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Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
37/58

鉱夫の友情

素晴らしい汗をかこう! 汗をかくって素晴らしい! 汗をかくって素晴らしい!!


「おい新入りぃ! 鍛え方がなってねぇんじゃねぇのか!?」


「ヘイッ! 親分!」


STR無振りなんですわ。すいやせんね!


「親分! コイツぁ力がねぇ分器用なんですわ! 細けぇ作業の方が向いてますよ!」


「なに? そうなのか新入りぃ!」


「ヘイッ! どちらかと言えば穴掘り進めるより、原石掘り出す方が得意っす!」


「よぉしわかった! ならお前は細けえ作業やれ!!」


「ヘイッ親分!」


話が通じる職場っていいよね。どっかのギルドとは大違いよ!


「先輩、わざわざすいませんね」


「フッ! 俺は効率重視しただけよ。それに……親分は監督として全体を見ることはできるが、一人一人の細けえ所まではなかなか目が届かねえ。だからよ、代わりに言ったまでよ」


「いやぁ、尊敬するっす! 先輩じゃなきゃ親分に進言してくれなかったでしょうからね!」


「親分が俺の立場だったら同じように進言してらぁ! 俺は親分の背中見て仕事してっからわかるんだよ!」


「くぅ! いいですねえ! 俺もわかる気がしますよ! なんでかってえと俺は親分の背中見て仕事してる先輩を見て仕事してるんすからね!」


「よせやい! 嬉しくなっちまうだろうが! もういいから仕事に戻んな!」


「ヘイッ!」


同じ鉱夫ユニフォーム着て仕事する一体感って言うんですかね。あぁ俺、今仲間達と一緒に生きてるんだなぁって実感できるんです。これがたまらなくて……ついつい通っちゃうんですよね。


おっ、いい色艶した原石掘り出せた。ボーナス出るといいな。


俺は一体何をやってるんだ?


って言うのもね。あれなんですよ。護衛依頼。しっかりやってやりましたとも。報酬は80万ピア、悪くない額ではあった。でもね、モンスターの襲撃が3回あってきつかった。


落ちて、日を跨いでやるべきことやって、インしたら襲撃されてたってのが1回あってね。それがもうキツかった。


他の地方は知らないけど東部地方って基本10体くらいの集団で襲ってくるんだけど、時間かけすぎると追加でわらわらモンスターが襲ってくるの。何度も。


聞いた話だと、東部地方全体の人口が少ないせいで勢力的にモンスターの方が優位とか、モンスターの数自体が多いとか、魔の瘴気が原因の可能性あるとかだってさ。


人が作った道近辺ならそんなにないらしいけど、実験場は大きく外れてたから仕方ないっちゃ仕方ない。


で、インしたら襲撃されてたって話に戻ると、もう20体くらいわらわらいたんだ。もう必死だよね。ようやくモンスター減ってきたと思ったら、もう一回遊べるよって追加でモンスター増えた。心折れちゃったね。


護衛依頼終わらせた後、無意識に足が動いてましたわ。今はあったかい仲間達に囲まれて充実してます!


「ん?」


突然、つるはしで掘り進める音とは違う、岩崩れが起きたような大きな音が鳴り響く。あまりの大きさに夢中になって作業していたツバサが手を止めるほどだ。


近くにいた鉱夫達も顔を見合わせ一言二言言葉を交わす。野次馬根性のある鉱夫が数人様子を見に行った。新入りとして働くツバサ以外の鉱夫も滅多にない出来事にざわめいていた。


「何かあったの?」


「いいや、こんなことは初めてだ。魔鉱石は目の前にあるんだ。岩を切り崩す必要はねえんだからな」


「……確かに」


岩崩れの音が起きてしばらく、今度はカチカチという細かい音が遠くから聞こえてくる。鉱夫達にも聞こえているようだ。


「なんだこの音は?」


「わからねえ」


「金属のような音? ……だいぶ細かく鳴り響いてるが……」


「大変だあ!!」


一人の鉱夫が音のした方から慌てた様子で声を荒げながら姿を現した。非常事態が起きたと誰もが肌で感じるほどに。慌てている鉱夫が音のした方へ指を指して慌てた口調で大声を出した


「岩ぁあ!! モンスタぁあ!! やばい!! 怪我ぁあ!!」


「……なんだって?」


「もっとちゃんと伝えろ!」


「落ち着けよ」


「深呼吸しろ。いいか、深呼吸」


「はーーーすううう! はーーーすううう!」


「ダメだこりゃ」


慌てた鉱夫は深呼吸で自分を落ち着かせた後、もう一度はっきりと状況を伝える。


「岩の奥から! モンスターが出てきやがった! 怪我人も出てる! 手を貸してくれ!」


「「「!!」」」


現状を正しく把握した鉱夫達は一斉に動き出す。ツバサも鉱夫の一員として後を追った。


「さっさと避難しやがれ! 動ける奴はすぐに村へ報告しろ!」


親分が大声を張り上げていた。怪我をした鉱夫は担架に乗せられ運ばれている。足から血が流れ動けない鉱夫や気を失ってる鉱夫が主だ。


「先輩!」


「新……入りか……ヘッ! ざまあねえ……ドジっちまった」


胸が真っ赤に染まってるんだけど、ホントに大丈夫なのか?


「おい新入り! 今は話してる場合じゃねえ! 今のお前の仕事は真っ先に安全な場所まで避難することだ! さっさと行け!!」


「いや俺は!」


「若え奴が生き残らねえでどうするつもりだ!? 死に急ぐんじゃねえ! 新入り、お前が慕ってるコイツは俺が責任持ってちゃんと村へ返してやる。だからさっさと避難しやがれ!」


親分惚れる! あんたかっこいいな! 先輩が慕うわけだぜ!!


「いいや親分! 新入りだとしても俺だってここの一員だ! できることをやるためにここに来た! 先輩がどうしてこんな大怪我になったのか教えてくだせえ!」


「ふぅ……お前って奴は……これも若さか。コイツは運が悪かった。作業中にいきなり岩が崩れてな。砂煙が巻き上がっちまって、様子がわからねえって時にモンスターの奇襲を受けた。俺がなんとかここまで引っ張って来たがこの有様よ」


「この……服が無けりゃ……即死だった」


「もう喋るな! 服に感謝しながら寝てろ!」


鉱夫ユニフォームへの信頼高いっすね。まぁ半端な装備より防御力高いもんな。俺も何度も助けられてる。


とりあえずほっとくと先輩逝っちゃいそうだから回復魔法かけてやらんと。


「先輩、今楽にしてやりますからね! ヒール!」


「お、お前……回復魔法使えたのか!?」


「それなりにですがね!」


「先に言え馬鹿野郎! 重傷の奴だけでいい、手当てしてやれ!」


「ヘイッ!」


親分と熱い会話してる間に気を失ってた先輩の治療は終わった。痛みから解放されて険しかった顔が安らかになったな。ゆっくり休んでくだせえ、先輩!


親分に頼まれた重傷者を回復してやって、親分の元に戻ったら親分がモンスターと戦ってた。親分結構強いじゃん!


「貴様らにこの採掘場を奪われてたまるかよお! 東部の希望を俺らの手で掘り進むって決めたんだからなぁ!」


親分! なんてえ覚悟だ! みんなついて行くわけよな!


「うおおおお!! っ!? こんな時に……昔の古傷が……ぐうぅ……もう少しでいいんだ! 動いてくれ俺の膝ぁ!!」


昔冒険者だった的なやつですか? わざわざ俺の出番用意してもらっちゃってすいませんね!


「おやぶううん!!」


「し、新入り!? お前に任せた仕事はどうした!?」


「当然終わらせましたよ。後は……俺に任せてくだせえ」


こいつは蜘蛛か? 蠍か? まだ何してくるかわからないから危険だけど、そうも言ってられなくなった。放置すると親分が死ぬ。


「扱えるのは回復魔法だけじゃねえってか。そりゃあ魔法の剣か?」


「これでも一応冒険者もやってるんでさ」


「……そうか」


あのー会話してる余裕無いんですけどー。最近見るモンスターみんな人と同じくらいの大きさしてるから力あんのよ。STR無振りだからそろそろ押し切られっ!?


「うおお!?」


前足防ぐので精一杯なんですけども! 尾で刺そうとするのはやめてください!


「気をつけろ! そいつはスコーピオンスパイダー! 足は簡単に人を貫き、尾から糸を出し、直接刺して毒を流す! 危険な捕食者だ!」


詳しい情報は助かる。名前が表示された。出てきたのは1匹だけじゃないからな。早めに倒さないと後続が来て詰む。でも……。


「俺のこたぁいい! 足が思うように動かねぇだけだ! 身を守るくれえできる。全力で戦え!」


俺の考え読まれてるねえ。んじゃ、遠慮なく。


「やられねぇでくださいよ!!」


「こっちのセリフよ新入りぃ!!」


鍔迫り合いなんて勝ち目ないからな。逸らせるか? なんとか行けそう。


「オラァ!」


ダメージはありそうだな。顔には効く。ヘイトは……俺に向いたな。


足、シーフマンティスの腕みたいに固い。次!


甲殻、切り傷は入ったけどそれだけだな。打撃じゃないとダメ! 次!


尾、切り落とせるか? ダメだ、甲殻と同じで今の俺には無理。


ひっくり返して腹を攻撃できれば……ってところだけど、やっぱり今の俺には無理。色々試す時間無い。


弓は当てられる気がしない。でもそれは遠距離からの話だ。光の剣が通じないなら光の矢を使うしかないんでね。


戦ってみてわかったけど、正面は強いけど横からの攻撃は苦手っぽい。虫型の戦車みたいな感じ。


「形成、集積……付与、集約。お前にいいもんくれてやる! ゼロ距離でな!!」


足の隙間抜けて横から一発! 付与は貫通だ。どんなに硬くても関係ない。


スケルトンやらシーフマンティスやら小回りのきくモンスターには当てにくいけど、重量級タイプのスコーピオンスパイダーなら余裕だ。


まだ倒せてないけど、側面から一定以上のダメージを受けるとひっくり返るみたいだ。


「隙だらけだぞ!」


ジャンプしてから、光の剣で突き刺し! 足が6本バラバラに動いているのが気持ち悪い。まぁ、倒せたし良しとしよう。


「ふぅ……」


「やるじゃねえか!」


「親分がコイツの攻撃方法を教えてくれたからですぜ!」


男の友情的なものが芽生えた気がした。友に歳なんて関係ないのさ!


「おやぶーーん!!」


「どうした?」


「俺たちのために無理しないでください! 一緒に村へ戻りましょう!」


俺もその方がいいと思う。


「馬鹿言うんじゃねえ! まだ逃げ遅れた奴がいるんだ!」


「村の衛兵と冒険者を頼りましょう! 俺達じゃどうすることもできないっすよ! ここもじきにあのモンスターに占領されちまう!」


「くっ! だが俺は……」


ここは俺が一肌脱いでやろうじゃないか。熱い親分に俺も当てられちまったよ。ヘッ!


「親分、俺に任せてくれませんかね?」


「新入り……お前」


「全員を助けるなんて保証はできませんが、村に逃げ込むまでの時間を稼ぐことはできます。親分一人で背負う必要はないっすよ」


「それだと新入りが犠牲になっちまうだろうが!」


「ヘッ! こう見えても俺は天上族なんでね。やられても、生き返る体なんでさあ!」


「!! 道理で……見たことねえ戦い方しやがるわけだ」


「さっきの戦いを見ても……信用できませんかね?」


めっちゃ迷ってますね。リアルだったら名脇役で有名になりそう。たぶん、いや。間違いなく俺はファンになると思います。


「新入り……不甲斐ねえ俺の代わりに……頼む!!」


「親分の頼み――聞き届けましたぜ!!」


「親分、肩を貸します」


「あぁ。済まねえな」


さぁ! 緊急防衛クエストの始まりだな! 気合入れていこう。

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