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Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
41/58

第5採掘場突入

「第2部隊到着! 第1部隊後方へ! 第2部隊、第3部隊、冒険者各位。鉱夫救出最優先、後は作戦通り実行せよとの伝令!」


「「了解!!」」


こちら第5採掘場入口前。先程第1部隊が後方へ下がっていきました。第2部隊、第3部隊の状況ですが戦闘不能と判断された重傷者は14名、第1部隊の重傷者を含めると18名という状態です!


え〜冒険者ですか? はい、冒険者は――え〜と……はい。今情報が入ってきました! 重傷者は3名……天上族はですか? 少々お時間をください……はい。戦闘離脱者2名ですね。恐らく戦場からの離脱者は戻ってこないと思われます! 確実ではありませんが……はい――はい。そのようです。


鉱夫救出作戦で引き続き参戦可能な方達は、衛兵82名、冒険者17名、天上族5名となります。予断が許される状況ではありませんが、鉱夫の救出は成功するという見込みが高いとのことです! しかしながら、その後の開拓村フューチャーでの活動は厳しいのではないかという――はい。専門家からの意見が出ています。


え〜とですね。第5採掘場に取り残された鉱夫は、取材に応じてくれた鉱夫の話によると6名だそうです――はい――はい。残された時間……はですね――え〜退魔アイテムの残り時間――14時間ほど残っているようです――えぇえぇ――退魔アイテムの効果が確実なのか? あ〜……確かに救出作戦中は不明瞭な点が多く不安を募らせるばかりでしたが、第5採掘場入口前から様子を窺っているとですね。えぇ。はい、スコーピオンスパイダーが不自然に何かを囲っている様子が見られます。専門家によるとスコーピオンスパイダーは獲物を見つけ次第、すぐに捕食する習性があると――はい、そうですね。不自然に囲っているのは獲物が目の前にいる可能性が高いということです。


救出作戦に臨む衛兵、冒険者各位は間違いなく鉱夫は生きていると確信を持っています。はい。我々も現場から固唾を呑んで見守りたいと――ああ!? 今! 今!! 突入の命令が!! 衛兵の皆さんが一斉に突入して――3、2、1、CM入りまーす。


遊んでる場合じゃねえ!!


あ。遊んでる場合じゃないけど、第4採掘場を制圧した後プレイヤーの1人が。


「俺が一人で全員助けてやるぜー!! ヒャッホー!!」


って深夜のノリで抜け駆けして第5採掘場に突入してったんだ。そしたら入口付近にいたスコーピオンスパイダーに一斉に糸飛ばされて、捕まってすぐに落下攻撃されて逝ったよ。


入口付近の死角に落下攻撃待機してる奴が複数いるらしい。あのプレイヤーがいなきゃ被害デカかったろうね。糸飛ばされて落下攻撃だからな、衛兵もひとたまりも無いって対策練ってた。ありがとう発光ヨーグルト君。はっこうって薄幸とも書けるんだってさ。君の幸せは確かに薄く光ってたよ。


「死角からの攻撃に注意しろ! 前列は前方を! 後列は頭上からの攻撃を対処せよ!!」


第2部隊と第3部隊の前列に配置された衛兵が雄叫びを上げながら壁となるスコーピオンスパイダーを強引に押し返して空白を作り出す。後列に配置された衛兵が頭上に盾を構えて衝撃に備えた。


無数の尾の雨が降り注ぐ。


押し潰されないように歯を食いしばって身体中の血管が浮き出るほど力を込めて踏ん張り抜いた。スコーピオンスパイダーの攻撃が止むと後方にいた冒険者が一斉に飛び出していく。


先陣を切るのはプレイヤー達天上族だ。


身長と同じくらいの大鎚を振り抜いて甲羅を粉砕。吹き飛ばして複数のスコーピオンスパイダーを巻き込むプレイヤー、マスポン。


ピョンと軽く飛んだ先、尾を地面に突き刺し腹を見せるスコーピオンスパイダーに鞘に収めていた長剣を抜いた。滞空状態でありながらまるで地面に静止しているかのように安定した姿勢から繰り出された一閃にスコーピオンスパイダーは絶命する。ツバサには到底真似できないような剣技を見せるプレイヤー、桜月夜。


「ジャスティーース! のりべーーん!!」


よくわからないことを叫びながらスコーピオンスパイダーの懐に飛び込み、力を溜めて昇竜拳を繰り出したプレイヤー、のり弁正義。


人の2倍、3倍も太い棍棒をスコーピオンスパイダーの真正面から堂々と振り下ろして顔を叩き潰すプレイヤー、混ぜると安全。


自己主張の激しいプレイヤー達の中に無言でいても存在感を示す。鉱夫の服を着てスコーピオンスパイダーの真横から光の矢を射抜くプレイヤー、ツバサ。


5人がバラバラに、それぞれの方角へと進む。一言も話したことのないソロプレイヤー達の奇妙な連携がそこにある。誰の邪魔もしない、だから邪魔をするな。その意思が磁石の同極同士の反発のように互いに干渉しない位置取りを取らせている。ほんの少しのきっかけさえあれば仲良くなれる可能性のある、そんなプレイヤー達の無言の意思疎通だ。


スコーピオンスパイダーの群れと衛兵部隊の間を駆け抜ける。5人同時に。目指す目標は逃げ遅れた鉱夫の元。後続の衛兵と冒険者が数を減らす間に好き勝手に暴れながら鉱夫救出を試みる。


「今助けに行くからな! 仲間達よー!!」


へっへっへ。今の俺はポーションケチる必要ないからな。全力全開よ。今まで逃げ回ったり、作戦成功を優先させてたからな。衛兵や冒険者もそう簡単に崩れないってことも第4採掘場で見たしね。この第5採掘場は自分勝手にやらせてもらうぜい! 道具袋に詰め込んだポーション使い切るまでは暴れ回ってやる。雌伏の時は終わったのだ! うはははは!!


「おいしょー!!」


人並みにデカいから見えないけど、みんな飛ばしてるねぇ。ドゴォ! とか、ズギャ! とか効果音が響いてくる。大鎚持ってた人と棍棒持ってる人の攻撃かな。


「お前らの攻撃は散々受けたからな。滅多なことが起きない限り当たらないぞ」


蜘蛛の巣だらけにしたことが仇になったな。糸の壁のせいでちょこまか動く俺を捉えられてない。


「フッ! 俺も少しは強くなってるってことよな!」


蜘蛛の巣の隙間利用して攻撃してたら自分で蜘蛛の巣破壊し出したぞ。それはよろしくないですぞ!


「蜘蛛の巣の上に待機してる奴ら引きずり下ろすのはやめろ!」


10や20を超えるスコーピオンスパイダーが一斉に落ちてくる。


「ちょちょちょちょちょーー!!?? あぶあぶあぶ!! 退避ー! 退避ー!!」


ひええええ!? 潰され――るところだった。


「お前ら……まとめて射抜いてくださいって言ってるようなもんじゃないか。お望み通りにしてやるよ」


飛び上がれる段差――段差――あった! この魔法もだいぶ慣れてきたからな。ブレる理由さえわかれば完璧なんだけど……今はいい。撃ちゃ当たる。


蜘蛛の巣の間を潜り抜けるアトラクション。高く飛び上がってスコーピオンスパイダーの群れに――ドカン!!


「範囲攻撃ってこういう時気持ちいいよな。ふぅ! スッキリ!」


俺の全力の一矢で相応のダメージとダウン取れるって実証済みだからな。散らかすけど救出優先なんでね。


「さいなら!」


さぁさぁ! 密集地にやってきましたよっと。よく耐えたな鉱夫。今助けるぞ!


「こええ――早く来てくれええ」


「もう少し待ってろよ!!」


「そ、その声は新入り!?」


「あぁそうだ! 新入りだ!」


「助かった……」


「まだそこから引っ張り出さないけどな」


まずは数を減らす。ポーションがぶ飲みオッケー! 光の矢を使うのはやめた方がいいな。鉱夫に当たったら困る。光の剣2本で押し切ろう。


形成、集積……抑えて戦う必要ない。最大チャージ! んでもって維持。普段はやらないけど今回は付与もオマケしちゃう!


おーおーMP消費が激しいねえ。ポーションがぶ飲みでもこれか。3分持ってくれよな!


「貫通のお味はいかがかな?」


魔法剣だからかな。甲羅無視して肉体に直接攻撃してる感じ。スパスパいけるぜ!


「ヤベッ!」


魔法剣特有か? 貫通ですり抜けるせいでガードできね。すり抜ける瞬間に反応してなきゃ大ダメージ受けるところだった。覚えておかないとな。


「やっぱデカブツ相手で光の矢を使わない時は両手持ちにした方がいいな」


集約使えば特性5つになる。消費MPが跳ね上がる条件を満たす――けど、今の俺は後先考えずに突き進むだけよ!


「集約追加! 両手持ちでズバズバ行くぜ!!」


うひゃー! ガンガン減ってく!! ポーション追加でお腹タプタプよ。


「制限時間1分ないな! やるしかねえ!」


側面から斬る。そのまま流れて腹の下へ。腹切り裂いて1匹撃破。黒い粒子の合間から鉱夫に向いてる奴を後ろから斬り捨てる。ツバサを狙う2匹の糸飛ばしと尾の突きの間を避け、1匹の顔に深々と光の大剣を突き刺した。貫通効果を持つ光の大剣をそのまま下から振り上げ撃破。迫るもう1匹も同じやり方で撃破。


「全部倒してる暇ないな。おい! 走り抜ける用意してくれ!」


「わ、わかった!」


「俺とお前の間にモンスターがいなくなったら走れ!」


「新入り、俺はお前を信じるぜ!」


「任せろ!」


ツバサは翔ける。全力を出せる時間は残り僅か。それを理解しているツバサの意識は時間の経過と共に一点だけを見つめるほど集中力が高まる。


スコーピオンスパイダー達の足と足の間をジグザグにすり抜けながら光の大剣で斬り刻む。粒子となって消える直前のスコーピオンスパイダーの体を飛び台代わりに高く飛び上がった。邪魔となる蜘蛛の巣を斬りながら障害となるスコーピオンスパイダーの位置を把握。着地地点にいるスコーピオンスパイダーの背中に光の大剣を突き刺し、すぐさま斬り上げた。


崩れ落ちる背中から飛び降りて駆け抜ける。次々とモンスターを屠るツバサの背中には無数の黒い粒子と拾われないドロップ品のみ残されていた。


「今だ走れ!!」


ツバサと鉱夫の間にあったモンスターは消えた。ツバサが声をかけると同時に鉱夫は走り出す。切り開いた道を埋め尽くさんとスコーピオンスパイダーが一斉に群がり始めていた。


鉱夫に攻撃が当たらないように身を挺して壁となる。HPを減らしながら、鉱夫の足が止まらないように最善を尽くす。


「そこを退け!」


MPが底をつく直前。ツバサと鉱夫を囲おうとする2匹のスコーピオンスパイダーに突っ込んだ。長剣の心得の補正に従い、1匹の顔を貫く。しかしその後心得の補正は引き抜き、斬ることを推奨した。けれどツバサは滑り込んでスコーピオンスパイダーの腹の下へと潜り込む。


MPが持たないと判断したツバサは2匹同時斬りを試みた。真横を向いてスコーピオンスパイダーの腹を斬り裂きながら、足の合間から飛び出してもう1匹へ斬り込んだ。袈裟斬りからもう1歩踏み込む。最後は心得の補正とシンクロした動き。体の重心移動からの斬り上げ。2匹はほぼ同時に黒い粒子となって消える中、MPを使い切ったツバサの手に持つ光の大剣も白い粒子となって消えていった。

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