え、音も消え、ただ無音のモノクロを駆け抜けた。


 止まった世界を一人往く。フニがギルヴァの目前に迫ってもなお、ギルヴァの視線は「フニが最初に構えていた位置」に固まっていた。つまりギルヴァは、フニを目で追えてすらいなかった。


 ギルヴァが躱した最初の《残響》と今回では、状況がまるで違う。距離は半分以下で、到達にかかる時間も半分以下。避けられる道理はない。


 フニは勝利を確信する。


 そして右手に握った細剣(レイピア)で、ギルヴァの首を斬り落とそうとして――


「!?」


――転んだ。


 自ら生み出した速度のままに、フニは天地を返して転がっていく。何が起きたのかも分からずに、色の戻った世界で目を白黒とさせた。

 右手に斬った感触がないことから、渾身の一撃を外したのだと理解する。


 やらかした。何故。有り得ない。

 焦りと困惑と絶望が入り混じる。


「……くっ」


 だがそれでもどうにか顔を上げ、フニは即座に立ち上がろうとした。()()で身体を支えて――


「……ぇ?」


――左腕が無いことに、気づいた。


 肩口から先の感覚が消えている。味わったことのない喪失感が全身を覆う。身体の左側だけが、やけに軽くて……


「……だから、転んだ?」


 ハッとしながら、《残響》で一歩目を踏み抜いた場所を見る。するとそこには、馴染み深い自分の左腕が落ちていた。

 フニの呼吸が不規則に荒れる。受け入れ難い現実に視線が定まらない。


「……いやでも、そんなわけ」


 腕を綺麗に斬り落とせるほど、強力な『飛撃魔法』を放つ時間を与えたつもりはない。事実ギルヴァは、連撃でフニの全身の筋肉をズタズタに裂くという戦略を選んだ。


「……そもそも。斬られたことに気づけない、なんて」


 フニの動体視力があれば、『飛撃魔法』は空気の揺らぎとして視覚で捉えられる。腕を斬り落とすほどの濃密な魔法を、見逃すはずがないのだ。

 

 不可解な点が、あまりにも多かった。


「ボクは一体……何をされた?」


 左から感じる熱を堪えながら、必死に思考を巡らせる。この正体不明の攻撃を明かさない限り、勝ち目は皆無だと分かっていたからこそ、全力で考えた。


 フニは膝をついたまま、此方(こちら)へと近づいてくるギルヴァを見上げる。


「……。なんですか、()()


 しかし結果的にフニは、あっという間に思考を終えた。


 理由はギルヴァの、眼球。碧色に染まり、まるで縦に裂けたかの紋様を宿した眼球を見て、フニは驚き固まった。瞳の色も瞳孔の大きさも、何もかもが変化していた。


「フニ・サーチレイ……お前、本当に巫山戯(ふざけ)んなよ。こんな大勢の前で、俺に魔眼を使わせやがって……」


「……魔、眼?」


 あまりにも唐突で、聞いたこともない単語。


「視界に入っている空間を、問答無用で切断する『断絶眼』。お前が何をどう頑張っても、絶対に回避できないから……まぁ諦めて死んでね」


 それはあまりにも理不尽で、どうしようもない宣告で――



『【止めなさい。殺されるだけです】』



――そんな中、フニはリガミアの言葉を思い出していた。


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