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61話 エルフの里-道半ば

 俺はアルネアお嬢様が生きているという情報を得て舞い上がっていたが、宿に戻りエルフ達の話を聞く限りでは、状況は芳しくないらしい。


 負傷したエルフ達が完治するまで滞在する予定だったが、予定を変更し、早急にエルフの里に向かう事になった。


 あ〜忙しないな。


 アリア達の時も商人と動いてたから、時は金なりって感じで、割とせかせかしてたけど、エルフ御一行はピリピリしとるので空気が不穏だ。


 エルフの子供達も、救出されて少し明るかったのがなりを潜めて、黙々と歩いている。


 俺はどちらかと言うと、深刻な状況を受け止められなくて、騒いで誤魔化すタイプのモンスターだと思うので、この張り詰めた沈黙は耳に痛い。アルテミスにも声掛けづらいしな。


 せめて子供達だけでも、もう少しマシな雰囲気にしたいんだが、モンスターだから近付くと露骨に警戒&怯えられるので、打つ手無しって感じだ。


 東の街から延びる街道が途切れると、目の前に巨大な木が現れた。


 デケェ……いや、近い?う〜ん?


 俺が戸惑っている雰囲気を感じ取ったのか、アルテミスが話しかけてきた。


『アリシャ。あの巨木が我々の町です』

『結構近いんだな?』

『いえ、あなたボーッとしながら移動してましたから、結構な距離移動してますよ?』

『えっ真面目に?』

『はい。話しかけても上の空の時もありましたし』

『あ〜そうなんだ。なんか、ごめんなさい』

『いえ、別に構いませんけど。言えば水は出してくれましたし、最低限仕事をしてくれるなら、何をしてても構いません』

『ホワイト過ぎて泣いた』

『?何ですかそれ』


 ブラック企業とかいう概念があるわけがねぇ。


『いや、優しいなぁ〜なんて』

『貴方は軍規に縛られるエルフでは有りませんからね』

『意外と柔らかい頭を持ってるんだな』

『私、エルフで初めてモンスターを従えた女ですから』

『従え……いやいや、同盟的な感じだったろ?』

『大した差はありません』


 いや、同盟と従属は全く違うだろ。俺なんかそれでシュミレーションゲームでも、痛い目を見たことが有るんだぞ!

 って、アルテミスに力説しても仕方ねーな。


『モンスターが同盟者なんて、説明もできませんし、従魔扱いで良いでしょう?』

『まあな〜俺もモンスターが同盟とか言われても、信じてもらえると思わないし。つか、あの木凄い近くない?』

『凄い遠いですよ。凄い大きいだけです』


 遠近感狂う程デカいの?

 星の王子様に出てくるバオバブの木ぐらい理不尽なデカさだな。


 何メートルよ?キロメートルかな?


 地球にあの木が生えたら、宇宙からの侵略戦争だと思われて、攻撃する国家が出てきてもおかしくないな。



『普通エルフの里って、こう、魔法で隠れてるとか、そういう感じじゃないの?』

『どこの普通ですかそれ?エルフは軍事面で優れていますし、森は自然の迷宮です。おいそれと攻め入って来る愚か者はそうはいません』

『じゃあ、なんでエルフの里が緊急事態なんだよ』

『魔王の軍勢です。魔王の軍勢は、エルフも人間も亜人・獣人も関係無しに、見境無く街を破壊して回っています』

『今から帰って間に合うのか?』

『……ある作戦の遂行です。それが無事に果たせれば、貴方に地図を渡す事もできるかも知れません。正確に言えば、この作戦が成功しなければ、地図どころでは無いのです』


 う〜ん。お偉いさんの救出か?地図は軍事機密みたいな話だったもんな。あれ、でもお偉いさんなら、とっくに誰か避難させてるのでは?


『なぁ、その作戦とやらに参加するのは良いんだけどさ、具体的に教えてくれないか?どう動けばいい?』

『……他言無用と言いたいところですが、良く考えたら貴方喋れませんもんね。良いでしょう教えます。作戦は、神王樹に居らっしゃるハイエルフ様達の救出です』

『神王樹っぽいのは、どう見てもあの遠近感のおかしな木だよな?』

『そうですね』

『何故一度目の時に逃がさなかった?ハイエルフって言うからには、エルフの上位種だろ?じゃあ、滅茶苦茶強いんじゃないか?』

『モンスターと一緒にしないでください。上位種だから強いなんて単純なのは、モンスターだけです』


 言われて見ればそうだな。人間の王様も貴族も、別に本人が強い訳じゃないもんな。こっちの世界のは強そうだけど……。


 目から鱗だ。もう、ボロボロ落ちたね。

 でも、ハイ・ワーウルフとかだと、絶対そっちのが強いと思うじゃん?って言い訳がしたい。しても意味無いけど。


 ってことは、アルネアお嬢様やアリアは貴族だから、モンスター風に言うなら、ハイヒューマンってところか。全然ハイって感じじゃねーな。特にアルネアお嬢様。

 アリアはウルトラヒューマンとか、そんなのでしょ。あのチート持ち。マジ狡い。卑怯なり。


 ハイヒューマンが似合いそうなのは、やっぱりグララウスだろ。如何にも、ハイヒューマンって感じ。バカつえーし。


『エルフ達が散り散りに逃げたって事は、一度目の侵攻があったはずだろ?』

『その時は、神王樹の内側の方が、安全だという結論に至ったのです。ですが、神王樹の加護が急に弱まったようで……原因は分からないのですが……』

『まあ、エルフに分からないなら俺にも分からんけど、取り敢えず持ち堪えてるんだな?』

『ハイエルフは、龍の巫女なのです。護りの力に優れ、神王樹の加護も有ります。いくら加護が弱まったと言っても、そう簡単に防壁が破られたりはしません!』


 精霊の神の巫女とかなら分かるけど、龍の巫女ってなんだ。


『龍?』

『神話を知らないんですか?』


 アルテミスが驚いた顔をする。


『いや、知らんでしょ。生まれがモンスターなんだから』

『そういえばそうでしたね。世界の始まりには二体の龍が居たのです。詳しい文献は残ってませんが、世界にある魔力は、二体の神の力を持つ龍が戦った残滓だと言われています』

『壮大な話っぽいな』

『そう茶化されると、何となく安っぽいですが、エルフの寝物語ですから、信憑性は微妙かと』

『さいで』


 一瞬納得しかけたけど、長い年月を生きるエルフの寝物語なら、人間に伝わるのなんかよりも、余っ程信憑性があるだろう。


 これは、あの神王樹とやらに着くまで、ちょこちょこ聞いておいた方が、この世界を知る鍵になりそうだ。


『なぁ、そのハイエルフ様達とやらは、長期間神王樹から引き離して大丈夫なのか?』

『虚弱体質という訳では無いですし、大丈夫かと……あの、なにかエルフに変なイメージ持ってませんか?』


 大いにあるな。ジャパニーズポップカルチャーによる、大いなる偏見があると言っていい。だって、実際エルフに会うなんて思わないし。


『護りに優れてるらしいけど、戦闘はどうなの?』

『えっとですね。そもそも、ハイエルフ様達は、戦闘を想定していません。だからこそ、エルフによる規律の厳しい軍が、ハイエルフ様達と神王樹を護る為にあるのです』

『森を護るとかじゃなく?』

『フォレストガーディアンの事ですか?それはモンスターでしょう?』


 うん。なんか、イメージと違うな。


『森も護ってますけどね。森は私達に恵をもたらしてくれますから!ただ、森だけを護ってる訳では無いです。私達エルフはフォレストガーディアンに敵対されないんですよ!』


 なにそれ凄い。エルフが森だけを護ってるのもおかしいよな。フォレストガーディアンは、本当に森だけ護ってるんだろうけど。


『エルフの森にも、フォレストガーディアンいるのか?』

『遺跡とかは無いので沢山はいませんが、意外と見たってエルフは多いですね』


 遺跡に多いんだ。


 アルネアお嬢様の元へ戻る。人間側について魔王の配下と戦う可能性もある訳だし、モンスターの情報も仕入れるようにしてった方がいいよな。敵を知り己を知れば百戦危うからずって言うしな。軍師様程の脳みそどころか、大した脳みそじゃないし、どこまで役に立つか分からないけどな。


『アリシャ。手が止まってますよ』

『俺に手は無い』

『屁理屈は結構です。触手を動かして、野営の準備を手伝ってください』

『へいへい』


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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv5/70


 HP554/554

 MP498/498


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.10》《魔力感知Lv.9》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.7》《植物成長速度Lv.7》《植物鑑定》《水汲みLv.9》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.5》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.2》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人


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