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Freedom Utopia  作者: ごっこ
本編
17/58

配達クエスト達成

「聖都と比べると人は少ないな。ま、当然か」


聖都にはプレイヤーも腐るほどいたしな。通る人通る人だいたいNPC。プレイヤーは滅多に見ない。と言っても比べてる基準がサザンカの人口密度だしな。メイン層からは間違いなく抜け出せた。


他プレイヤーの装備はある程度個性が出始めてるな。上半身重装備の初期装備の長ズボンとか。パンツ一丁の大剣持ちとか。拾った装備だけ使ってますみたいな、靴だけゴツゴツしてる初期装備の人もいるな。無難に装備を整えていたり、都市に馴染めてないような装備だったり、色々だ。


完全な初期装備の人もそれなりだな。初期装備の人とは目が合うんだよ。声かけ合うことないけど、妙な親近感があります。お前も考えることは一緒か? フッ! みたいな。


あ、でも今の俺装備してないだけでダガー持ってるんだ。お前達とはちょっと違うんだぜ? フッ! 一足先に行ってるからよ? 追いついてこいよな! フッ!


「あ、ちょっといい? 市長に会いたいんだけど、建物どこかわからないんだ。教えてほしい」


「あーそれなら――」


「あ、ちょっといい? 市長邸がこの辺にあるらしいんだけど……」


「えぇ? こんなところになんてないわよう。いーい?」


「あ、ちょっといい? 市長邸が見つからないんだけど――」


「お前さんさっき教えただろう? 方向音痴か?」


「連れて行って!!」


心の叫びが通じてくれた。ありがとうおっちゃん。聖都は神殿と東西南北の入り口を繋ぐ大通り一本歩けばいいから迷わなかった。交易街も広々してたし冒険者ギルドも人目につきやすい場所にあったから迷うことなかった。


でもここは住みやすさは二の次で、外敵から守ることを第一にしてるみたいでごちゃごちゃしてるんだよな。慣れるまで同じところぐるぐる回りそう。


市長邸の中入って、執事に声かけて手紙見せたら、市長の部屋まで案内された。


「ようこそ、私はディルという。よろしく」


「俺はツバサ。よろしく」


握手ありがとう。手がゴツゴツしてるね。


「集落の者から緊急の手紙を預かっていると聞いた。見せてもらってもいいかな?」


「どうぞ」


これでクエストクリアか? いやまだか。読み終わった後の反応次第か。


「そうか……襲撃に遭い被害を受けたのか。ツバサくん。この手紙を持ってきたということは、その襲撃の中にいたはず。手紙だけではわからない部分もある。教えてほしい」


「あーいや、俺寝てて気づかなかったんだ」


「なんと」


あ、これ適当に答えた方が良かったやつか? 正直に答えすぎたわ。


「襲撃中も気づかないとは……いや待てよ? 聖女様が天上族を呼び寄せたと報が届いたな。この都市にも天上族を見るようになった。私たちフリージア大陸に住む人々と違う生活をしていると聞く。なんでも3日以上寝ずに活動できるとか、一度眠ると何をされても起きないとか。君もそうなのか?」


「あー……うん。俺も天上族だ。人それぞれだけど2日寝なくても大丈夫だったりするな」


「そうだったかなら納得だ。命を落とさなかったのも運が良かったわけだ」


「そういうことになるかな。ああそうだ、襲撃の後のことなら話せる。集落の建物は破壊されたものもあったけど、宿屋と馬小屋は無事だ。ただ馬小屋はボロボロ、次攻め込まれたらダメになると思う。それと、宿屋の値段を上げると言ってたよ」


「……ふぅ……」


空気が重い! ディルさんの険しい顔が物事を重く捉えてるって教えてくれてるね。


「そうか……わかった。ツバサくん、君のおかげで状況をより深く把握できた。礼を言う、ありがとう」


「いや――別に大したことは」


「もっと話をしたいが、やらなければならない仕事が多くてね。済まないが……」


「俺もそろそろ出ようと思ってたから」


「ツバサくん、これを」


お、これ、依頼達成の証か?


「これは?」


「手紙を私の元まで届けてくれた。その証だよ。これを冒険者ギルドに持っていけば、依頼達成とみなされ報酬を得られる」


「ありがとう!」


「礼を言うのはこちらの方だ。また何かあればよろしく頼む。ではまた」


失敗したかと思ったけどなんとかなったな! これで後は報告だけだ……冒険者ギルドってどこだ?


ふぃ〜、同じ場所3回回っちまったぜ。でもま、辿り着ければ全て良しよ。


「報酬たったの5000ピア!? あんなに必死に走ったのにこれだけ!?」


「命懸けだってのはわかる。だがな、仕方がないことだ。この報酬はお前が手紙を受け取った相手から支払われてるのではなく、都市から出されている」


「それとこれと何が関係あるんだよ?」


「大ありだ。こことサザンカは大体一週間かかる。休息を含めればそれ以上かかる。その間一時も心を落ち着かせることができないのはその経路を利用する者達にとって不利益となる。行商人の負担となれば、冒険者の負担となれば物流が滞る可能性が高くなる。それは都市にも東部地方全体の不利益に繋がる」


「ぐっ」


「物流が滞ればどうなる? 今より更に物価が上がる。冒険者にとっても他人事じゃなくなる。この東部地方で緊急性の高い依頼だろうが、そうでなかろうが東部地方に再生都市の維持に関連する情報が届けられれば、都市から報酬が出る。それは東部再生を目指す意思を示していることになる。もし仮に、冒険者が報酬の上乗せを主張して通れば、その皺寄せは他のところへいく。都市の維持、発展、東部再生の資金が少なくなれば、今回報を出した集落の再生にも影響が出る。そうなったらいずれ維持すらできなくなる。そうなればさっき言ったことが繰り返される。行き着くとこまで行けば、東部崩壊だ。今までの全てが無駄になる」


「ぐうっ……」


「それにお前は冒険者なんだ。手紙届けた分の報酬が少ないなんて騒ぐくらいなら。もっと稼げるように強くなってどでかいことしてくれ。東部地方が再生されれば生活も楽になるんだからな」


「くぬぅ!?」


「それでも納得できないなら。他の地方へ移動しな。東部に拘る必要なんてこれっぽっちもないだろ?」


「ガハッ!?」


何も、何も言い返せない! 何もしないと本当に集落無くなるのか? 現実と同じで見るって思ってるけどどこかゲームだから大丈夫って気持ちあるんだよな。うーむ。


東部地方に行くと決めたのは人が少ない、人の手が及んでいない場所を自分で行きたいからだ。今から他の地方へなんて考えられん。今は歯を食いしばって耐えるしかない。さっさと金持ちになって装備整えて各地を巡るんだ!!

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