40話 持久戦
フロストプラントと戦闘を開始してから、早数十分。
俺は非常にイライラしていた。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv12/30
HP114/126
MP87/87
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.6》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.6》《魔力感知Lv.6》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.3》《植物成長速度Lv.4》《植物鑑定》《水汲みLv.4》《血液吸収》《毒Lv.5》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.5》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.4》《刺突耐性Lv.3》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.3》《土耐性Lv.4》《雷耐性Lv.1》《氷耐性Lv.0》《邪法耐性Lv.4》
魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.1》《魔力の奔流Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家
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そう、俺の体力が削れ始めたのだ。
相手に近付いたせいで、相手の攻撃が否応なしに当たりやすくなっていた。
無論、こちらの攻撃も相手の核近くに当たるようになってきたのだが、一つ問題がある。
『相手が植物系モンスターである』ということと『こちらだけHPが見える』ということだ。
え?一つじゃない?じゃかしいわい。とか、くだらない事を考えてないと、メンタルがヤバい。
俺は、二度と植物系モンスターとは戦わないと、神に誓ったぞ。
植物系モンスターだから痛覚が薄いせいで、効いてるか分からない。有効打っぽいのが核の近くに入っても、なんもリアクション無く普通に攻撃してくる。
対人間や対動物が、どれだけ有難いか良く分かった。
そして、相手に効いてるか不明なのに、少しずつとはいえ、自分の体力だけが着実と減っていく様が見えるのは、精神的負荷が尋常じゃない。
自分だけステータス見えるのが仇になった形だ。
ステータス表示ですら、何事も善し悪しなんだなと学んだ。すげぇ辛い。
ゴスッ!
痛ぁ!?
また体力減った!
ちくしょう。後、分かったことがまだある。自分より強い植物系モンスター相手だと、人間だった頃の感覚が、かなり負の方面に働く。
さっきのHP減少だって、そこまで痛くは無い。植物系モンスターなんだから。
ゲームやってる時にHP減って「痛ぁ!?」って、つい言ってしまう感覚に近い。痛いわけが無い。いや、今はちょっとだけ痛いけど。
後、痛いせいで無意識に仰け反ってしまうのが、戦闘面で大きくハンデになっている。相手は全然仰け反らないのに、こっちは仰け反る度に攻撃も防御もワンテンポ遅れる。
結論。植物系モンスターマジウザい。悉く焼き払われろ!
数字でも、大まかなHPバーでも、なんでもいいから相手の残り体力というか、そもそも俺の攻撃が効いてるかを知りたい。
なんかいいスキルは無いだろうか?
《調べる》
そうだ、調べるは触手が触れてれば使えたはずだ。
よし、触手と触手の攻防でぶつかる度に使って見るか。
《調べる》……?
《調べる》《調べる》《調べる》《調べる》《調べる》《調べる》《調べる》《調べる》
何も起きねぇ!何でじゃ!
HP98/126
だぁ、もう!試行錯誤してる時間も惜しい!
植物系モンスターだから《植物鑑定》なら、いけるか?
《植物鑑定》……?
《植物鑑定》《植物鑑定》
駄目かよ!
こうなったらヤケクソだ!あるやつ全部使ったらぁ!明らかに効かなくても使ってやる!
クソ!こういう時主人公なら、都合良く効く技に目覚めるか、最強の組み合わせが閃くのに!
《薬草生成Lv.3》《植物成長速度Lv.4》《水汲みLv.4》《血液吸収》《毒Lv.5》
残る使ってないのはこれだけか。一つも効く気がしねぇんだが?
HP88/126
喰らえ!《薬草生成Lv.3》!
相手に燃える草を生やし、内部から蹂躙するのだぁ!
……はい。何も起こらないですね。知ってました。
HP83/126
スキルやステータスに意識を払う度に、更に防御が遅れるジレンマ何とかならんかな。遅れてるだけで、ギリギリ直撃はしてないから、ちょっとずつの減少で抑えられてるけどさ。
まだ、まだ諦めんよ!
喰らえ!必殺!《植物成長速度Lv.4》!
相手に過度の栄養を与え続け、内部から爆散させる!
……はい。相手の触手が回復しただけでした。
シュルって!シュルって、治ったからね!俺の馬鹿野郎!
意図せず回復させてしまった触手に、容赦なく殴りつけられる。
HP77/126
ヤバいヤバい!てか、うちの回復役さん何してんの?回復して!
あー!後ろで休んでやがる!
ごめんね!植物系モンスター回復したかもダメージ受けたかも、見た目じゃ分かりづらいもんね!ちくしょう!
逃げ出してはないから、裏切られては無いけど、なんか少し裏切られた気分だよ!
まあ、今は許しちゃる。
次は順番的にこれ!
《水汲みLv.4》!
触手が重くなった!動きが悪くなった!速度が下がった!
本っ当何から何まで使えねー。
泣くぞ?我泣くぞ?目とか無いけどな!
いや、待てよ?もしかして……。
うん。保留保留。
次、試そう。
HP62/126
これで終わりにしてやる!《血液吸収》!
……うん。これは、終わった後に使うスキルだね。そもそも、植物系モンスター血液ってなんぞ?馬鹿かな?
次。
お前の運命はのたうち回って死ぬこととしれ!《毒Lv.5》!
バシッと相手の触手に傷を入れると、少し変色した。
HP58/126
遊んでる場合じゃないな。遊んでないけどね。必死に、どうやったら倒せるのか試行錯誤してるんだけどね!
ちょっと考える時間が欲しい。
しかし、このインファイト状態じゃ考える時間が欲しいとか、言ってられない。ん〜?……!
ユニットチェンジだ!これしかねぇ!ちょっとクズっぽいけど、そんなの知るか!
リタ、カルモド、タウルの前・中衛三人の防具部分に触手を巻き付け、俺より前方に放り投げる。
「ひゃぁぁぁ!?」
「何しやがる!」
「敵の目の前だ立て直せ!」
今まで休んでたんだから、少し体力回復しただろ!俺が考えてる間だけでいいから戦ってろ!
「タウル受けれるか?」
「レルレゲントが受け持ってた時間で休めたからな」
「もしかして、レルレゲント賢いから交代させられたのかな?疲れたのかな?」
リタ賢いぞ!賢いポイントを進呈しよう!
タウル達を前に強制的に掴み出して、無理に交代したせいで、その時間攻撃を受け続けるはめになった。
おかげで残り体力が酷い。
HP18/126
まさか、あの振り回すだけの攻撃が、防御無しで喰らうとこんなに痛いとは。受け続けたと言っても、短時間なのに……。
ランク一つ違うだけで、こんなに理不尽なのかよ。やんなっちゃう。
仲間がいなかったら、普通になんの面白味もなく、触手で殴られて地味に殺られてたな。
タウル達がやられるまでに、思考と観察を続けろ。
この編成じゃ勝てない敵なうえに、触手の攻撃範囲が広くて、この雪に足を取られる状況じゃ逃げる事も出来ない。
ポドルにどうにか現状を伝えて、体力を回復してもらおうとも思ったけど、魔力は少し休んだぐらいじゃ回復しない。
なので、俺が後ろに下がった時に、ポドルが心配して掛けてくれた一回で我慢しよう。
HP50/126
全快には程遠いが、俺の体力全快させてタウルが時間を稼げなくても困るし、意思疎通が出来ない割に、この一回の回復は凄いファインプレーだな。だといいな。
選択を間違えたら、全員死ぬかもしれない。この一回の回復を凶の目にする訳にはいかない。
…………。
さっき毒を撃ち込んだところ、少し広がってないか?
核付近に連続して撃ち込めれば、継続ダメージになるんじゃないだろうか。
後は、水汲みで、触手を重くして打撃力を上げよう。
しかし、あんまり触手の速度が遅くても、ろくに当たらないし、どうする。そう言えば……やってみるか。
水汲みを使って、触手を全体的に重くしていく。
よし、いい感じに溜まったな。
タウル達を援護できる距離まで近付くと、案の定こっちにも攻撃が飛んでくる。
攻撃を事前に作った触手盾で防ぎながら、一本の触手に吸い上げた水を全部移動させる。それに、毒も混ぜていく。
俺に気付いたタウル達がジリジリと後退してきたので、水を移動させた触手から、後退を援護させる。
水を移動させたら、他の触手の棘の無い部分でキュッと縛る。大きく膨らんだ水入り触手の完成だ。
あんまり水入れ過ぎると、ダーッと溢れるので、量は自重した。
アルネアお嬢様の為に駆けずり回った時、大きな岩で木を殴り倒した遠心力さん頼みの攻撃だ。
俺が頭上で一際太い触手を振り回し始めたのを見たタウル達が、慌てて更に後退する。
いい判断だ。流石、人外的な強さを誇る、グララウスの傭兵団の一員だ。状況判断が早い。
触手が千切れそうになる直前まで遠心力をのせ、他の触手で相手の核への道を一気に切り開く。
他の触手が、吹っ飛んだり凍り付いたりするのも、自分へのダメージも完全に無視だ!全力で叩き付ける!
吹き飛べぇぇぇぇぇぇ!!!!
氷が砕け散る様な甲高い音と共に、フロストプラントが、大きく後ろへ弾かれる。案の定水を溜めた触手は衝撃と敵の体の棘で破裂し、毒を混ぜた水が降りかかる。
「よくやったレルレゲント!トドメは任せろ!」
「なるほど!」
レンジャーとアーチャーで目と勘のいいカルモドとリタが、甲高い音の直後にそう言いながら駆け出した。
二人とも弓を休まず撃ち続けながら、雪の上とは思えない速度で、倒れたフロストプラントに接近していく。
よく見ると足元が光ってたので、補助魔法だろう。矢も光っており、ポドルとヒューリアが駆け出す前に掛けたのだろう。
俺の一撃を信じてくれたんだな。
じゃなきゃ、即駆け出したあの二人に魔法が掛かってるはずが無いからな。
団員でも、人間でも無い俺を、信用してくれたのが無性に嬉しい。
トドメの瞬間は、角度的に上手く見えなかったが、開きっぱなしのステータス画面の、大幅なレベル上昇が、俺達の勝利を静かに教えてくれた。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv18/30
HP21/126
MP87/87
状態:損傷(大)
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.7》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.6》《魔力感知Lv.7》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.4》《植物成長速度Lv.5》《植物鑑定》《水汲みLv.6》《血液吸収》《毒Lv.7》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.7》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.4》《刺突耐性Lv.4》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.3》《土耐性Lv.4》《雷耐性Lv.1》《氷耐性Lv.1》《邪法耐性Lv.4》
魔法:《土魔法Lv.1》《魔導の心得Lv.1》《魔力の奔流Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv18/30
HP21/126
MP87/87
状態:損傷(大)
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.7》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.6》《魔力感知Lv.7》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.4》《植物成長速度Lv.5》《植物鑑定》《水汲みLv.6》《血液吸収》《毒Lv.7》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.7》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.4》《刺突耐性Lv.4》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.3》《土耐性Lv.4》《雷耐性Lv.1》《氷耐性Lv.1》《邪法耐性Lv.4》
魔法:《土魔法Lv.1》《魔導の心得Lv.1》《魔力の奔流Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家
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