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81話 西部辺境開拓域

 城塞都市ウルカ・オンルゥから西へ西へ。


 ウルカ・オンルゥを立って数日後、モンスターがウルカ・オンルゥを包囲。俺は今から戻っても間に合わないと、何とかルンフォードを説得。


 更に西へ向かう途中、城塞都市ウルカ・オンルゥ陥落の報せが届いた。


 早過ぎる……いくらなんでも落ちるのが早過ぎる。倒せる戦力を用意したったって、防衛を目的として建てられた建造物だぞ?内部に内通者が居たとでも言うのか、それとも特殊な攻城兵器でもあったのか。


 ただでさえ人より強い化け物が、万全の体制で仕掛けてくるなんて、人類に勝ち目なんか有るのか?


 森王、氷王等の王に至る魔物。キュプロクス。ワイバーン。そして……魔王。人間はアルネアお嬢様は本当に無事なのだろうか?


 ひとつ確かなことは、城塞都市陥落により、人間の支配領域が大きく後退したということ。

 城塞都市が築かれるという事は、何らかの防御の要であったはずだ。そこが落ちたのだから、次の防衛ラインまで一気に押し込まれるだろう。


 モンスターの支配領域の拡張速度より早くアルネアお嬢様を見つけないと、俺がいない上に、従魔契約が切れてないと思われる状態である以上、アルネアお嬢様は身を守る手立てが無いはず。俺はお嬢様の死体と対面する気は全くないので、早く光を集めないと。


 ……光を集めるのとアルネアお嬢様に、なんの関係があるんだ?


 何かがおかしい。行動が制限・指定されてるような、誘導されてる気持ち悪さがある。でも、光を集めないといけない……はず?


 …………はっ!


 えっと、なんだっけ。そういえば、ワイバーンがいるのに、ドラゴンを見ないな?なんでだろうか。伝承というか、御伽噺にドラゴンが出てくるんだからいてもいいはずだけど、もっと火口とかダンジョン最奥とかにいるんかな?


 西へ向かっていると、ある場所を境に景色が一変する。西はモンスターがまだそんなに強くないというのが、肌でわかる。


 爽やかな風、緑の大地、空は青く高くそして澄んでいる。


 北に近い方では、魔王復活の弊害で環境変化が著しいのか、全てが灰色がかっていた感じがした。もちろん色が灰色という事ではなく、空気が悪いというか、まあそんな感じだった。


 人間の残滓は、この平和な情景を喜んでいるのだが、モンスターとしての俺は、どっと疲れた感じがする。俺に肉体的な疲労は無いので、魔王の影響下から遠く離れた事が原因だろう。体が重い。


 魔王の存在自体が広範囲のモンスターに無限バフとか、勝てる気一切せんわ。これがゲームなら、魔王強すぎで弱体化アプデ入るまで抗議し続けるレベル。


 北はモンスターには、快適な空間だったわけだ。


 ん?情景って、思ったのか。懐かしい感じがするって事か?普通に思うなら平和な風景だよな。なら、俺はこの眺めを知っていることになる。


 ハッハッハ。いやいや、そんなまさか。いくら俺がクソ雑魚モンスターで、相手が森王だとしても、そんな吹っ飛ばされないだろ。そんなに吹っ飛ばされたら確実に死んでるよ。じゃあ、吹っ飛ばされた後に何ヶ月も移動したってことか?


 植物系モンスターになった影響か、ボーッとしてる時間が多いなとは感じていたけど、これは不味い。俺の体感では、アルネアお嬢様と離れ離れになってからまだ数ヶ月といった感覚だ。しかし、実際には一年。もしくは、一年以上経ってる可能性が高い……。いや、もっと経ってるかも知れない。


 寿命が曖昧な植物系モンスター弊害だな。頭ではこんなに焦ってるのに、心は凪いでいる。急ごうという気配が感じられない。

 人間の寿命を知っている俺には、この感覚が如何に不味いかよく分かる。植物系モンスター感覚に慣れきってしまえば、会うのはアルネアお嬢様のひ孫ぐらいになる可能性が高い。これは不味い。


「……ウィウィ?」


 おっと、知らないうちに話しかけられてたみたいだ。


 なぁに?っと。


「あれはなんでしょう?初めて見る……モンスター?それともただの動物かしら?」


 あー、あれはずっとはるか昔に俺が倒した凶悪鹿さんだ。Bランクのモンスターになった今では、なんの脅威も感じない。5グループぐらいに一斉にこられても普通に倒せるだろう。なんなら一本の触手で何体串刺しにできるか実験する程度の存在でしか無い。


 ヨワイ


 っと。


「えっと、そういうことではないんですけど……」


 あ、うん。そうだよね。殺す気マンマンだったわ。弱い奴には強気で行くとか、流石俺クズの鑑だな。どうする倒す?経験値には鳴らないけど、鹿肉美味しいよ?知らんけど。口無いし。


 聞いてみるか。


 オマ エ シカク ウ


「えっ!!??私ですの!?いえ、モンスターは……食べれるんでしょうか?」


 まあ、滅茶苦茶身体に悪そうではある。寧ろこの見た目で毒が無かったら凄くね?って感じである。


「倒しますか?」


 血液吸収を使えば、全く経験値にならないってこともないし、倒しといてもいいけど、どっちでもいいよ。


 マ カセル


「腕試しには丁度よさそうです!」


 こいつらほんと凄いよな。俺が生身の人間なら、事前情報の無いモンスターとか絶対戦わないわ。


 ヒトツ ヒトツ


「一体一ですか?でも、群れですよ」


 ホカ オレ


「分かりました。群れの残りはウィウィが倒すのですね?」


 そうだよ。と二回腕を叩く。文字書くよりこっちのが速いからな。


 俺の経験にはならないけど、ルンフォードにはいい経験だろう。城塞都市での戦闘では、二足歩行のモンスターとの戦闘ばかりだったしな。体が大きい上に、四足歩行のモンスター相手では、立ち回りが全く異なってくるはずだ。


 斧から離れた俺は、昔この鹿を狩ったように木の上に登る。

 あの頃よりも無数の長さと数を誇る触手に、鹿に勝ち目は無い。


 地面に潜ませた触手で、一斉に鹿共を宙に吊り上げる。今回は触手が細く俺の本体も小さく見つけにくいので、事情を知らない人間が見たら、急に鹿が宙に浮いたというビックリ状態だろう。


「まあ!ウィウィって賢んですのね!」


 ルンフォードも驚くんだ……。


 残った一体の鹿の尻を触手で鞭の如く、しかし殺さない程度に慎重に引っぱたいて、ルンフォードにけしかける。


「負けませんわ!」


 さて、どうだろうな?ルンフォードは確かに強い。しかし、経験したのは俺のフォロー有りで、且つ数的優位を保った状態の戦闘。パーティ戦だ。


 まあ、化け物を狩るんだから多対一が基本なんだが、マジでコイツなんで一人旅してるの?


 作戦は「いのちをだいじに」しか持ち合わせてない俺には理解しかねる。


 純粋な一対一は初めてだろうし、あまり戦ったことの無い動物に近いタイプのモンスターだ。相手はルンフォードより格下。それでも慣れるまでは苦戦するだろう。


 他の人やモンスターに邪魔されないように、触手で囲んだフィールドを作る。ただ触手を地面からはやし、丸く囲っただけだが、それでもBランクモンスターの触手。そうそう突破されたりはしないだろう。


 ルンフォードが怒声を上げながら、先手必勝とばかりに、猛スピードで突っ込んでいく。鹿の角と合わせた時の音は硬質で、さながら鉄がぶつかり合っているような音が周囲に響いている。


 相手を格下と侮ったか、それとも普通の動物に近い(近いか?少なくとも俺の知ってる鹿にはあまり近くないが)外見に惑わされたか、ルンフォードは初手で相手の武器である角を切り飛ばそうとしたらしい。


 ルンフォードの斧は良い物らしいが、俺が触った感触は普通に鉄っぽかった。オリハルコンやヒヒイロカネみたいな、ファンタジー金属では無さそうな感じだ。


 数度合わせると双方距離を取り、また突っ込む。まあ、鹿は低ランクのモンスターだし、獣寄りなので、そんなに賢くないから突進でキメたがるのは分かるんだが、ルンフォードはなんで馬鹿正直に正面から受けてるんだろう?


 俺が知る前世のヘラジカの最高速度は確か約時速70キロメートルだ。魔物である事を考えれば、時速100キロぐらい出ると考えてもいい。しかし、この円の中ではそんなに速度はつかないだろう。


 ルンフォードの突進も斧やら鎧やらを着ている割には、恐ろしいスピードだ。流石に追いつけはしないが、避けて横から周り込めないことも無いはずだ。苦戦してる理由が分からんな。


 しばし眺めていると、ルンフォードが苦戦している理由が分かった。四足歩行の生き物は、縦……この場合は横か?に長いので、走り出した地点と到達地点の予測位置がズレてるらしい。

 道理で斧が上手く当たらないはずだ。ちょいちょい踏み込み過ぎたり、浅かったりとマチマチな攻撃は、決定打にならない。二足歩行で人ぐらいの大きさのモンスターとは、攻撃の予測範囲が違うので苦戦しているらしい。


 後は、相手のスピードにも少し戸惑ってるような印象を受けるが、何となくそんな気がするぐらいなので、後でルンフォードに聞いてみよう。

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv17/70


 HP602/602

 MP521/521


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.5》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.3》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.9》《植物成長速度Lv.8》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.2》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.5》《指し示す光》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.8》《打撃耐性Lv.7》《刺突耐性Lv.8》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.7》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.3》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの 斧の精霊(?)


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