35話 魔導書
ヒューリアさんとアリアのかしましい会話を聞きながら、露天商に戻って来た。
三人揃えばかしましいなんて嘘だった。普通に二人でも、なかなかどうしてずっと喋ってる。
本当に凄いよな。そんなに喋ることねーよ。
「アリアお嬢様。どんな魔導書お探しなのですか?」
「そうね〜火と風は使えるから次は水かしら?」
「あら、そうなんですか?お嬢様の魔力が高いのは存じておりましたが、三属性も習得して大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ!勇者型だもの!どうせそのうち全属性使えるようになるに決まってるわ!」
相変わらずこの世界の天才『勇者型』は狂ってるな。どうせそのうち使えるようなるってなんだよ。
俺なんか《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》持ってるけど、両方未だに使い方すら分かんねーのに。
「流石はお嬢様ですね!私なんて、水の系統修めるだけで、精一杯なのに!」
「当然よ!」
褒められると調子に乗る年頃だからな。仕方ないね。
ドヤ顔はちょっとウザイけどね。
「ここ寄ってみませんか?」
「えっ、なんかボロっちいわ」
容赦ねぇな。良いだろう。如何にも魔法使いの店っぽくて!分かんねぇかなこのロマン。いや、小さな子供にロマン語ってどうすんだ俺は。
てか店?露天商は?
あー随分後ろじゃん。大分歩いたな。つか、露天抜けるまでずっと喋ってたの?凄いね。
古めかしい壊れかけのラジオ。じゃねーや、古臭い扉を開けると、店の店主らしき人と、見知った金髪と見知った狼が居た。
くすんだ金髪でショートボブの、印象の薄いお嬢様Aの方だ。アルネアお嬢様のご学友の、平和な脳ミソその一だ。
確か名前は、クァルク・テンネ・フルトイだったかな。
従魔は狼のミムリ。
いぶし銀みたいな顔付きしてやがる、ダンディにダンディズムな灰色狼だ。
ミムリの方は俺が分かったらしく、ギャンギャン吠える。見ないうちに大きくなりましたね.......?
「バウゥ!ガウガウ!ウォーン!」
「ミムリさん。街中で知らない方に吠えるのはいけなくってよ?」
「クゥークゥー」
久しぶりに聞いたな、このお嬢様言葉。
今にも「アテクシに何か御用かしらぁ?」とか、言いそう。
「バウバウ!」
よう。元気だったかミムリ?はは、そうだよな!分かる分かる。
「ウゥーガウ!」
うんうん。分かるぞミムリ君。
「ウォー!ウォーン!」
いや、サッパリですごめんなさい。犬が吠えてるだけにしか聞こえないわ。
「もう、ミムリさんどうしたのかしら?いつもはこんなに吠えないのに」
ヒューリアさんがすっと前に出て、即座に原因を説明する。
「すみません。この子に驚いたのだと思います」
ヒューリアさんが俺を指さした。
俺かよ。いや、俺だけどさ。
「あら、貴女もモンスターテイマーでして?」
「いえ、私では.......」
「私よ!」
割り込むなよアリア!ややこしくなるだろ!静かにしてなさい!
「貴女がですの?」
「そうよ!私こそがアリア・ラド・ヴェーノ。ヴェーノの子爵嫡女にして、大魔導士にしてモンスターテイマーのアリア・ラド・ヴェーノよ!」
「そうでしたの。私はクァルク・テンネ・フルトイ。フルトイ家の嫡女ですわ。私もモンスターテイマーを嗜んでおりますの」
モンスターテイマーって、嗜むものなの?なんかおかしくない?
「貴女も貴族だったのね。貴族でモンスターテイマーなのに、こんな小汚い店に1人なの?」
とことん失礼な奴だな。お前って奴は.......。
「ミムリは、護衛の方より強いですからね」
あ、ミムリさん強いんすね。チッスチッス。
どうよ!俺のこの相手が強いと知った瞬間の身代わりの速さは!自分でも惚れ惚れしちゃうね!
「それでですね。ミムリは非常に賢いので、もしかしたら、教えれば魔導書を理解できると思いましたの」
「ふーん。その犬にできるなら、うちのレルレゲントだってできるわ!」
犬って、お前なぁ.......。ミムリさんに詫びれなあかんくなるで?ホンマになぁ?お前あれやぞ、ミムリさん馬鹿にしとるんか?お?
後、魔導書なんか読めるわけねーだろ。いい加減にしろ。
まあ、狼の威を借る植物は置いといて、クァルクの方が歳上なのに、やたらと丁寧な気がする。
なんでだろ?
「アリアお嬢様。お言葉ですが、植物系モンスターには難しいかと」
おー!もっと言ったって!ヒューリアさん流石!立派!凄い!
「できるわよ!なんたって私の従魔だもの!」
アリアちゃんさー、自分を尊大に評価するのは良いんだけど、俺を過大評価するのはやめてくんろ。俺向こうでは一般人だったから。村人Aどころか、村人Gまである程の、言うなれば超絶一般人だから。
クラスの「お前いつの間に背後に!」ランキングやったら、上位にランクインする感じの、一般人だからヤメテ!
「ほら、レルレゲント読みなさい!覚えるのよ!」
そう言って、アリアが本をぶん投げてきた。
あっぶねぇ!?いや、植物だから危なくないけど、危ねぇよ!分厚い本を人に投げるんじゃありません!死ぬかと思ったわ!本ぐらいじゃ死なないけど。
まだ子供だけど、売り物の本ぶん投げるのは良くないですよ?ヒューリアさんちゃんと注意して!
「お嬢様が投げた本はおいくらですか?」
「あーあれかい?」
おいおい。なんで、払いに行ってんだ。正しいけど正しくない!注意するのが先でしょ!ちゃんとしてよ!
結局ヒューリアさんが店に謝り、アリアは後ろで偉そうにしていた。こういうとこ本当にファンタジー貴族だよね。
触手に棘が無かったら、今頃アリアを小突いてるんだがなぁ.......。
投げつけられた本をペラペラ捲っていると、何かが入ってくる感じがした。内容はなんかミミズがのたくったみたいな文字でサッパリだったのに、なんか入ってきた。
人間なら読めない文献は、読めないと理解できないけど、植物系モンスターそもそも脳が無いから、開いただけで効果があったって事か?
ちょっとステータス調べてみるか。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv12/30
HP126/126
MP87/87
状態:魔力酔い
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.6》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.6》《魔力感知Lv.6》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.3》《植物成長速度Lv.3》《植物鑑定》《水汲みLv.4》《血液吸収》《毒Lv.5》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.5》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.4》《刺突耐性Lv.3》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.3》《土耐性Lv.4》《雷耐性Lv.1》《氷耐性Lv.0》《邪法耐性Lv.4》
魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》《魔力の奔流Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家
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《魔力の奔流Lv.1》
ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
そういう事か!
今までも魔力は身体に流れてたけど、魔法を起こす程の力で流れて無かったって事か!
そうだよな!魔法が魔力で作り上げるなら、体外に放出しても存在できる程の魔力量を、一気に体外に放出できないと、魔法になるわけない!そういう事か!
それで《魔導の心得Lv.0》で、魔法を制御するわけだ。多分な。
土魔法=電球
魔導の心得=回路
魔力の奔流=電池
みたいな事か?多分そうだよな?うん。そうに違いない。
って事は、魔導の心得を上げると、回路が増えて繋がる電球が増える訳か。
そして、電池が強くなれば、それだけ強力な魔法を使えると。
じゃあ、ヒューリアさんが言ってたように、アリアの歳で二属性使えるって、滅茶苦茶凄いじゃん。しかも、火魔法はあの威力。
勇者型やべぇな。才能だけじゃなく、アリア自身もヤバいけど。「綺麗な洋服屋や美味しいお菓子より戦いたい」みたいな事言ってだけはあるな。
アリアのことガキだと思って、正直舐め腐ってた部分もあったけど、考えを改めるわ。魔法に関しては、大人顔負けの魔法狂だな!
アリアを怒らせない事を胸に刻みながら、女三人になってさらに喧しい.......かしましい時間を過ごした。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv12/30
HP126/126
MP87/87
状態:魔力酔い
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.6》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.6》《魔力感知Lv.6》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.3》《植物成長速度Lv.3》《植物鑑定》《水汲みLv.4》《血液吸収》《毒Lv.5》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.5》《斬撃耐性Lv.6》《打撃耐性Lv.4》《刺突耐性Lv.3》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.2》《水耐性Lv.3》《土耐性Lv.4》《雷耐性Lv.1》《氷耐性Lv.0》《邪法耐性Lv.4》
魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》《魔力の奔流Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家
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