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Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
49/58

のんびりとした一日

 ぐお〜しゅぴしゅぴ。ぐお〜しゅぴしゅぴ。う〜んむにゃむにゃ。ぐお〜しゅぴ……ふがっ!


「……今何時……10時……もうちょっと……」


 ぐお〜しゅぴしゅぴ。ぐお〜しゅぴしゅぴ。う〜んむにゃむにゃ。ぐお〜しゅぴ……ふがっ!


「うにゃ〜」


「……にゃん……」


 ぐお〜しゅぴしゅぴ――むがっ!


「にゃ〜ん」


「……顔に……ペチペチ……しないの」


 くかーくかー……すぅすぅす――ふごっ!


「うな〜な〜〜」


「鼻……やめて……窒息するから……今何時……11時……もう少し……」


 すぴーすぴー……しゅぴしゅぴ……ぐお〜しゅぴしゅぴ……


「にゃ〜ん。な〜。うにゃ〜」


「ぐぐぐ……あとで――あとで遊ぼ」


「うな〜あ! にゃあ〜あ!」


「ワンワン! わふわふ!」


「……ぐお〜……」


「にゃあにゃあ! うな〜あ〜!」


「わふわふ! クンクンクンクン――スンスンスンスン」


「――わ、わかった。俺の負けだ。負けたから、顔ペチペチしたり、ペロペロ舐めたりするのはまた今度にしてくれ!」


 これが、休日に子供達にせがまれて起こされる父親の気持ちってやつかよ……幸せと睡魔と気苦労に襲われるぜ。顔べっとりだ。


「うーむ。1時位までは寝たかった……が、仕方あるまい」


 まずは身支度を整えてからご飯を食べよう。


「一緒に飯食おうな」


「ワン!」


「にゃ〜」


 あぁ、そういや母さん出かけるって言ってたな。腹減ったから起こしにきたのか。顔洗って、歯磨いて。


「まだちょっと瞼重いな――今日は早寝しよう」


 昨日の残り物レンジで温めつつ、インスタントの火通すだけのハンバーグに、レタス一枚取って切って乗せてー、漬物出してー、キャベツ刻んでー、キュウリ切ってー、豆腐切ってー、トマト洗ってー……こんなもんでいいか。米は……あるな。


 にゃん吉とワン左衛門のご飯器に入れて準備オッケー。


「いただきます」


「うな〜」


「わふわふ」


 俺に料理のこだわりなぞないのだ! サラダなんて結局ドレッシング次第なのだ! インスタントハンバーグもソースかければ美味しい! 母さんの作った昨日の残り物も美味しい! 漬け物も美味しい! 米が進むぜ! 美味しい!


「――ふぅ――ごちそうさまでした。お前らも美味かったか?」


「にゃ!」


「わん!」


「よろしい! 俺もご飯3杯食ったぜ!」


 にゃん吉は満足したみたいだ。猫仲間の集会場にでも行くのかな。行ってらっしゃい。


「ワン左衛門。俺達は食後の散歩行くか」


「!!」


 かわいい。


 水道水入ったペットボトルよし、スコップよし、ビニール袋よし、カバンよし。フリスピーよし。


「体につけるやつ〜体につけるやつ〜」


 ハーネスっていうんだっけな。体につけるやつで通じて、ハーネスで通じない家なんです。昔、学校で犬の話した時に体につけるやつなんて言うんだっけって聞いて、抽象的過ぎてわからんって返されたね。


 リード? 首輪? エリザベスカラー? なんだよエリザベスカラーって首回りにつける保護具? へー!


 体につけるやつそれじゃない? リードを首じゃなくて体に? あぁ〜ハーネスな! みたいな。


「よし行こう」


「わふ!」


 ご近所さんこんにちは。いえ母さん出かけてます。あぁはい、伝えておきますね。


 昨日は大変だった。鉱夫救出とマザースコーピオンスパイダーの討伐同時にやったんだもんな。イベントというか、クエストというか……フリユピは昼夜関係なく発生するね。MMOらしいといえばそれまでだけど。


 おっとおしっこ。水トポトポ〜。待たせたなワン左衛門。


 おかげで深夜回って7時頃まで休みなしでやっちまった。いや、休憩はゲーム内でしたな。VR内での休憩は休憩になるのだろうか。ならないよなたぶん。体は休んでるけど頭フル稼働だもんな。目は閉じてるから乾燥したりとかしてないし、近くで画面見てないから視力は全く落ちてない。体の疲労感は無いけど……眠気はちゃんと出てくるんだよな。脳みそが疲れると休みたくなるんだろうね。


 おっとうんこ。うむ、スコップほりほり。そんななんとも言えないような真顔で見るなって、人の社会って面倒なんだ。土かけたの掘り起こして悪かったって。


「よし公園行こう」


「……わん!」


 まぁでも、俺の理想の戦い方。フリユピで通用するってのは自信になる。途中でコケて、四苦八苦するつもりだったから、今のところ順調っちゃ順調。まだまだ遠いし、課題も沢山ある。でもなんとかなる。そんな自信がつけられたような気がしないでもない。


「おっし。ワン左衛門! いってこーい!」


「!!」


 犬って足速いね。初動が速い。マックススピードまであっという間だもんな。全力で走ってるのに平然としてるしね。


「よーしよしよし。はいちょうだい。いい子いい子。それいってこーい!」


「!!」


 これからどうするかな〜。夏休みの宿題は終わらせて。開拓村で活動する? 東へ更に進んでみる?


「尻尾ふりふりかわいいなぁ。どっかの蠍蜘蛛の尻尾とは大違いだ。あんな凶悪な尻尾になっちゃダメだからな」


「――ハッハッハッハッ――クゥンクゥン!」


「尻尾くるりんくるりん。ふっかふか! なんだ? もう1回か? お〜し! いってこーい!」


「!!」


 1度ディフィカルトに帰るのも悪くないな。装備を一新できるくらいのお金は十分すぎるほど貯まってっからな。いやでもな……うーむ。ディフィカルトに戻るんだったら、奮迅街ホープだったか。あそこに行ってみるのも悪くない。街だから装備品も売ってるだろうし……悩む。


「お〜おかえり。水飲むか? あっ、容器忘れた。手でいいか」


 喉乾いてたか。夏だもんな。日陰で休んで帰るか。


「……クゥン」


「む、なんだ。まだ走り足りないのか? それじゃあと1回な! いってこーい」


「!!」


 何事も一生懸命って感じ。微笑ましいね。とにかく。制限がないMMOだから、何をしてもいい、失敗してもいい。気楽にできるのは素晴らしいのだ。NPCが目の前で死なないことを優先して行動しよう。東部再生。その手助けも悪くない。難易度が高い? 望むところさ。簡単すぎるのは飽きる。


「よし、休憩しよ。熱中症になったら大変だぞ〜?」


「……わん」


「水補充しとくか」


 日陰は涼しいね。ふむ、何度も走ったから体熱いな。冷めるまで休むか。


 昔VRMMOでユーザーが難しいから簡単にしろって騒いで、運営がそれに応えて簡単にしたらユーザーに喜ばれたんだよな。一時的に人気が出たというか。俺はつまんなかったけど。


 それで簡単なゲームが流行り出して、簡単なゲームでもユーザーが騒いで、更に簡単になってって連鎖が続いて。とある開発が極端なゲーム作ったな。


 最初から全てのスキルと魔法と装備が整ってるって謳ったゲーム。クソつまらんかった。ステータスも全てカンスト。モンスターのステータスも無駄に高くて億超えて兆あったな。マップ端っこだとなんだっけ……極……恒河沙……え〜と……阿僧祇……那由他……不可思議……ラスボスに位置づけされてるやつが無量大数だった。


 無駄に覚えてるな。いやまぁ全部カス当たりでも1発即死なんだけどね。こっちは受けてもノーダメ。クソつまらんかった。


 一応MMOだからPKや対人があって、それは面白かったな。大味で。攻撃が全て即死判定だから当たったら死ぬ。街から出られなくなるから、攻撃したら解除される無敵時間が3分あった。


 街の近くで隠れてるやつは三流。PKKが初心者守るために常に張り付いてて、その三流を片っ端から狩り尽くしてたね。


 タチ悪いのはラスボス付近で息潜めてるやつ。熟練者多くてラスボスよりラスボスしてた。ラストダンジョン手前からそいつら相手にするの。PKとPKKの主戦場で、そいつらの合間を通り抜けないといけないんだけど、流れ弾掠っただけで死ぬからPKもPKKも迷惑がられてた。


 PK側の方が常に優勢。単純に人が多いから。だから混沌としてたね。そこだけは面白かったけどあとはクソだった。


 その辺りからかな。簡単にしろって声が少なくなったのは。装備集める楽しみも、レベルを上げる楽しみも、スキルを取る楽しみも、新しい魔法を使うのも、どのステータスをあげるのか考えるのも、モンスターと戦うのも、全部あるから楽しい。


 簡単なゲームが無くなって、頭使うゲーム増えだして、その中でフリユピが出てきた。移動に時間かかるし、モンスターもこだわりあったりするし、スキルも特技も魔法もわからんことだらけ、ステータスもどう変わってるのか把握し辛い。でも楽しい。何度も高難易度チャレンジしてクリアするのは達成感があるしね。


 ギリギリの中でやりくりしながら進められるフリユピは今の俺にとって毎日の楽しみだ。まぁ失敗した時の損失は計り知れないんだけどな。


 ふむ――もう大丈夫だな。息も整ったみたいだし帰るか。


「ワン左衛門。水飲むか?」


「――――」


「も少し飲むか? いらないな。じゃ帰ろう」


「わん!」


 うーん暑い。帰ったらアイス食べよ。のんびり宿題やって……あぁ、米研いどいてってテーブルに書き置きしてあったな。あとは……母さんにスマホで聞けばいっか。

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