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55話 混沌の森

『アリシャ。先程から注意が散漫なようですが……?』

『いや、大したことじゃないんだが、戦う前も言った通りだ』

『まだ、こちらを伺っていると?』

『ああ、流石にさっきの虫達のデカい声が聴こえない距離では無いから、こっちが襲われてるのは、向こうにも伝わったと思うんだけどな』

『今は敵対も遭遇もしたくない……と。種族は?』

『分からん。向こうのレンジャーも優秀みたいで、最初からずっと、感知範囲に足が一本入るか入らなかぐらいのラインを、慎重に見極めてるっぽい』


 一人だけ飛び抜けた力を持つ人間のグループという事は、そうそう無いだろう。どれも、俺の感知に気付けるレンジャーと同等の力を持つ相手だと思うのが普通だ。


 勇者一行であれば、勇者だけ図抜けてつよいとか、あるかも知れんけど。しかし、勇者一行なら、勇者が感知担当で、Bランクのモンスターの感知範囲をおっかなびっくり調べるだろうか?


 ということで、グララウス傭兵団のように、護衛がモンスターに遭遇しないように気を付けているか、モンスターを倒す仕事をしてる人間か……。

 そのどちらかだと思う。多分な。


『エルフの耳は非常に敏感なのですが、それでも捕捉できない距離となると、かなりの手練だと思われます。相手が敵にせよ中立にせよ、逃げましょう。敵対は愚策です。先程大分魔力も使いましたし』

『大いに賛成だな。俺も触手を回復しないと不味い。お前達が、遠慮無く燃やし尽くしてくれたからな!』


 嫌味っぽくないように、気をつけてそういうと――


『その口ぶりであれば、どうせ直ぐに生えて来るのでしょう?』


 ――と、冗談めかして返してくる。


『まーなー』


 少しは役に立ったので、打ち解けられてきたような気がする。


『反対側に逃げて、追ってくるようならどうする?』

『先手を打ちましょう!』


 だから、蛮族かて。


 発想が怖いわ。相手は分からんが、こちらを伺って警戒するだけの知能のある相手なんだから、話し合うという選択肢は無いんか!


『……乱暴だな』

『相手に反撃の機会を与えずに、一気に倒してしまった方が良くないですか?少なくとも、こちらの被害は抑えられます。相手は、少なからずこちらを追う理由が有るのでしょうし』

『……救援を求めてるとか?』

『色々言いたいことはありますが、助ける義理はないですし、可能性は低いと思いますよ』

『言っといてなんだけど、俺もそう思う』


 それから、相手が追ってきた時の対応を少し詰め、予定通り移動する事になった。相手の存在は、皆には伏せる事にした。

 少なくとも、あの距離から狙撃は無いだろうしな。あれば、シモ・ヘイヘを優に凌ぐ事になる。まあ、魔法のある世界だし、絶対じゃないけど。


 もしかしたら、魔法を使えば、超長距離からの射撃が連続で可能かもしれない。魔王クラスで射撃に特化していれば、有り得なく無さそうだから困る。

 魔王クラスの化け物が、そうポンポン居てたまるかよ!ってのが本音だな。いや、居ない!いないに違いない。世界を滅ぼせる存在なんてのは、魔王と勇者だけで充分だ。


 移動速度を少し落として動いていたが、着いてきている気配は無い。


 様々な方向に感知範囲を伸ばしたり、縮めたりしているので、迂回して着いてきてることも無いだろう。


 一つ心配なのは、黒いローブの裾のようなものが一瞬見えたので、そのローブを魔法使いだと仮定して、感知を無効化する魔法を使っていた場合だな。それならお手上げだ。


 移動し続けて二十分程が経過し、途中から徐々に速度もあげた。


 うん。大丈夫そうだな。

 まさに杞憂だ。


 いや、完全に杞憂でも無いか。エルフの解放者といえば聞こえはいいが、奴隷商人からすれば、ただの略奪者にしか過ぎない。追われる理由には事欠かないな。




 それから数日、今は蒼の森に近い森で、エルフを捜索している。

 闇雲に探し回ってるだけなので、非常に効率が悪い。


 街の一区画ぐらいならまるっと見える俺が居ても、難航するのだ、森が如何に広いかは、言うまでもないだろう。


 この森は蒼の森程特徴的では無いが、背の高い木と低い木が混在していて、非常に進みずらく、人型であれば視界は最悪だろう。俺も俯瞰視点が無ければ、とっくにこんな森は出てっている。


 後は、高い木も低い木も、草も蔦存分に生い茂ってるので、植物系のモンスターが異常に多い。特に擬態に特化したモンスターが多いようだ。


 ……疑問なんだが、高木と低木とツタ性の植物と背の低い草が、同時に生えてる環境なんて存在していいんだろうか?

 高いなら高いなり、低いなら低いなりに、環境に適した姿をとるのが、自然の摂理や進化というものだろう。

 全てが同時に混在するとか、どんな混沌なの?

 ……俺は、特段植物には詳しくないので、そんなところも、もしかしたらあるかも知れないけどさ。


 おかげで移動は最小限。捜索は実りが無い時間が長い。


 俺は感知能力が高いおかげで全て看破できるが、看破できるからといって、対応できる訳では無い。


 擬態が雑な奴に気を取られて、そちらを対処している間に、注意深く見ないと気付けない程度の擬態のモンスターが別方向から迫ってくる。


 かといって、捜索の視界を狭めるわけにもいかず、ある程度散って捜索しているので、完全な対処はほぼ不可能だと言っていい。


 こんなところに逃げ込んだら、数日でお陀仏だろ。睡眠不足と疲労、食べれそうな木の実はモンスターの擬態。


 どう考えても、別の場所を探すべきだ。


 西のエルフ達も成果が出ず、如何にも同胞がいなさそうな森を捜索すると主張した三姉妹達に、かなり懐疑的なのが現状である。しかし、伝統ある決闘を重んじた結果言い出せない。


 エルフという種族自体が、森の守護者であり、テリトリーを守るのは得意だが、森の外で活動するのに向いて無さすぎる。その、生活様式や形態も。

 勿論、自身の森を守る事に関しては、魔王やその手下のキュプロクスクラスの化け物を除けば、最強にして最高なのは間違えないだろう。人間にも、亜人・獣人にも、負ける事はまず無いだろう。


 古い組織で、常に保守派の種族が、表に出ること自体が、想定されていない緊急事態だ。故の無策なんだろう。


 だが、残念ながら俺は軍事面にも人探しにも、明るくない。明るければ、とっくにアルネアお嬢様が見つかってていいはずだしな。


『なぁ、アルテミス……お!』


 丁度、アルテミスから魔法のパスが繋がった瞬間だった。


『タイミングがいいですね。なんですか?』

『お先にどうぞ』

『では、感知を熱感知だけに絞れませんか?』

『できるが、無駄じゃないか?俺は別の森を探すことを提案しようと思っていたんだが』


 それに、エルフや高擬態能力を持つモンスター相手なら、魔力感知のが良いはずだ。熱感知だと、植物系モンスターの擬態は分からんことも、合わせてアルテミスに伝えると、こう返ってきた。


『大丈夫です。この森のモンスターの特徴は大体把握したので、熱感知だけでお願いします。魔力感知だと、沢山反応があり過ぎて、判別しにくいでしょう?』


 言われてみればそうだな。


『あい、わかった。そうしよう。戦闘と敵の感知を任せる形になるが?』

『それは、森の種族を甘くみ過ぎていると思いますよ?』

『そうだな。失礼した』

『もう数日してダメなら、一度撤退しましょう。ここは擬態のモンスターが多く、食料の確保があまり出来ませんので、長期間は無理ですね。3日といったところでしょうか?』

『俺はモンスターだからな。食糧が何日持って、どうこうなんてのは、分からないから任せる』

『そうでした!そういえばモンスターでしたね!面倒な人達より話が通じるので、花型の亜人かと思う程です!』

『早く人間になりたい……』

『モンスターって進化すると人間になれるんですか?』


 そうか、異世界だから「早く人間になりた〜い!」は、マジレスされるのか……。


 ……日本の話が通じる奴は、こっちに転生してないんだろうか。今なら、何故か時間をずらして外出する算数兄弟でも許してやるぞ……?

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 名前:モノリ 性別:不明


 種族:ラークスフォッグ(霧の湖)


 Lv1/70

 HP513/513

 MP471/471


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.10》《魔力感知Lv.9》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.7》《植物成長速度Lv.7》《植物鑑定》《水汲みLv.8》《血液吸収》《猛毒Lv.1》《噴霧Lv.3》《情報開示Lv.3》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.5》《刺突耐性Lv.6》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.7》《土耐性Lv.5》《雷耐性Lv.2》《氷耐性Lv.8》《邪法耐性Lv.6》


 魔法:《土魔法Lv.2》《水魔法Lv.3》《氷魔法Lv.4》《魔導の心得Lv.2》《魔力の奔流Lv.3》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約


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