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29話 戒めの朝

「ひ・ま!」


 事件から数日。


 自宅謹慎ならぬ、宿屋謹慎を言い渡された俺とアリアは、非常に退屈していた。


「あーもう!誘拐されそうになったぐらいで、宿に閉じ込めるなんて!暇!暇!暇よ!退屈は私を殺すわ!」


 誘拐されそうになったら、宿謹慎は妥当というか、甘いよなぁ……。送り返されてもおかしくないのだから。


「退屈は私を殺すわ!」は、けだし名言だな。

 アリアの場合は、じゃじゃ馬とか我儘なんて、可愛げの有るもんじゃない。なんと言ったらいいだろうか『王が道を征くが如く』と、いった感じだ。

 アリアなら「私が通った道が王道よ」とか、多分平気で言う。


「レルレゲント!抜け出す方法を考えなさい!」


 いや、考えるのはいいんだけど、伝える手段が無いんだよな。右手や左手を叩いての意思疎通手段は、人間側から提示してもらわない事には、どうしようも無い。

 俺が急に右の手の平を叩き続けても、伝わらんだろうし、ただただ怖いだけである。《念話》とか、生えないかしら?


「お嬢様。俺が監視に着いてるんですから、レルレゲントが本気で暴れても、部屋からは抜け出せませんぜ」


 ギギっと軋んだ音を立たせた男が、会話に割り込んでくる。会話ってか、アリアからの一方通行だな。男はアリアが頼んだお茶をゆっくり机に置いた。


 何を隠そう(別に隠してないけど)俺達の監視役は、傭兵団団長のグララウス・ダウナードその人である。


 商人の怒りがありありと伝わってくる人選だ。


 Dランクという、下から数えた方が早い俺に対抗手段など無い。なんなら擬態看破されたしな。


 俺の最も信頼厚き擬態先生が、一瞬のうちに破られたので勝ち目は無い。「植物系忍者だよ?!シュシュっとアリア救出大作戦」で、大活躍だったのに……。


 ネーミングセンスっていうスキルも欲しいな。うん。


「ダウナード団長は、お茶を淹れるのは上手くないのね。うちの見習いより下手だわ」

「はっはっはっ、俺の様な無骨者は、上等なお茶なんて縁がないもんですから、すみませんねお嬢様」

「ふんっ!」


 にこにこと受け流すグララウスは流石だな。我儘金持ちの護衛に慣れてるんだろう。

 逆にアリアはイライラしっぱなしである。このたった数日で計二十三回の脱走歴を積み上げたが、(ことごと)く失敗している為だ。


 なんと、アリアの脱走を防ぐ為だけに、宿と交渉して屋根と庭にまで、傭兵団の人員が配備されている。最初は、廊下だけだった事を考えると、とんでもない厳重警備である。


「まあまあ、お嬢様。朝一番の取引が終わり次第街を出ますんでね、そろそろ宿屋詰めも終わりますから、我慢してくださいよ」

「殆ど街を見れなかったわ!」


 自業自得だろ。


「すみませんね。仕事なもんで」


 へっへっと笑うグララウスは大人だな。俺なら……既に『自業自得だろ』ってツッコミ入れてたわ。


 しばらく、アリアとグララウスの遣り取りをボケっと聞いていると、熱感知にしたから来る人が引っかかる。

 感知に引っかかったその人物は丁寧に扉を数度叩いた後、扉越しに声をかけてきた。


「団長。最終確認を」

「分かったすぐ行く」

「あら、もう時間かしら?ようやく出られるのね!」

「積荷なんかの確認をして来ますんで、もう少しだけ大人しく待ってていただけると、助かるんですけどね」

「どうかしらね?」

「……一応、人置いときますので、こき使ってやってください」


 そういって扉を開けると、扉の前の人物を部屋の中に入れる。


「じゃあ、コイツ置いてきますね。おい。お嬢様に失礼のないようにな」

「えぇ!私ですか!?」

「皆忙しいんだから、口ごたえすんな」

「は、はい」


 誰だか知らんが、可哀想な奴め。アリアのお守りは大変だぞ。頑張れよ。


「あら、なに?嫌なの?」

「い、いえ。滅相もございません!」

「そう、なら何か面白い話ししなさい。分かる?私はここ数日ずっと退屈だったの。貴方には私を楽しませる事を命じます」


 お前鬼だな。悪鬼羅刹だわ。

 良く知らんやつに「なんか面白い事言ってよ」とか、ただの拷問じゃねーか。酷い辱めである。


 まあ、傭兵さんよ。子供の我儘と思って、気負わずにな?


「えっと、ではですね。少し前の護衛で起きた、珍事件のお話をさせたもらいます!」


 あ、やっぱある程度手慣れてるんだな。その困り顔はあれか、アリアからの譲歩を引き出すためだな!そうなんだろ!あんまり面白くなくても、最初から無茶振りだし許してね?って顔だ!


 実は俺もちょっと、いや、かなり退屈してたので、面白い話を要求する!モンスターに妥協は通じませんのことよ!


「〜で、その時団長ですね!ふふっ、団長がっ、ふあぁっ」

「ほう?俺が何だって」


 十?十五分ぐらいだろか、自称面白い話のいい所で、グララウスが来てしまった。


「ゲェ!団長!聞いてたんですか!」


 俺は気付いてたけどね。熱感知万歳。


「お嬢様を呼びに来たらな」

「す、すみま」


 ガンッ!という、音が頭から放たれる。


「いってぇー!」

「凄い音したわね」


 アリアも目をパチクリさせている。


「持ち場に戻れ」

「ひゃい」


 頭を抑えながら駆け足で去って行く。器用だなあいつ。後、ドンマイ。


「では、お嬢様準備が整いましたので」

「分かったわ。馬車は景色も良いし、嫌いじゃないけど、ご飯が美味しくないのよね」

「まあ、保存食ですからね」


 この時代のといったら、異世界なので変だが、この時代の保存食はあんまりらしい。俺もちょっと食べて見たいけど、植物だし無理っていう悲しさね。


「魔法で新鮮に戻せたりしないの?」

「お嬢様もご存知の通り、魔法は基本的に攻撃用です。そんなおかしな魔法創ろうとする奴いませんよ。まあ、火を点けたりぐらいはしますけどね」


 ほー。生活に関する魔法を創ろうとするやつは、所謂、頭のおかしな人間呼ばわりされる訳だ。まあ『創る』ってぐらいだから、一朝一夕で創造出来たりしないんだろう。

 そんな時間のかかるものを、モンスターのいる世界で何年もちんたら開発してたら、まあ頭おかしいわな。


「まあ、そうよねー」


 ここで俺が人間なら、ジャポネーゼ知識でチート!カッコイイ!モテる!凄い!


 できるんだろうけど、植物なんだよなぁ……。


 まあ、そもそも魔法創るどころの騒ぎじゃ無いんだけどな。魔法スキル欄に有るのに使えないヘッポコに、魔法の創造なんて不可能である。


 誰にも見せれないけど、見ろよこれ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:モノリ 性別:不明


 種族:スティンガープラント(ヴドァ)


 Lv3/30

 HP90/90

 MP60/60


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.4》《魔力感知Lv.4》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.2》《植物成長速度Lv.2》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.4》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.5》《打撃耐性Lv.3》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.1》


 魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》って、なんだよ。


 異世界はチートで溢れてるんじゃないんですかぁ!訴えてやる!(誰を)


 空に唾を吐きつつも、せっせと移動の準備をする。


 最後の支度は、俺を馬車と紐付け事だったようだ。


 何 故 だ !


 あー、脱走の前科が有るもんな。助けてアリアちゃん。

 助けを求めにアリアの方を見ると、片手に食い物持って、荷台に腰掛けてやがる。


 薄情!


 驚きの白さ!


 あんなに頑張って、ぐわんヴぁって、助けてやったのに……。


 くそー。美味そうに食いやがって。胃は無いけど腹減った気がする。

 三千年恨みの輪廻と共に、とにかく凄い何かしらに目覚めそう。出来れば『エターナルなんとかダークネスなんとかなんとか』みたいなカッコイイ感じの必殺技だと尚いい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:モノリ 性別:不明


 種族:スティンガープラント(ヴドァ)


 Lv3/30

 HP90/90

 MP60/60


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.4》《魔力感知Lv.4》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.2》《植物成長速度Lv.2》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.4》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.5》《打撃耐性Lv.3》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.1》


 魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘


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