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74話 城塞都市ウルカ・オンルゥ-目前

 ルンフォードとの初コンタクトから数週間。


 本当は話し掛けられればスムーズだったのが、如何せん声帯も口も無いので、戦闘の時だけ、触手が敵を迎撃するというかたちを取っていた。


 元々お嬢様で、ファンシー気質なルンフォードは、最初から素養はあったのだが、最近は一人で斧に話し掛ける少し可哀想な子になってしまった。


 この点は大変申し訳なく思っている。


 最初コンタクトから数週間で、みるみるうちにルンフォードのランクが上がった。ルンフォードが戦士として旅に出た時点で非常に強かったというのもあるが、実践に慣れてきたのが一番の要因だろう。まあ、一番の原因は別に有るんだが。


 プレゼントの斧として少しだけ強さを見る機会に恵まれた俺は、ルンフォードとその父親の、常人とは一線を駕した戦闘訓練を見ている。予想するからに、ルンフォードの父親は武を持って功績をうちたて、ああいう地位に着いたに違いない。


 ルンフォード親子の戦いを言葉にするなら、疾風剛撃と言ったところだろうか。


 獣人持ち前の身軽さとパワーを十全に活かした、恐ろしい戦闘シーンだった。もちろん双方重量級の武器を持っているのだが、並の戦士の何倍も素早い。

 俺が知ってる強い戦士はグララウスしかいないので、グララウスと比較するが、速さはグララウスをもって互角。パワーと持久力、戦闘技術はグララウスが高過ぎてよく分からなかった。改めてグララウスバケモン過ぎんだろ……勇者かよ……。


 金級のグララウス傭兵団は、グララウスが異常に過剰に抜きん出てるのを除いても、かなり強い。何より恐ろしいのは、長年の経験から来る知識量と対応力だ。人間の街で戦う奴らが集まる場所に通うようになって分かったが、雪山や火山等の危険地帯に行けるパーティは限りなく少ない。しかし、グララウス達の様子を思い返すに、彼等はどの危険地帯にも、少し装備を整えるだけで行けると思われる。いや、本当あの集団おかしいよ。


 まあ、グララウスの話はいいとして……。


 そう。俺の強さが問題なのだ。


 決して自惚れてる訳ではなく、登録したばかりのルンフォードが受ける仕事のモンスターは、かなりランクが低く、俺が手を出すと大戦果になってしまう。


 上級モンスターであるBランクモンスターともなると、最下級・下級程度のモンスターは、何をしても大体一撃で死んでしまう。


 手加減をしても、全ての触手がモンスターを貫通してしまう。トランプタワーの上に、ガラスの置物を置く方が簡単だろうと思えるぐらいには、手加減が難しい。

 何本あるかも分からない触手の一本一本が、文字通り必殺という無双っぷり。ろくに経験値にもならない雑魚相手の無双じゃなければ、もう少し喜べたんだけどなぁ……。


 そんなわけで、ルンフォード持ち前の戦闘センスと、俺の過剰援護により、ルンフォードは、異例の速さで昇格。


 今は城塞都市ウルカ・オンルゥまでの護衛依頼を受けて向かっている最中だ。


 光と光は惹かれ合うのか、奇しくもルンフォードは俺が目指してる光へ順調に近づいている。


 城塞都市というからには、城塞を建造するに足る理由が当然ある訳で、城塞都市に近付くと道は悪くなり、モンスターがグッと強くなった。


 地球みたいに、人間対人間を想定した造りではなく、周りのモンスターは強くなった。物事はどうしてか悪い方向に行くものらしい。


 ウルカ・オンルゥに近付くと緑が減り荒廃してくる。そんな所に攻め入る物好きは居ないだろう。それなのに、防壁を作る必要があった訳だ。対モンスターを想定した人間側の防衛ラインの一種なのだろう。向かうのは屈強な奴らと、商魂たくましい商人ぐらいだ。いい装備の奴は多いが、身なりがいいのは殆ど見かけない。


 アルテミスの話を思い出すに、モンスターの侵攻を食い止めている都市だろうから、西でもかなり北の方にあるはずだ。


 武者修行の旅でも、もう少し安全なところに行って欲しい……って、それじゃ武者修行にならんか。


「さぁ、行きますわよ!よろしくねウィウィ」


 俺の名はウィウィ!斧の精霊だ!よろしくな!いや、モノリなんだけどな。もう、ここまで名前が増えると何でもいいよ……。


 この護衛依頼をルンフォードが受けて良かった一番のことは、無闇に飛び出さなくなった事だな。無駄に敵を引きつければ迷惑がかかるから。一回かけて先輩諸兄らに、しこたま怒られたんだけども。次やったら護衛から外すとまで言われて、大分反省したらしい。


 まあ、護衛を頼んでる側からすれば、わざわざモンスターを引き付けて来るやつなんて解雇一択だけどな。俺でもそうするね。どう考えても解雇しかない。だってそれ護衛(笑)だもの。なんで、わざわざ危険を呼び込んでるんだよ……。って、なるじゃんな。


 一回とはいえ、厳重注意だけで許してくれたこの人達、滅茶苦茶優しいな。良い依頼主と先輩に恵まれたようだ。この辺りの強いモンスターにも、流石に無傷とはいかないが、危なげなく欠けることなく対応しているところを見ると、割と頻繁に城塞都市への護衛依頼を受けるパーティなのかもしれない。


 今現れたモンスターは、モールタイガースコープ。


 護衛の索敵担当がそう叫んでいたので、多分そう。


 モールが商店街じゃないのは分かる。タイガーの爪は爪というよりは斧みたいな形をしている。前脚の爪だけだけど、斧みたいな形状で歩きづらく……あーモールって斧か。後ろ脚がハンマーなのね。


 スコープは分からない。スコープって聞くと、スナイパーライフルのスコープしか思い浮かばないが、どう見てもそんな感じではない。主にFPSっていう種類のゲームのせいだ。マジでスナイパーライフルしか浮かばない。スコープ……スコープ。この世界に英語の辞書が有ればなぁ……。


「盗賊・レンジャーは、煙幕を投げろ!妨害魔法が使える奴は、感知範囲を妨害しろ!」


 あースコープって、範囲とか視野って意味だったっけ。特に視野や感知範囲の広い個体にスコープって付いてるのかも。感知型って事はこのタイガーも隠密系なのか?なんか最近そんなの多くない?


「弓が使える奴は、近づいて来る前に撃ち切るぐらいで、とにかくどんどん射れ!」


 モールタイガースコープが煙幕の中で無茶苦茶に動き、煙幕を脱出すると、視界が確保出来たのかこっちに真っ直ぐ突っ込んできた。


 うえぇ!?全然隠密じゃないんじゃん!誰だよ隠密って言ったのは!


 モールタイガースコープが、全速力で突っ込んでくる。タンクがそいつを受け止めると、俺の予想外の光景が広がった。


 タイガーが立ったのだ。二本足で。


 どうおうおぉおん!?!?どういう事なの!?意味わかんな過ぎて、動揺したわ!


 ハンマーの方の脚で、しっかり地面を捕まえ、両手の斧の部分を振り回すと、周りの奴らがほぼ同時に、数十センチ後ろに動かされた。吹っ飛ばすとまではいかないが、範囲のノックバック攻撃か。地味に面倒だな。


 あれか、スコープに特に意味は無くて、異世界の範囲に近い意味の言葉を上手く置き換えられなくて、純粋に範囲としての意味しかないのか!


 まさか、隠密系じゃなくて、範囲攻撃系だったとか。そんなん分かるか!


 「ウィウィ!やって!」


 まあ、こいつは一撃で殺せ無さそうだし、拘束ぐらいにしておこうかな。何本か脚を貫通させ、貫いたままグルリと脚を絡めとる。


 周りからは、いきなり斧から触手が飛び出して攻撃したように見えただろうな。


 「移動阻害系の魔法が込められた武器か!珍しいな!」

 「はい!ウィウィって、言いますの!」

 「あ、あおう」


 そりゃ驚くよね。地味に噛み合ってないもの。絶対武器の名前というか、愛称を聞いた訳では無いと思うよ。

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv8/70


 HP570/570

 MP510/510


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.5》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.1》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.9》《植物成長速度Lv.8》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》《指し示す光》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.7》《打撃耐性Lv.7》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.3》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの


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