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77話 異世界語であそぼ

思ったより全然話が進まない……。

 シン伯爵に(正確には次期伯爵だが)文字を覚えれば単語で会話できるのでは?という名案をもらい、大した礼もせずに全力でその場を走り去ったルンフォードと俺は、現在魔術書を販売しているっぽい店の前にいる。


 いや、子供用の絵本的なこと言ってたじゃん?魔術書は要らんでしょ。多分ルンフォードが思い浮かんだ本を売ってそうな場所が、こういう魔術の店だけだったんだろうな。ルンフォードの家は金持ちなので、本は家にあったかもしれない。


 昔誰かから聞いた気がするんだが、中世だと本一冊で家が買えるぐらいの値段がしたそうだ。まあ、魔術書と言えど本屋が開けるぐらいなのだから、印刷技術か紙。少なくともそのどちらかは、生産方法が多少確立し普及してる可能性が高い。


 魔法が有る異世界では、魔法で紙を創り出してる可能性もあるかもな。ただ、モンスターがいる世界で、わざわざ紙作る魔法覚える奴居る?俺が現地人なら、身を守れない魔法とか一切覚える気起きない。なので、結局魔法で紙を作っていようと、どの道高価な可能性は充分にある。

 それでも、羊皮紙を一から作る程のコストや時間は掛からないはずだ。


 俺が人間に転生し、更に文字を覚えるぐらい良い家に産まれてたなら、異世界の技術革新を調べるのも面白かっただろう。


 なんせ現状では、人間並みの知能が有るとはいえこの様に昔誰かからサラッと聞いたんだか、夏休みの自由研究で調べたんだか覚えてないレベルの頭しか前世は持っていなかったようなので、異世界語の単語習得は困難を極めるだろうからな……。


 残念ながら、語学が堪能だったとは到底思えないし……。


 ルンフォードが、出入り口で迷っていると、客が出てきて扉が開く。


 とんがり帽子の如何にも魔法使でござぁって、成りした奴らが中に何人か見えた。今出てきたのも、この日差しの中長いローブを着込んだ奴で、店の奥のカウンターには、多くの人が魔女と聞いて思い浮かべるであろう老婆がいた。


 おそらく日の元で出会えば、普通にただのお婆さんなんだろうが、服装や店の雰囲気、薄暗さも相まって滅茶苦茶怖い。昼間で人も居るのに、夜の学校や病院なんかぶっちぎるぐらい怖い。用がないなら足を踏み入れたいとは思わない。

 もしくは、こういうところは魔除けも有るだろうから、モンスター的な本能が忌諱してるのかも……。


 如何にも戦士な格好の斧を持った獣人が、魔術書の店の前でウロウロしていたのが不思議だったのか、後ろから声が掛けられる。


 と、思ったらシンだった。


「やあ。急に走り出したから、本を探してるのだろうとは思ったんだけど、まさかこんなところで会うとはね!」


 流石イケメン。女の子が躊躇してるところに颯爽と現れるぅ!そこに痺れも憧れもしないけどな。何?ストーカーなの?


「まあ!貴方様は先程……殿方ですのね?」

「これは自己紹介が遅れてすまない。シン・カーディア・ウェルブレムだ。よろしく」

「ルンフォード・アーリントですわ!」

「ふむ……獣人の貴族はミドルネームが無いのか。人間の感覚だと珍しいな」

「王族だと名前が三つ有りますわね」

「そうか。人間の王族だと四つ有るんだ」

「では、シン様もわたくしと同じ普通の貴族ですのね」

「そうだね。まあ、獣人社会と人間社会の階級がどう違って、どう適用されるのか分からないから、同じということでお願いするよ」

「構いませんわ!」


 異種族交流難し過ぎん?今まで気付かなかったけど、異種族同士で両方に身分が有ると、相手の階級が分からないから、どちらかが無礼に当たってしまう可能性が高い訳か……。


 め、面倒だな……。


「それで、どうして店の前で?」

「いえ、その、魔法というものがあまり……」


 そう言えば、ルンフォードのパパンは「飛び道具ぅ?軟弱極まれりぃ!そんなものは毛無し共の使う軟弱の証ぃ!」みたいなこと言ってたもんな。あれ、そんな言い方だったっけ?まあいいや。


 雰囲気が怖くて入れなかった訳では無いのか。


「う〜ん。ここには、文字を覚えるのにいい本は無いと思うよ」


 魔術書だしな。


「そうですのね。では、何処に有るんですの?」

「良ければ私にエスコートさせていただいてもよろしいですか?」

「まあ、シン様が!」

「ええ、勉強ばかりであまり自信は有りませんがね」

「ふふ。そんな風には見えませんわね!」

「これは手厳しい」


 あはは、うふふって、和やか!いや、いいんだけど。

 やっぱりイケメンはいけ好かない。なんか鼻につく。こう、なんだろうな?何を見せられてるんだ俺は。って、気分になる。


「わたくしも何かお礼をしないといけませんね!後、急に走り出してしまったお詫びも」

「いえ、エスコートさせていただける栄誉だけで過分ですとも」

「あら!口がお上手なのですわね!でも、アーリントを名乗った以上はお礼をさせていただきますわ!」

「そう。では、有難くもらっておこうかな」


 誘う時は紳士に、普段は親しみやすく。俺もこんなコミュ力欠片でいいから欲しかったわ。


 城塞都市なんて物騒なところに本屋なんて有るの?と思ったけど、城が有るんだから、偉い人が居る訳で、あっても何らおかしくないことに今気付いた。実はずっと「いやここには本屋ないだろ」と、思ってたんだけどね。あったは。本屋。


「この都市では普通の本はここぐらいしか扱ってないかな」

「どのぐらいの本がいいのかしら?」

「えっと、ウィウィ。でいいかな?私達の会話は理解しているかい?」


 やー、まー、分かるよ?


 ルンフォードの腕を叩いて応える。


「分かるそうですわ!」

「それは断片的に?それとも会話として聞き取れるのだろうか?断片的になら一回、意味が完全に分かってるなら二回叩いてくれ」


 もちろん二回叩く。なんなんだろう。


「かなり知能の高いタイプみたいだね。少し例えは悪いけど、少しだけ知能の高いモンスターなんかは、断片的に人の言葉を話したり解したりするらしいんだ。けど、全て分かるのはかなり知能が高い証拠だよ。これなら一文字ずつ教えずに、単語を最初から教えた方が早く意思疎通ができるようになるかもね」


 確かに"い"と"か"と"す"を教えられるより、スイカを教えてもらった方が良さげではあるな。前世でも、ABCを覚えたけど、なんでAppleって並びにするとリンゴって意味になるのかサッパリ分からんので、単語を暗記した方が良さそう。


 俺が理解出来る言語は、九割九分日本語だけなので、平仮名だけで意思疎通を図ろうとすると、間違って伝わる可能性が高い。日本語異口同音滅茶苦茶多いからな。今、日本語って言ったけど、他の言語の異口同音知らないだけなんだけども。


 一休さんじゃないが、橋の端を渡るなんてことになりかねない。渡ったのは真ん中か。どうでもいいな。うん。


「じゃあ、なるべく多く単語があるものの方がいいかもね」

「では、探すのを手伝ってくださるかしら?」

「喜んで」


 探すとは言っても、そんなに本の種類は豊富では無いので、この異世界の皆が一度は聞いたことがあるであろう世界神話と、一般的な英雄譚を購入した。やはり、ある程度技術が確立している様で、家が買えるぐらいの値段はしなかったな。それでも、そこそこの値段がしたけどな。多分というか、間違えなくアルネアお嬢様の家に一冊あればマシな方と思える値段だった。


 「シン様ありがとうございますわ!」

 「自分で提案したことだしね」

 「ご一緒にお茶でもいかがかですか?」

 「お言葉に甘えようかな」

 「是非、モンスターテイマーがどのように戦うのか聞きたいですわ!」

 「ええ、そんなことで良ければ。私もルンフォードさんがどのようにここまで戦って来たのか聞いても?」

 「ええ。獣人社会ではよくある事なので、聞いた事があるかも知れませんが」

 「又聞きと、本人から直接聞くのでは、例え聞いた事があっても大分イメージが違うかと」

 「そうですわね!人間の男性の方は、とても紳士的でしたし」

 「それは嬉しいな。獣人の男性はどんな感じなのかな」

 「そうですわね。私もそうですが、力で証明するタイプの方が多いかと。なので、父のように豪快で大雑把な男性が多いですね。シン様のような方は珍しいですわね。いないという事は無いのですけど……」


 紳士的な野獣……ちょっと興味あるな。

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv8/70


 HP570/570

 MP510/510


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.5》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.1》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.9》《植物成長速度Lv.8》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》《指し示す光》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.7》《打撃耐性Lv.7》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.3》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの


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