漫才『夏の楽しみ』
二人「こんにちはー、お願いします」
ツッコミ「夏ですね」
ボケ「ランちゃん派です」
ツッコミ「ランちゃん? キャンディーズの?」
ボケ「なーつですねえ、恋をしてみませんかあ」
ツッコミ「いや、それ春! 季節過ぎてるから!」
ボケ「僕はオールシーズン恋できます!」
ツッコミ「いらん宣言するな」
ボケ「疑うなら今から相席居酒屋行きます?」
ツッコミ「こんなご時世に行かねえよ」
ボケ「(変な節で)ソーシャルディスターンスッ」
ツッコミ「それ」
ボケ「相席居酒屋?」
ツッコミ「ソーシャルディスタンスのほう」
ボケ「相方様は一緒にいるより突き放すほうがお好み、と」
ツッコミ「妙な言い方するな! 実はさ、毎年この時期にやる怪談のイベントが中止になってヘコんでるんだわ」
ボケ「たしかに最近そういうの多くて寂しいですよね」
ツッコミ「そうそう、だから今年は大人しくネットで怪談動画を漁ろうかなあ、って」
ボケ「甘い!」
ツッコミ「はあ?!」
ボケ「それでもあなたクリエイターですか!」
ツッコミ「なんか横文字使われると恥ずかしい! 芸人って言って!」
ボケ「コメディアン?」
ツッコミ「芸人って言って!!」
ボケ「そんなことより」
ツッコミ「そんなことよりってお前な」
ボケ「やりましょう怪談」
ツッコミ「え?」
ボケ「(マイク下げながら床に座る)はい座って座って。怪談師がいつまでも芸人みたいに立ってないでください」
ツッコミ「いや芸人だわ。(座る)それで?」
ボケ「じゃあまず僕からいきますよ……(ラップ調で)一枚、二枚、何十枚? 一枚足らない、ほんとに」
ツッコミ「待って待って! なんでラップ?」
ボケ「怪談ラップバトルを開催します」
ツッコミ「だからなんでラップ?!」
ボケ「(ツッコミを無視して、ラップ調で)一枚、二枚、何十枚? 一枚足らない、ほんとに足らない? それってあなたの気のせい、Don’t say! 万! 丈! 皿屋敷!」
ツッコミ「ああなるほど、ラップ調で怪談を語る。新鮮ですね。ちなみにこれは万丈皿屋敷と言って昔お皿を割ってしまったお菊さんが」
ボケ「(裏声)ちょっとお菊さん! あなたの番なんだから早くしなさいよお!」
ツッコミ「(自分を指さしながら)お菊さん?!」
ボケ「(裏声)ほらほら早く! 早くディスってくださらなぁい?」
ツッコミ「ディスり待ちとかMか! つーかなんなんださっきからその裏声!」
ボケ「(裏声)お岩よ! やれ皿が足りてるか、やれ皿割っちゃってドジっ子なんだねやら! お菊と混同されるせいであたしは迷惑してるのよ!」
ツッコミ「お岩さんの言葉を勝手に代弁するな! 呪われっぞ!」
ボケ「お岩さんは素敵な良妻賢母です、そんなことしません」
ツッコミ「高飛車な喋り方しといてなに言ってんだ」
ボケ「(裏声)ほらお菊さん! 早くラップで返してくださいな!」
ツッコミ「だから裏声やめろ! やるから! ラップ……(ラップ調で)YO! YO! YO! お岩! おい今! 復讐前にお前の復習、有名幽霊、死後の仕事に一家は騒然、夫の最期はラットのラーイス!」
ボケ「(マイク直しながら立つ)怖い話の後って甘い物が食べたくなりません?」
ツッコミ「(立つ)おい! 俺の渾身のラップ無視すんな!」
ボケ「なんかウンチク多くて嫌でした」
ツッコミ「シンプルに拒否すんな」
ボケ「そろそろ締めますか?」
ツッコミ「締めれるか!」
ボケ「やっぱりシメはパフェですかねえ」
ツッコミ「飲み会のシメの話かっ、ならラーメンだろ」
ボケ「いやパフェです。そのためだったら僕は山遊び、海遊び、プール遊び、なんでも頑張れます」
ツッコミ「夏大満喫だな!」
ボケ「あーでも溺れそう」
ツッコミ「カナヅチか」
ボケ「いや、人に。あと夏の日差しと熱帯夜、家に沸く虫……うっ気持ち悪い」
ツッコミ「夏に向いてねえな」
ボケ「やっぱり僕も、今年の夏は大人しくネットで怪談動画見ることにします」
ツッコミ「クリエイター魂はどうした!」
ボケ「みんなでエアコンの効いた部屋に帰りましょう」
ツッコミ「一人で帰れ!」
二人「ありがとうございましたー!」
おわり
ここまで読んでくれてありがとうございます!
良かったら、ブックマークや評価してもらえると嬉しいです。