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79話 城塞都市中規模戦闘決着

 モンスターの数は、敵指揮官と思われる上位種三体を除いて約七十。それに対しこちらは傭兵四百人。戦況を見る限り、一体のモンスターに対して五、六人で当たるのが普通のようなので、四百人居ても、ギリギリ足りるか足りないかといったところだ。


 大型のモンスターの攻撃は、自然と範囲攻撃になるので、他のパーティを巻き込まないように、戦いながらも皆ジリジリと他の戦闘場所と距離をとって戦っていたのだが……。


「カバー!!!」

「おい!こっちにも2匹来たぞ!」

「下がれ下がれ!」


 モンスター側も指揮官がいるだけあり、交代や負傷者のいるパーティを集中的に狙ってくる。更には、こちらが戦闘の距離と距離を保てないように、左右から展開してジリジリと押し込んでくるように戦っているのだ。


 そのせいで、オークやオーガなどの巨大なモンスターの一振りで多くが巻き添えになっていた。


「ウィウィ。そろそろ出れますか?」


 すぐにもちろんだと、返答する。まあ、腕を二回叩いただけなんだけど。


 あれから更に二回後方に待機して回復した。


 そして時間は夕暮れ。


 魔の時間だ。昼と夜の境目。彼方と此方の境界線を曖昧にする誰彼時。人工的な灯りの少ない世界では、まさに「誰そ彼(誰ですかあなたは)」と言える時間帯だろう。


 逢魔時ともいうらしい。異世界では、文字通り魔に逢うのだから、たまったものではないな。


 世界は既に人の支配する時間では無い。モンスターは夜行性が多いそうだ。ゴブリンなんかでも暗視を持っているらしい。モンスターが蔓延る世界で、夜は人の生存率はグッと下がるだろう。


 魔法の灯りで視界を確保しているが、モンスター側から矢や魔法が放たれれば、ほぼ避けられない。


 これはルンフォードを逃がした方がいいか?正直空が暗くなる前に決着を付けられなかった時点で、都市まで逃げ帰り、モンスターの動きが鈍くなる朝まで籠城するしか無いと思うんだがな。


 前半の奮戦でモンスターの数はかなり減ったが、冒険者の数も大分減った。血に倒れ伏してピクリともしない者、または痙攣を起こしてるものは、もうダメなのだろう。半数は逝ったか?


 今は本来五、六人で一体を抑えるはずが、一体につき二、三人しか貼り付けてない状態だ。

 今の状態で、あの二つ名持ち三体のうち一体でも前にでてきたら、前線は一気に崩壊し、負傷者や回復役のいる後ろまで一気に蹂躙されるだろう。


「負傷者と後衛が撤退するまで、前衛は持ち堪えてくれ!」

「残ってる中衛は、前に加わってくれ!」

「10秒待て!」


 う〜ん……。


 感知範囲は広ければ広い程いいと思ってたが、拾える情報が多過ぎて、処理できるだけの頭がないと混乱するな。こういう時チート持ちなら、思考高速化とかの類のスキルを入手できるんだろうが、俺はただの植物系モンスターなので、もちろんそんな都合のいいことは無い。悲しい。


 天にまします我らが神よ……異世界転生にチートは必須だと、植物系モンスターは思うよ。


 ちょっと早い気もするけど、斧から独立するか。んで、ことある事に斧に戻れば良いだろう。


 ルンフォードの頭をコンコンと叩き、地面の方を向かせる。


「何ですか?」


 オレ デル


 まだ咄嗟に単語が出てこなかったので、言うなればローマ字表記的な感じだ。ま、まあ、伝わるよな?


「斧から出れるんですのね?」


 そうだよーと腕を叩く。


「皆さん!今から触手を持った斧の精霊が出ますが、驚かないで、攻撃しないでください!」

「分かった!従魔に使った魔法をかけさせる!」

「圧されてる!なんでもいいから早くしてくれ!」

「ウィウィ!行きなさい!」


 自由だぁぁぁぁぁ!!!!!


 全身の触手をのたくらせて喜びを表現していると、後ろから訝しげな声が飛んでくる。


「お、おい。本当に精霊なのか!?」

「どう見ても、ありゃモンスターだろ」

「いや、でも嬢ちゃんの声に合わせて出てきたんだから、従魔みたいなもんじゃないのか?」


 俺も斧からみすぼらしい花を少しだけつけた触手の化け物が出てきたら、似たような感想か、もっと酷いことを言う自信あるわ。


 お、光ったな!これで人間側から攻撃されることは無いはずだ。


 久々だなちゃんと戦うのは。


 最近援護ばっかりだったから、鈍ってないといいけど。


 取り敢えず、全方面に一斉に棘と触手を繰り出す。毒も全開だ。


 ただの触手だと思って、甘んじて受けたのが三体。


 危険だと察知したが、触手を切り飛ばしてしまったのが四体。切り飛ばされた猛毒付きの棘があっちこっちに飛散し、流れ弾?流れ棘?を喰らい、のたうち回ってるのが七体。

 切り飛ばした四体の内三体も見えずらい細い棘が刺さり、悶え苦しんでいる。


 猛毒初めて全力で使ったけど、大分えげつないな。


 俺を見るやいなや、モンスター側の指揮官から命令が飛ぶ。何を言ってるかは、敵の動きを見て何となく理解した。毒耐性持ちや、状態異常耐性が強いと思われるモンスターが前に出てきて、俺と敵指揮官の視線を塞ぐ。


 頭を使うモンスターは厄介だな。毒針をこっちの意思で指揮官側に飛ばされると面倒だと思ったんだろう。しっかり、肉盾を用意して来やがった。


 まあ、俺は毒針あっても上手く飛ばせないんだけどね。あれは切り飛ばしたモンスターが悪い。


 モンスター側のネームド出てくるなら今だろう。仮にもBランクの俺とまともに渡り合うなら、Cランクは必須だ。あの三体の誰かが出るしかない。


 一度に複数のモンスターがやられ、モンスター側の士気が下がった。当然だろう。人間と戦争していたと思ったら、如何にもモンスター側の様な見た目の触手が攻撃してきたんだから。

 モンスターは、知能が低いが感情が無いわけじゃない。力に支配されるモンスター達だけあってたじろいだ時、勢いが削がれた時の反応は非常にわかりやすい。


 ネームドの前線登場は、士気の回復にも一役買うだろうし、逆に人間側の士気は落ちるだろう。


 人間側を勢いづかせたくないなら、ここしかないはずなのだ。


 しかし、出てこない。相変わらず、待ちの姿勢のようだ。


 何故だ?不自然すぎる。これは戦争じゃないのか?どちらかと言うと威力偵察のような雰囲気だ。もしかして、待ってるんじゃなくて、こちら側の戦力を視て確かめてるのか?


 じゃあ、こいつらを退けたら、必勝の戦力が投入されるわけか。魔王軍が、人間相手に、力押しじゃなくて、ちまちまと斥候放ってくるとか有りかよ。


 ただでさえ人間より強靭で強大なのに、慎重な行動を取るとか反則だろ。弱者の特権では無いが、強者の矜恃は無いのか?人間如きに策を用いるのか? 魔王は慎重過ぎるだろ……。


「ギシャァァァァァ!!!」


 チッ!雑魚に毒が効かないから鬱陶しい!


「撤退完了だ!前衛中衛は全速力で離脱しろ!」


 俺が殿になれば、そうは抜けないはずだ。モンスターと永遠の時間を睨み合う。


 たった数分。こんなにも緊張する数分は前世では少なくとも一度もなかったな。俺が人間なら、今頃冷や汗ダラダラだったろう。


 人間が都市に逃げ込んだのを確認すると、ネームド三体は先に去り、敵モンスターも指示があったのか引き上げて行った。


 やっぱり、何かを確認しに来たようだな。全速力で離脱してた傭兵達は背中を見せていた。


 魔力を感知で探ると、敵の魔法兵もまだ居たので、背後から一方的に撃てたはずなのに。


 双方撤退。


 なんというか不完全燃焼な終わり方だ。


 そういえば、ローブの奴らはどこ行ったんだ……?


 全体を感知しても写りこまない。


 クッソ。今回も逃げられたか!

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv8/70


 HP570/570

 MP510/510


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.5》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.1》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.9》《植物成長速度Lv.8》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》《指し示す光》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.7》《打撃耐性Lv.7》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.3》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの


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