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8話 水

流石に進まな過ぎて、自分で驚いた。

 水を求め、彷徨い歩く事、数十分。一向に見つかる気配がない。


 アルネアお嬢様の命令で、明るくなってから水を探しに来たのは良いけど、せせらぎとかは、一切聴こえない。俺も単眼なので、視力は良い方だと思うけれど、歩けども歩けども森が深くなるばかりで、解決策が無い。

 俺の水は、地面が湿ってればそれでいいけど、人間はそういうわけいかないしな。


「はぁ……はぁ……流石に疲れたわね。モノリ、一度休憩しましょう」


 お嬢様早くも疲れたか。戦士系の学校とかじゃ無いもんな。モンスターが使役できるだけで、体力とかは全然無さそうだ。

 若しくは、俺が植物系モンスターなので、疲労を殆ど感じず、ペースが速すぎたのかも。


 しかし、どうしたもんかな。お嬢様を座らせるような、休憩できそうな所が見当たらない。


 ん〜。


 ッハ!


 触手を椅子にすれば良いのでは?


 触手の多くを纏め、俺を背もたれに見立てて、椅子っぽい形にする。

 うん。ちょっとだけ、椅子っぽいか……?「いや、触手やんけ」って言われたら、そうなんだけど、森で贅沢いうんじゃありません。地面よりマシって事でひとつ。


 余った触手で、アルネアお嬢様の肩を叩き、手招き?触手招き?をする。「触手招きをする」なんて気持ち悪い文言なんだ。


「モノリ。それは、私にそこに座れということ?」


 聞かれたので、右の手の平を叩き、イエスと答える。


「その……欲を言えば、あまり座りたく無いんだけど……」


 なんでだよ!別に触手だからって、ヌメってたりしないからな!


 早く早くと、自分の椅子っぽくした部分を、余った触手でバシバシ叩く。


「あ、あまり気が乗らないわね」


 埒が明かないので、触手を絡めて無理矢理座らせようとすると、観念したようだ。


「分かった、分かったから!座るわよ。座ればいいんでしょ!?変にウネウネさせないでよね!」


 俺が変態みたいだから止めろよ。


「あら、意外と木のしっかりした椅子みたいで、悪くないし、結構頑丈ね。重くないかしら?」


 この場合は、イエスとノーどっちを選んだら、重く無いって意味になるんだ?間違えたら、シバかれる未来しか見えないんだが。植物系モンスターになってから、言葉難しい気がする。いや、元々国語は得意じゃ無かったかな。


 特に反応しない事に決めた。


 なるべく椅子部分を動かさない様に、他を動かすと、いつもより大分遅いが移動できる事が判明したので、アルネアお嬢様を乗せたまま水探しを続行した。


「座ったまま移動できるなんて、画期的ね。見た目は大分アレだけど、新たな移動手段として、植物系モンスターが確立されないかしら?まあ、無理よね。本来植物系モンスターに知能は殆ど無いもの」


 お嬢様が、俺の椅子でくつろぎだしたので、俺も少し根を張って、水分やら栄養やらを補給する。

 もしかしたら、より地面が湿ってる方に、川が有ったりしないもんですかね。


 考え事をしながらグングン吸っていると、葉っぱから余分な水が出てきたのか、随分と葉っぱの表面が水っぽい。


 どうやって乾かそう。お嬢様に当たったら「冷たい!何すんのよ!もう、最悪!」とか、いわれかねないし、早急に乾かさねば。


 ……いや、待てよ?いつも地面に垂直なこの葉っぱ、地面に平行にして、皿状にして、水溜めたら飲めるんじゃないか?俺自身が植物だから濾過されてるだろうし、意外にいけるかも。


 先ずは、皿状に……おっ、出来たな!更に水をガンガン吸って、皿状にした葉っぱの方に、吸い上げた水を誘導する。


 お、おぉ!溜まった!葉っぱに水が溜まったぞ!発想の勝利だ!


 既に、学校での面影が無いぐらい、だらけてるアルネアお嬢様を、ベシベシどころかヴェシヴェシ叩く。

 人って、気を張る相手がいないと、無限にだらけられるよね。


「何よ!痛いわよ!」


 早速椅子を持ち上げて、皿状の葉っぱまで高さを調節する。


「きゃあ!ちょっと!動かすなら動かすって言いなさいよ!びっくりするでしょ!」


 いや、そんな無茶な。イエスノーの二択すら、この身体、高度なやり取りなんだからな。


「なんで葉っぱ水が溜まってるの?の、飲めるのかしら」


 ゴクリと唾を飲み込む音が聴こえた。そんなに喉乾いてたんだ。鳥系の従魔じゃ無くてすまんね。


「ちょっと、モノリ。害は無いでしょうね?」


 俺には無かったですよお嬢様。


 まあ、モンスターが、見知らぬところから急に出して来た水飲むか?って聞かれたら、余程切羽詰まって無い限りは、俺も嫌だな。なんか怖い。


 アルネアお嬢様が疑いつつも、恐る恐る口に運んでいたので、俺が思っているより、喉が渇いてたみたいだな。


「!美味しいじゃない!いけるわ。これは売れる」


 普段からお金に縁がないのは知ってるけど、売れる売れないは、森を無事に出れてからにしようね。

 この子本当に貴族のお嬢様なの?本当はヴェニスの娘だったりしない?ヴェニスの娘は可笑しいか。ヴェニスは地名だもんな。


 俺上手いこと言った!と思ったけど、商人と掛けただけで、全然上手くない。喋れないから、独り言と一人ネタが、自分の中でどんどん加速してって、結局つまんないジョークに辿り着いたりするんだよな。誰か、喋れるようにしてくんろ。


 でも、意外だったな。俺がシェイクスピアの喜劇を知ってるなんて、意外に文学青年だったのかも!その割りには、頭が優れてる訳じゃ無さそうだから、タイトルだけ知ってたとか、そんなオチだろうけど。


「今のところ害は無さそうだし、美味しい、水はこれでいいとして、次の問題は食べ物ね!できれば、火も欲しいところだけど、モノリが嫌がったりしないかしら」


 火は、多分燃え移らない限り大丈夫。中身に人間の部分があるから、本能的に避けたりしないだろう。

 問題は食い物か。地球と性質が全く違うはずだから、知識が一切頼りにならないな。

 せめて、俺に口があれば、お嬢様が食べる前に、毒味ができるんだけど。


 何か使えるスキルがあれば良いんだけど。そういえば、あれから確認してなかったな。見てみるか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:モノリ 性別:不明

 種族:モノリーフ(リーフィリア)


 Lv.4/10

 HP33/33

 MP16/16


 状態:普通

 能力:《共通言語理解》《調べる》《触手Lv.4》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.1》《擬態Lv.1》《恐怖耐性Lv.2》

 魔法:《土魔法Lv.0》

 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんかめっちゃ増えてる!?


 《植物鑑定》は、多分自分に生えてる薬草を調べた時に、出てきたんだろうな。

 《水汲みLv.1》は、ついさっきだろう。

 《恐怖耐性Lv.2》は、言わずもがな。まあただ、植物系モンスターだから、元々感情の起伏が振り切らない感じなので、微妙に要らないかも。


 《擬態Lv.1》だけは、良く分からん。何処で拾ってきたんだ?それとも、植物系モンスターだから、自然と生えて来たのか?


 取り敢えず、これで食べ物も、なんとかなりそうだ。《植物鑑定》がレベル表記じゃ無いって事は、植物なら、なんでも調べられるって事だと思う。

 食用かどうかさえ分かれば、木の実も草も食えるから、一先ず食料問題は解決だ!


 後は火か。流石にそれは、アルネアお嬢様に自力でなんとかしてもらおう。燃えたくないし。


「喉が潤ったら、お腹が空いたわね。……街はどうなったのかしら?皆は逃げれたの?森を出るのはいつが安全なの?……はぁ。考えても、モノリに愚痴っても仕方ないわね。水は確保出来たけど、一応水場は見つけておきましょうか」


 イエスと右の手の平を叩いておく。

 やっぱりあんな状態からの初めての野宿やらサバイバルは、流石に堪えるか。なんとかしてやりたいけど、森から出る方法すら分からないんだよな。


 問題は、まだまだ山積みだ。

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 名前:モノリ 性別:不明

 種族:モノリーフ(リーフィリア)


 Lv.4/10

 HP33/33

 MP16/16


 状態:普通

 能力:《共通言語理解》《調べる》《触手Lv.4》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.1》《擬態Lv.1》《恐怖耐性Lv.2》

 魔法:《土魔法Lv.0》

 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者


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