表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
47/58

全てを出し切った果てに

もう――もう――ダメ死ぬ……おや? 攻撃止まった。2人がなんかしたのか。ふぃ〜。一息つけられるぜ。ポーションぐびー。


ヒール中心で攻撃できなかった分、ある程度回避慣れしてきた。油断すると死ぬから調子には乗らんぞ!


どうやらヘイトが桜月夜さんに向いたっぽい。回転突風で2人が吹き飛ばされたあと、執拗に狙ってるからな。攻撃するのは俺の番よ。


チャージ10秒! 俺のターン! 魔法攻撃光の矢! 発動!


「お腹がお留守ですぞ?」


はいドーン! くぅ! 気持ちいいですな! 今まで逃げ回ってたぶんを全部君に届けてあげるよ!


「オラァ!」


おや、気持ちよさそうですねマスポンさん。俺が逃げ回ってる間に風通し良くなっちゃってまぁ……甲羅よりこの穴から狙った方が良さそうだ。


「ふぅ――こんなもんでいいだろ。俺も攻撃に回るとすっか」


「お疲れ様でーす。それモーニングスターって奴?」


「おぅ、こっちの方が攻撃力高いんだわ」


「期待してるよ」


「任せな。ツバサさんも頼むぜ」


トゲ刺さって緑の血出てる……うーむ気持ち悪い。おし、10秒チャージ。どうだろな。ドーン!


「どうよ?」


怯まないな。さっき怯んだのは攻撃途中だったからか? いや今も桜月夜さん狙ってるから攻撃途中だよな。なら顔に当たったからか。腹や生身に直接攻撃より顔の方がダメージ高いのかな。これは光の矢より、光の剣で継続的に攻撃した方が良さそうだ。


「甲羅がないなら貫通は無くていいか」


形成、集積6秒、維持。これでよし。ポーションの消費が多くなる分、光の大剣の方がダメージ高くなるのか? この辺よくわかってないんだよな。


「ま、理想のためだ。大目に見てくれよ。2人とも。ごめんな」


長剣の心得に合わせて1、2、1、2。それにしても桜月夜さん凄いよな。俺の全力より威力高い攻撃持ってんだから。俺と比べたら失礼か。俺がヘイト稼げればいいんだけど……火力ないから無理か。タンク募集してます。タンクの方おりませんかー? 人手不足ですかそうですか。


「―――――!!」


雄叫び上げるのはあれだ、一定のダメージ与えたってこと教えてくれてるんだ。攻撃パターン変わるのか?


「これは……仲間呼ぶつもりか」


ランダム斬撃入りまーす!


左! 上! 上! 右! 突き! 突き! 下! 左右クロス! 左右クロス返し!


「ふぅ……オス程度呼ばれても怖くないんだ。さっさと懐に入りますかね」


火力は高いから油断は禁物だけど、油断しなければ問題ないのさ。


「おいおいマジかよ」


「うわぁ」


2人ともどうしたのかな――あっ、メスは呼んじゃダメだよぉ。大穴からメス。小穴からオス。やんなるね。


「3匹は無理。てかあれ俺が起こしちゃったやつかな……」


違うって言って欲しい。待て、あの構えは……。


「別々の場所から3匹同時に糸飛ばしはやめて!」


「うおおおお!?」


「ひゃあああ!?」


マズい! 2人とも捕まった!? マザーの攻撃避けながら助け出せるか?


「間に合え――うひゃ!?――間に合え!」


桜月夜さんセーフ! 近くにいるオスも巻き込む攻撃だ。ある程度巻き込んだら振り上げるはず。そうなる前に助けないと届かなくなる。光の矢じゃ100回狙っても絶対当たらない自信あるぞ!


「間に合えええ!!」


「――助かった。サンキューツバサさん」


「よかっ――」


「2人とも避けて!!」


「「えっ」」


マザーさんあなたの娘さんがいるんですよ!! それだけじゃないんです。息子さんも沢山いるんですよ!! どうして前脚を構えているんですか!?


「うわあああ!!??」


「うおおおお!!??」


容赦ねえな!! メス貫いてんじゃん! オスズタズタじゃん! メスまだ生きてるんだ。ふーん生命力高いなぁ。


「マスポンさんや……やな予感がしますよ」


「ツバサさんや……同感ですぞ」


前脚が突き刺さったままのメスが必死に暴れてる。あれっ、これなーんか見たことあるなぁ……マザーさん、その子あなたの子供ですよね?


「ひぃ!」


桜月夜さんの悲鳴入りまーす。同じスコーピオンスパイダーなのに、頂点にマザー、中層にメス、最下層にオスの生態ピラミッドが出来上がってるんですな。マザーの近くにある卵って自分の子供兼食料……いや食料兼食料か?


「これはあれだな。桜月夜さんには悪いけど……」


「利用しない手はねぇな」


マスポンさんも同じ考えらしい。頷き合うことで確信をしました。ならばやることは1つ。


メスの近くでうろちょろ作戦! 突き刺し攻撃こいこい!


「きた!」


「おっしゃ!」


メスの体にぶっすー。わちゃわちゃ。


「ひいぃ!」


悲鳴。ぱくぱくもぐもぐ。おし! 残り1匹!


「ねぇねぇちょっと待って! それやめよ?」


「手っ取り早く困難を避けるためだ」


「そう。見ないことが最善の策。桜月夜さん、ごめんね」


「敵から目を背けたらやられちゃうから! それに――つい見ちゃうんだってば!」


「それは諦めろとしか言えねぇな」


「致し方ない故ごめん」


「そんなぁ……」


あと1匹の辛抱よ。さぁこーい! メスちゃん、君の突き刺しはいらないよ。さぁこーい! メスの近くだと薙ぎ払いとかしないのかな。3連続突き刺しだ。俺達よりも大きい餌優先か?


メスの体にぶっすっすー。わちゃわちゃ。


「ひぃ!」


悲鳴にぱくぱくもぐもぐ。メス全滅!


「「よーし!」」


ハイタッチ! イエイ!


「…………」


「……ごめんなって」


「……許して」


許して欲しい。全ての人を救うことは俺にはできないんだ。犠牲の犠牲を許容はしない。でも許して欲しい。


「……いいけど」


「ありがとぉ!」


「ありがとぉなぁ!」


「「「っ!」」」


マザーは空気を読んで? ヘイトは誰に向いてる? 俺かぁ……逃げて! 超逃げて!!


心得補正を乗せた連続斬りは相応のダメージ与えたって考えていいんだよな? ヘイトキャンセルの可能性もまぁある――。


「げぇ!?」


なんだ!? 強敵のお出ましか!?


「甲羅回復してやがる!」


「こっちも治ってる。食べると回復するみたい」


嘘でしょ。甲羅だけ回復か? それとも3匹食べると全回復か? 巣穴中のメスがいなくならない限り討伐不可とかか?


「無理ゲーか?――っと危ない」


心が折れかけるんだけども、睡魔も襲ってきてるんだけども。


「全回復ではなさそうだぞ! 血流れてら」


「甲羅割ったら教えて」


「もうちょいだ」


ホッと一安心。ヘイトは俺に向いてる。俺が最初にやられるのだけは避けたいな。


「そういや、まだ糸乱射来てないな」


マザーの糸切れるのかどうかも試してない。おっ切れる。ふむ。


「―――――!」


「流石の一撃。おかえり」


「ただいま」


「ある程度慣れてきたが、これ以上は甲羅割れねえ。短剣の耐久全部尽きちまった」


「ならマスポンさん、このダガー使って」


「いいのか?」


「MP尽きた時の護身用だけど、マザー相手に護身もクソもないから」


「助かる」


「2人とも来るよ!」


ランダム斬撃か。3回目。慣れてきたから余裕を持って避けられますとも!


上! 右! あれなんか一瞬――揺れたような――尾が地面に――まさか! やばい気付いてない!


「マスポンさん! 下からくる!」


「えっ? うおお!?」


足と尾を同時に動かすのはメスもやってたな。器用なやつ。攻撃が多彩になってくボスって面倒だ。注意が散漫になる。でもマスポンさんも桜月夜さんもしっかり対応してる。


「あぶっ! 人のこと気にしてる余裕ないな」


尾を引き抜いたな。ならこっちの――まだ何かする気か。起き上がった――足に力入れて……あっこれもメスで見たやつ。


「跳ぶぞ! 離れろ!」


マスポンさんもそう思ったか。桜月夜さんもすぐに距離をとった。巻き込まれる心配はなさそうだ。


部屋の中央に跳んだってことは、のり弁正義よりも先に進んだってことだ。ここから先は完全に初見。


尾を卵に突き刺した。投げた。割れた。プチスコーピオンスパイダーが出てきた。それ中身生きてるんだ!?


「100か? 200か? 群がってくるんじゃない!」


手の平に乗るくらいのサイズから2メートル近くまで大きくなるのね。メスなら5メートル。マザーなら10メートル。巨大になりすぎだろう。


小さくても毒持ちだよな。当たったらどうせ消し飛ぶ程度の防御力しかないんだ。状態異常ばら撒いてくる方が厄介かもしれない。あ、なんか踏ん張ってる。人並みに大きい蜘蛛しか見てなかったからちょっと可愛いかも。


「おっと。HAHAHA、生まれたてで糸飛ばしできるのか。えらいぞ〜……動けないんだが?」


おいおいおいおい、産まれたてでもモンスターってか。やばい、このままじゃ糸まみれになって完全に動けなくなる。


マザー。前脚2本左右に広げて何するつもりだい? その状態で回転できるとでも?


「次から次へと厄介な!」


捕まった人で糸切れない人は退場。糸切る手段持っててほんとよかった。


ブオンって野太い音。マザーさんそろそろデレてくれませんかね。おお! ようやくか。


「さぁ俺に当ててこい!」


きたきたきたきた! 避ける? はっはっは! 自分から当たりに行くに決まってるじゃないか! マザーの糸も切れるってさっき調べたからな。のり弁正義の時はゆっくり顔に近づけてたけど、メスと同じように叩きつけようとするかもしれない。


「どっちでもいい。どんとこい!」


「ツバサさん!」


「いやあれは、捕まったってか。自分から当たりに行ったな。マザーの糸も切れるみたいだから、ツバサさんにとっちゃチャンスなんだろう」


「あ、なるほど」


「俺達も攻撃チャンスだ。動こうぜ」


MP消費は激しくなるけど、攻撃チャンス少ないから気にする必要なし。それに狙われてる時に反撃してる余裕ないからね。MP余りっぱなしよ。


顔に近づけるなら光の矢。振り回すなら光の大剣――振り回しきた!


「突然振り回された時とは違う。今度は俺からお願いしたんだから楽しまないとな! ヒャッホウーー!!」


「……楽しそう。いいなぁ」


「次があったら頼もうな」


ヤベ! 振り上げられる前に壁に叩きつけられる!


「うおおおお! このスリルたまらん!!」


壁スレスレを走る感じ。バランス崩したら引きずられて死ぬこと間違い無し!


「うっほほーい! いいアトラクションだったぞマザー! 料金は背中に置いとくからよろしくな!」


締めは叩きつけによる落下速度を乗せたものと、たまたま糸を切った時に回転してしまった遠心力を加えた落下回転斬りだ。正直目が回る。


「これが料金となりまーす!!」


「―――――!!」


「へっ! 釣りはいらねぇよ!」


ズンって沈んだ。メスと同じだな。貫通付与してるけど、甲羅がある分ダメージは減ってそう。まぁ背中でちまちま攻撃するより、また糸乱射来るまで回避に専念した方が効率良さそう。


「叫ぶ度になんかするんだろ? いつでも来い!」


「ねぇねぇねぇねぇ! ツバサさんがやってたやつ私もやりたい!」


「いやいや! ラ、ラ、ランダム攻撃くるから! 後で後で!」


「そ、そうだね!」


桜月夜さん余裕あるなぁ。ランダム斬撃来るぞ! 中央からどうやって攻撃してくるか――避けきってやるさ!


右! 左、尾! 薙ぎ払い向き変更!


「頭上気をつけて!」


「岩落ちてくるのか!!」


突き2連! 上、左! 尾刺した!


「上下左右から来る! キツくない!?」


「キツい!」


落石、右、尾! 左、右、尾、落石! 薙ぎ払い向き変更! 落石、薙ぎ払い向き変更! 尾刺して、上、右!


把握しきれない。そろそろ終わってくれ!


落石、突き、尾、左! 尾抜いた! 左右クロス! 左右クロス返し!


「おわ――」


「――ツバサさんまだ! 回転来る!」


「――あっぶ!!」


桜月夜さんに教えられなきゃ、気抜いたまま死んでた。


「ありがと――桜月夜さん!」


「どういたしまして」


「無事だな。ツバサさん、俺も糸攻撃の時付いてくから、その前にやられてくれるなよ!」


「プレッシャーかけないで!」


「早速来るよ! ツバサさんお願いね!」


桜月夜さん目を輝かせないで! 1人でやるのとは訳が違うから!


「失敗するかもしれないからさ――」


「命は預けた」


「失敗しても恨まないから!」


糸乱射来る! 嬉々として飛びつくのはやめるんだ!! 止める前にくっつかれた!! くぅ……。


「ええいままよ!」


VRなのに、緊張で冷や汗かいてる気がする! 大縄跳び嫌なのになぁ。3人食われて終わりなんて嫌だぁ。あぁ……振り回しルート……失敗したら叩きつけられてペシャンコだぁ。


「こりゃ迫力あるな!」


「ひゃーー!! イエーーイ!!」


2人して他人事のように楽しみやがるじゃないか! ズルいから作戦会議といこう。


「背中甲羅だけどどうするの?」


「失敗しなきゃ勢いつけて叩き割れるだろ。任せとけって」


「ひゃーー! 大丈夫ーー! なんとかするーー! きゃーー!」


ノッテマスネ、サクラツキヨサン。絶叫系アトラクション好きなんだ。死んでも生き返るって保証があるからかな。


「振り上げきた! 準備は!?」


「「いつでも!!」」


なら後は俺だけか。形成、集積10秒、維持、付与貫通。ここまでは準備できてる。後は……集約。もはやお馴染みだ。


想像し創造する。特性を想像する流れは、初めて魔法を作った頃より早くなってる。イメージ力はフリユピの武器になる。俺にとって魔法を作る速さはそのまま戦闘能力に直結する。これからも積極的に魔法使ってかないとな。


「今!」


糸から切り離した。後は流れだ!


「まずは私から――」


落下してようが、早かろうが、関係ないんだろうな。綺麗に構える桜月夜さんはその場に立って構えてるように見える。


「――天火の型――剛雷」


「―――――!」


初めての落下攻撃だよな? 振り下ろすタイミングも完璧だ――うおーすげー、役に立たないとか言ってたのに背中の甲羅ほとんど割れてるじゃんか。役に立たないとは一体……。


「やるねぇ! 次は俺だ! えーと――甲羅割り!」


「―――――!」


技名みたいなの言わないとダメなの? 威力凄いけどさ! 背中の甲羅完全に割れて大穴できてるけどさ!


「えーとえーと――大剣の――ら、落下攻撃!!」


「―――――!!」


フッ! 深々と突き刺してやったわ! 3連続落下攻撃でビクンビクンしてら。威力ありすぎて地面に倒れてる。


「決まった……」


「大剣の落下攻撃は……決まってねぇなぁ」


「こう――こう、あったと思うなぁ」


「……無茶振り良くない」


俺もさ、カッコよく技名言いたかったさ。でもさそんなホイホイ出ないって。無理だって。


「「「!!」」」


起き上がるか? 足震えてるけど、起き上がるのか? 崩れ落ちた。尾も力無く地面に垂れた。これはもしや、倒したってことなのではなかろうか。


「やったな」


「うん」


「いやまだそれはフラグ――にはならなかった」


フラグになるかと思ったけど大丈夫だ。黒い粒子になって消えたからね。長かった。うん、朝6時過ぎてる。まぁいいか、今は喜ぼう。


「「「マザースコーピオンスパイダー討伐成功!!」」」


ボス扱いのモンスターって一回倒すと情報開示されるみたい。討伐系も同じ。マザースコーピオンスパイダー……強敵だった。1人じゃ絶対倒せなかったろうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ