ぼっけぇ
岡山県人で「ぼっけぇ」を使ったことがない人はモグリでしょう。
それほど有名な単語です。
最近はマンガで「もんげー!」と叫ぶ人?がいるようですね。
岡山県の宣伝CMでも、「もんげー!」と叫ぶ俳優さんのポスターがあったりします。
でもね、「ぼっけぇ」の最上級のような扱いを受ける「もんげー」は、あんまり叫ぶようには使わないのです。
こういう程度、驚きの大きさなどを表す単語ですぐに思いつくのは、三つです。
「でぇれぇ」「ぼっけぇ」「もんげぇ」
ここで注意して頂きたいのは、最後の「もんげぇ」です。
このように「もんげー」と語尾を伸ばすことは滅多にありません。「もんげぇな、そりゃあ」(すごいね、それは)というように、しみじみと使うことの方が多いのです。
最大級に驚いた時は、岡山県人なら「うわっ、ぼぉーれー!」とか「こりゃあ、でぇれーすげーことじゃが」というような表現をします。
「もんげー」単体より「もんげんかぁ」という呆れた驚きを表すような言い方をします。
さて「ぼっけぇ」でしたね。
先に挙げたように、ぼっけぇは「ぼぉーれー」という変化もしながら、県民の中で親しまれている言葉です。
《例文》
⒈ こりゃあ、ぼっけぇうめぇけぇ、食べてみられぇ。
訳 これは、とても美味しいので、食べてみてごらん。(程度を表す)
⒉ ぼっけぇことになったなぁ。
訳 とんでもないことになったね。(心配の大きさを表す)
⒊ ぼっけかったぁ。
訳 すごかったのよ。(感動を表す)
⒋ ぼぉーれぇ可愛い子じゃった。
訳 ものすごく可愛い子だったよ。(変化して喜びの大きさを表す)
ここまで読んだあなたは、「ぼっけぇ」のスペシャリストになったことでしょう。
さてこの夏、三女のネムルー夫婦は、赤ちゃんのリノを連れて笠岡の花火を観に行きました。
※ リノは生後9か月で、ほとんど寝たきりの障がい者です。
「どぉじゃった? リノは花火を観れたんかな?」(どうだった? 観ることができたの?)
ばあばは、車で行けるところまで行ってみると聞いていたので、花火を観ることができたのか心配だったのです。リノは持続吸引器をつけていますから、人ごみの中には入れません。遠くの方から花火を楽しむことができたのかしら?と思っていました。
※ 注 詳しい状況や人間関係は拙作「星の子ども」に書いてあります。
「うん、ぼっこう混んどらんかったから、スムーズに行けた」(あまり混んでいなかった)
そう、ネムルーが教えてくれました。
「花火の音はぼっけかろぅ。少しは反応があったん?」(とても大きいでしょう)
リノは先日の聴覚検査で『耳は聞こえていない』という最終判定を受けています。けれどまだ諦めていない家族は、尺玉花火の空気を震わせる音に期待していたのでした。
「うん、音はぼっけかったけど、やっぱり聞こえとらんわ~」(ひどく大きかった)
やっぱりそうか。
結果は予想通りだったので、がっかりすることはありませんでしたが、こんなやりとりがあったのです。
普段の会話の中では「ぼっけ」という言葉の語尾が変化していますね。
「ぼっこう~ない」で否定文が作れます。
「ぼっけ」+「か○○」というように、文を構成することができます。
ここまで、よう読んでくれたなぁ。
あんたらぁは、ぼっけぇ優しい人らぁじゃ。(とても very)
「ぼっけぇ」の理解が進みましたでしょうか? (笑)