表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
9/58

交易街サザンカ

「や、やっと着いた……」


ツバサの目の前には街の入り口がある。必要最低限の戦闘に抑えて走り続けたツバサの顔は疲労困憊な状態を表していた。


初めは景色を楽しみながら走っていた。戦闘を試行錯誤した。スタミナが無くなれば回復を待つために休憩もした。それを丸1日費やすのはやる気の低下に繋がる。俺はかなり生き急ぎ過ぎたようだ。


ただ、丸1日費やした甲斐あって街に辿り着いた。取り敢えず一休みしよう。




さぁ! 日付が変わって元気いっぱい! 今日もやったるでー!


俺がやってきた街は交易街サザンカって呼ばれてる。プレイヤーのスタート地点、聖都アスチルベはフリージア大陸の中部にある。その中部地方の最東端にこの交易街サザンカがある。


もっと簡単に言えば中部地方は中立エリア。PK不可エリアだ。中部地方から出ればPK可能エリアになる。


サザンカを目指す途中、聖都とサザンカの中間くらいからすれ違うプレイヤーも増えてた。掲示板に書いてあったことを鵜呑みにするなら、モンスターが強すぎて進めないと判断したプレイヤーとすれ違ったんだろう。


それでもサービス開始したばかりで、話題性があって、ヒット作になりつつあるフリユピの人口の多さを実感するくらいには人が多い。サザンカでこれだ。西部はとんでもないんだろうな。東を選んで正解かなこれは。


俺は東部で活動する! その鋼の意思を示すためにリスポン地点を変更だ。


中部地方は聖女レティシアの恩恵を強く受けている。それは聖女の加護として中部地方全体にバフ効果を得られていることからプレイヤーにも分かりやすい設定となっていた。その恩恵はモンスターの弱体化(初心者プレイヤー用の弱いモンスターの配置、モンスターの発生が遅いなど)、治癒能力の上昇、聖女レティシアの願いを強く受けた人々の在り方だ。PK不可エリアとなっているのは人同士の争いを望まない聖女の願いによるものだ。


そういった背景から中部地方のリスポン地点の設定は教会で祈りを捧げるという形で可能だ。これは初心者向けの登録方法となる。祈るだけなので金がかからないのだ。


中部地方を出ると聖女の加護は無くなり、街によっては教会が無かったりする。設定により、西部は聖女が守り抜いた地として、各地に教会が大抵どこにでもあるが、東部は大きな街で無ければ見つからないといったように差があるのだ。


教会以外の方法は、定番が宿屋を借りることとなる。店主に借りる日数分の金を払うことでリスポン地点として使うことが出来る。借りた部屋は期限がある代わりに自分専用の部屋として使え、支払う値段相応に仮の倉庫としてアイテムを置くことが出来る。ただ、部屋の数は無限ではない。早い者勝ちで、部屋が埋まればリスポン地点を更新できなかったりと不便な側面がある。


他の代表的なリスポン地点には冒険者ギルドがある。ギルドに登録し、クエストを何度か受けてそのギルドから信用を得ると部屋を貸してもらえるようになる。宿屋と同じでアイテムをいくつか置いておくことができるが、そのかわりクエスト報酬が割り引かれてしまう。


他にもいくつかあるが、今は割愛する。


俺はリスポン地点を変更するために教会へと向かい祈りを捧げ変更した。これで聖都に戻れなくなった。引き返すとしても丸1日使うことになる。


「クエストが……ない!?」


次にやってきたのは冒険者ギルドだ。手早く登録を済ませて装備集めのための資金集めのつもりでギルドにやってきたのに受付から告げられたのはクエストがないと言う知らせだった


「悪りぃな兄ちゃん。ここ最近聖女様が天上の一族をたくさん呼び寄せてる影響でギルドの依頼がどんどん消化されてくんだ。ギルドとしちゃありがたいんだがな。街の住人からの依頼が入れば、どんな小さな依頼でも天上の一族が取り合ってる状況だ。依頼が入ってくるのを待つのは勧められねぇな」


「天上の一族って?」


「あぁ、兄ちゃんも天上の一族か? 大したこたぁない。天上人、天上族と同じ意味だ。遥か彼方からやってきた力ある者達のことをそう言ってるだけさ。モンスターにやられちまっても、生き返るくれぇだからな。なんでも、仮の体に魂だけ宿してるとかそんな噂もある。そこんとこどうなんだ?」


「俺に聞かれてもな……」


「本人もわかってねぇか。不死だとか不老だとか話題に尽きねぇ一族の話は面白いからよ。すまねぇな」


「いいさ。サザンカでクエストが受けられないのはわかった。俺はある程度装備を整えたいんだ。他に方法はないの?」


「そうさな……せっかく来てくれたんだ。いくつかの手段を教えよう」


「頼む」


「まずは、討伐クエストだな――」


汎用討伐クエスト。冒険者ギルドで常設されているクエストで指定された一定数のモンスターを討伐することで報酬を貰うクエストだ。


ただ、今の時期は殆どのクエストが取り合いになるほど人が多い。その影響は汎用クエストにも及んでいた。同じモンスターの奪い合い。これが中部地方であればPKにはならないが横取りが横行したりと問題が多発している。東部地方エリアでは人が多すぎるために無法地帯となってしまっている。取り合いは当然のこと、PKを楽しむ愉快犯を多い。初期装備のツバサには難しい。


(人間関係が面倒なのに自分から地雷原に入る必要はないな。却下)


次に汎用採取クエストだ。これもまたアイテムの取り合いに発展する面倒なクエストだ。通常のクエストを受けるついでにやるのがこの手のクエストなのだ。旨味は無いに等しい。


(却下だ)


「俺のお勧めは東部地方以外に移動することだ。特に西部がお勧めだぞ。この辺より遥かに人は多いが、その分活発だ。時間はかかるかもしれんが安全に、その上安定した活動ができるはずだ」


「いや、俺は東部で活動するつもりだ。今更引き返す気にはならないな」


「ほぉ? 物好きな兄ちゃんだな。ならいっそのこと東部の最寄りの街に移動しちまうのも一つの手になるな。東部は他の地方と比べてモンスターが強力だが、死んでも生き返るなんて言われてる天上の一族なら無謀な挑戦をするのもいい。他の奴らには絶対勧められない方法だかな! ガッハッハ!」


ありっちゃありだな。どうする?


「最寄りの街には天上族は多いのか?」


「うーむ……本気にしちまったか? まぁなんだ。この辺に比べれば遥かに少なくなるのはまず間違いない。挑戦した天上の一族のもんが諦めて他地方への移動を決断をするくらいだからな。サザンカのようにクエストが無いなんてことは無いと思うぞ? 俺は勧められないがな」


候補の一つかな。何度も死ぬ可能性があるけどゲームだからな。心が折れるまで挑戦してみるのもゲームの醍醐味だ


「他には?」


「他は、ギルドに属してる俺が勧めるのはちょいと気が引けるが――」


サザンカを巡って直接クエストを受けることが出来るらしい。条件は様々だが、住人と親しくなればお願いされたりする。何もしなくてもいずれ冒険者ギルドに依頼してクエストを受けられるようになる。今の状況ではクエストは取り合いになるから一つの手ではある。同じことを教えてもらった人や聞かなくても行動に移している人もいるはず。無駄足になる可能性の方が高い気がするな。


(却下かな)


「後は……冒険者になって一攫千金を目指す奴らに勧めるのは違う気もするが、これも方法の一つだな。店を構える店主と交渉して雇ってもらう方法だ」


「店番か」


「そういうことだ。冒険者になるくらいだ興味はないと思うが、店の経営の仕方を学べたり、店番をすりゃあ多少の交渉術を身につけられるだろうさ。収入は少ないだろうが、雇ってもらえりゃ安定した収入にはなるぞ」


「そっか……」


装備を整えるまでバイトすることも出来るのか。時間はかかるだろうけど、東部を目指すと決めた俺がサザンカより西に移らないための最終手段として残すのはありだな。


「俺が提示できるのはこのくらいだな」


「助かったよ。時間取らせて悪かった」


「なに、構わねえさ。冒険者が飽和状態だからな。受付の仕事がほとんど無い。俺もいい暇潰しになった」


さて、どうするか。っていってももうどうするか決まってる。


更に東を目指す。


どの程度のモンスターがいるのかわからないぶん不安もある。ま、掠っただけで死ぬようなら店番だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ