56話 南のエルフ
熱感知だけに絞り、周囲を見ると、擬態しているモンスターの殆どが感知できず恐ろしい……。
う〜ん。元々感知できてたものが見えなくなるのは、凄まじい恐怖だな。
アルテミスの指示により、アルテミス・ルナ・セレネが、逆三角形のような形で、俺の周りを固めている。護衛が理由でなければ、エルフの三姉妹に囲まれるのは悪くないな。周囲がモンスターだらけで、命の危機がそこに迫ってて、な〜んも嬉しくないのを除けば最高だ!
ルナとセレネは一応前にいて(勿論すぐに下がれる位置ではあるが)注意を払ってくれている。
熱感知に絞ると、周囲の反応は殆ど無く、いればすぐに見つけられることだろう。
ルナ・セレネも安定しており、アルテミスが警戒を発することも無く、淡々とモンスターを処理していく。流石だな。
今は数人で固まっているので、さほどモンスターは脅威で無いらしく、スムーズだ。スムーズと言っても、討伐だけだが。
木々と草のせいで、少し動き回るだけで、現在の方向が分からくなる。森は人の手が入っておらず、直進するのは非常に困難だ。
しかし、森の守り手たちはどうも違うらしい、どれだけ上下左右・迂回に次ぐ迂回をしても、方角が分かるようだ。時間を決めて散開しても、必ず全員が時間通りに戻って来た。
種族特性やエルフの神による祝福かは知らんが、絶対にこいつらとゲリラ戦はしたくないな。というか、潜伏系のモンスターである、俺の十八番を取らないで欲しい。
そういえば、なんで"おはこ"?落語だっけ?得意なら一番で良いのになぁ……。
なんて、余計なことを考えていると、感知の端に複数の熱反応が引っかかる。
『アルテミス!反応複数だ!姿はまだハッキリと見えないが……』
『魔力感知に切り替えて、すぐに確認してください!』
『ほいきた!』
言われたとおり、魔力感知に集中すると、薄らと姿が見える。気配を消すとかではなく、一律で探知を妨害する呪文みたいなものだと思われる。ふふん!俺の感知レベルはどちらともほぼ最大だ!逃れる事はできないぜ!
相手が逃げ出さないように、ゆっくりと近付く。
半分ぐらいまで近付くと、完全にエルフだと分かる魔力量だ。
更に俺に着いてきたエルフ達が、隠れ場所を目視できる距離まで近付くと、探知反応がザワザワし始めた。
エルフは耳が良いらしいし、この距離なら気付くか。
普通の人間なら、この距離なら足音や話し声も聴こえない程の距離なんだがな。生まれつき優秀ってのは狡い。俺なんか最初葉っぱ目玉の触手で、びっくりする程弱かったんだからな!
……なるほどな〜
魔法で岩の出入口を塞いで、気配も消して、探知も妨害してたのか、通りで見つからん訳だ。
俯瞰視点だと、天井があるだけで、はっきり見えないからな。
後、イジャールの狂信者達みたいに、下とかだと、俺の意識がいかないから中々気付けない。
いくら見えてるっても、視界の端になんとなく写ってるのと、目の前に居るのじゃ、意識の持ってかれ方が違うからなぁ……。
敵の位置が全部割れてても、全部に対処出来るわけじゃない……。
広範囲感知がチートだと思ってた時期が、僕にもありましたとさ!って感じだな。スキルがあっても、使いこなせないと、死蔵と何ら変わりないわ。
だから、漫画の主人公達って修行するんだなぁ……。力のコントロールが、重要な課題だな。
色んな主人公みたいに、強大な力を制御する!とかじゃなくて、感覚的には目を鍛える感じかな?目無いけど。
人間で、軍隊の指揮官とかになってれば、俯瞰視点も強かったんだろうけど、現状明確な意思疎通の方法が相手が魔法をかけてくれる前提だからな。指揮官とか、普通に無理。
見えてても、指示のタイミングがズレたら、全滅しちゃうか……。
アレ?全然チートじゃなくね?努力の賜物じゃん。
異世界転生なんだから、無双ぐらいさせてくれてもいいじゃないか……。
「驚かせてしまってごめんなさい。敵ではありません!落ち着いてください。中央のアルテミスです。救助に来ました」
こちらまで、ザワザワが大きくなったのが伝わってくるな。疑心暗鬼なのか、モンスターを警戒してるのか、出てくるのに少し時間がかかったが、大きな問題は今のところない。
「中央のアルテミスです。所属は〜」
「おお、これはこれは中央の方でしたか。救助に来ていただけで大変感謝しております。つきましては〜」
あ〜長い。
なんか凄い喋ってる。言い回しがくどい。ここモンスターの世界ぞ?理解してる?エルフ話長いよ……。
「こちらは全部で12人。子供が2人と怪我人が3人おりまして……」
どうやってそんな状態で、こんな森の中で過ごしてたんだ?
考え込んでいると、聞いたわけでは無いが、アルテミスが答えをすぐに口にした。
「あぁ、南の森のエルフに、怪我をしてるのは中央のエルフですね。補助系の魔法が得意な南のエルフであれば、この森に逃げ込んだのは納得のいく話です」
補助系の魔法によって、どうしても倒さないと不味いモンスター以外との戦闘は極力回避したわけか。
確かに擬態のモンスターは多い。その分余っ程の事情がなければ、そうそうこんな森に入ろうとは思わないだろうしな。
「なにか他の同胞の情報を持ってたりはしませんか?」
「……いえ」
「どんな些細なことでもいいんです!助けに行かなければいけないのです!」
「北……ずっと北の砦の向こうに……多くのものが連れていかれたと、聞きました……も、勿論確かな情報では無いのですが……」
「そう……ですか」
どうした?皆随分と歯切れが悪いな。今までのアルテミス達なら、人間の街だろうが、亜人の街だろうが、絶対に助けてみせる!ぐらい気概はあった気がするんだが……。
「北……それも、向こう側ですか。一度皆さんを連れて大樹に戻ろうと思いますが、どうでしょうか?」
「取り敢えず、この森から出たいのですが、話はそれからにしませんか?」
「そうですね。取り乱しました。気が回らなくてすみません」
補助系の魔法が得意なエルフ達も、全然戦えない訳では無かった。エルフがこの人数いれば、森の踏破、それもこの人数いれば容易だった。
俺の薬草生成スキルで、エルフ達の傷を癒し(薬草生成のレベルが七で、割と高いので結構いいのが取れたらしい)怪しまれつつ、感謝されつつ、森を抜け出す事ができた。
ただ、一気に人数が増え、割と深いところに隠れていたので、食糧が枯渇し、俺が出せる水もギリギリといった感じだ。
まあ、水がギリギリなのは、いつでも霧が使えるようにセーブしてるからだけど。
今の食糧の残量から考えて、三日ぐらい食わずに強行すれば東に街があるらしい。
大人はいいが、怪我人と子どもは辛いだろうということで、これからどうするか話し合うらしい。
なんか最近ずっと話し合ってるし、俺ずっとエルフの会話聞いてる気がするな。
まあ、それはいいとして、俺より低いランクでもあれだけ倒したんだから、レベルが上がってたりしないだろうか?
あんまり強くなってる気はしないんだけどね。一応見とくかタダだしな〜。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:モノリ 性別:不明
種族:ラークスフォッグ(霧の湖)
Lv5/70
HP554/554
MP498/498
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.10》《魔力感知Lv.9》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.7》《植物成長速度Lv.7》《植物鑑定》《水汲みLv.9》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.5》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》
魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.2》《魔力の奔流Lv.3》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
殺戮者って……まあ、人間八人も一度に殺したら、そりゃまあ割と大事件だよな。しかも、街中だったし。
お、スキルちょこちょこ上がってるじゃん!この調子で、積極的に使っていこう!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:モノリ 性別:不明
種族:ラークスフォッグ(霧の湖)
Lv5/70
HP554/554
MP498/498
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.10》《魔力感知Lv.9》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.7》《植物成長速度Lv.7》《植物鑑定》《水汲みLv.9》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.4》《情報開示Lv.3》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.5》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》
魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.2》《魔力の奔流Lv.3》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー