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28話 アリア捜索

27話追加で、書こうと思った分少し28話を長くしました!

 狭い部屋に押し込められて、何時間たっただろうか。夜に入れられて夜だから、正味一日ってところか。


 護衛の数は割と居たが、この人がひっきりなしに行き交う交流街では、少女一人探し出すのは、非常に困難だと思われる。


 俺も仮とはいえ、主人としてるアリアが迷子なんだから、探しに行くべきだろう。でも、絶対に今度勝手に出たら斬られるよね。


 ……。


 植物なのに、自己保身に長けてるってどうよ。


 元の世界の俺がどんなんだったか知らんけど、異世界まで来て自己保身に走るか?ちょっとは冒険してみても良いんじゃないの?


 森から出してもらった恩も返してないし。


 しかしあれだな。異世界転生って、モンスターに転生すると、森より街中のが危険なのな。

 森は擬態できる場所や、匂いの強い植物なんかの場所は、モンスターが寄り付かなくて、意外に安全な場所が多かった。特に食事も睡眠も必要無い植物系モンスターなら、いくらでも暮らしてられる。


 植物系モンスターになって初めて分かったけど、植物系モンスターが森の中にいるのって、森が安全だからなんだな。


 まあ、それは置いといて、現状どうするかだ。スニーキングミッションに出るか、大人しくしてるか。


 俺が人間の主人公みたいなのだったら、一も二もなく探しに出るんだけど、モンスターなんだよなぁ……。


 何か、現状打破できるスキルは無いものか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:モノリ 性別:不明


 種族:スティンガープラント(ヴドァ)


 Lv3/30

 HP90/90

 MP60/60


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.4》《魔力感知Lv.4》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.2》《植物成長速度Lv.2》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.4》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.5》《打撃耐性Lv.3》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.1》


 魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 各耐性に魔法は頼りにしようがない。


 となると、やはり《擬態Lv.4》に頼らざるを得ないか。


 路地をゆっくり進むのが一番現実的か?


 しかし、擬態が解けない速度での移動で、街を探し回るとなると、現実的じゃないな。


 頼れるスキルや人が居ないと、この凡庸な脳しか頼れる相手がいないんだよな。思考速度何十倍みたいなのが、欲しいところだ。もしくは、優秀なもう一人の俺とかね。


 くだらない事を考えている間に、月はどんどん高くなり、火はぽつぽつと落ちていく。


 壁の外ではもうすぐ、暗闇と静寂に異形の者と化物、死者の跋扈する時間だ。脆弱な人間では歩く事もままならない、深き夜。

 壁の中では、今まで眠っていた人間が、夜を歓迎している。いかがわしい店、怪しい店、路地裏の打ち捨てられた人。


 夜に紛れて悪を討つ!


 みたいな、特殊能力があれば最高なんだがな。忍者みたいな。


 忍者みたいな……?


 そうか!忍者になればいいじゃん!


 忍者といえば、屋根の上を走る!これだ!これしかねぇ!


 もう少し、夜も深まれば、客引きなんかも人通りが無くなって店の中に戻る。それこそ、目撃者なんて浮浪者か、こんな時間に行動しなきゃいけない奴ぐらいだ。


 壁と門があるおかげで、夜は締め切り外からの襲撃に備えてる兵士もいない。城下町って訳でも無いから、巡回兵も少ないだろう。もしかしたら、いないかもしれない。


 深夜に屋根の上を凝視して、不審者を見つけて通報するのが趣味!みたいな、変人でもいない限り、そうそう屋根の上を見たりしないだろう。


 そうと決まれば捜索開始だ!


 但し、アリアを見つけずに帰還し、抜け出したのがバレた場合、大変な事になる。最悪殺される可能性も無きにしも非ずだ。所詮モンスターだからな。言う事を聞かないモンスターなんて、怖くて置いとけないのも道理だ。


 一度抜け出したら、朝までに、人々が起き出すまでにアリアを見つけられなければ、死。


 植物なのに、ゾクゾクするな。


 異世界だから、前の俺より大胆になってるのかもしれない。


 どうせ転生なんだし、一度死んでるんだ。男なら多少の無謀ぐらいしなきゃ嘘だぜ!


 まあ、それでも怖いし、ちゃんと屋根から屋根へ移る時は擬態しながら、ゆっくり行こう!


 擬態を使いながら、ソロソロと屋根にあがる。トゲがあっちこっち引っかかるので、登り易かった。登り切った後も、あっちこっち引っかかるので、触手の回収が面倒だったけど。


 熱感知を切り、魔力感知を最大限まで感知距離を広げる。


 街の中央を突っ切った後に、壁沿いをぐるっと一周大回りするか。

 広い街だから、闇雲にウロウロ探すよりは良いだろう。


 屋根の上は素早く、渡る時は慎重に、屋根の上を走る。


 中央通りは、一軒一軒が大きく、密集してるおかげで、非常に屋根から屋根の移動時間が短い。スイスイ行ける。忍者が屋根の上を走りたい気持ち凄い分かるわ。

 地上だと人にぶつかったり、障害物を避けたりしなきゃいけないけど、屋根の上にわざわざ要らんもんを置くヤツはそうそういないからな。走りやすいこと走りやすいこと。


 俺来世は忍者になるわ。


 シュシュッと華麗に忍者で、大通りを駆け抜けたが、成果は無し。人目につきにくい時間帯なら、あえて大通りを使って運んだり、なんかしてるかもと思ったが、そんな事は無かった。

 やっぱり、悪い連中は裏路地でコソコソと、と相場が決まってるらしい。


 壁の近くまで来ると、家も少なく、浮浪者も余りいない。壁のすぐ外はモンスター達の領域だから、無意識に壁の中心へ中心へ集まってしまうんだろうな。

 こんなに分厚い壁に守られてても、不安なんだから、人間がモンスターのいる世界でどれだけ弱いか良くわかる。


 熱感知を戻し空を見上げると、月は既に頂点を通り越し、西に傾いている。


 余計な思考と熱感知を切り、急いで壁沿いを走る。人は少ないし、擬態は諦めよう。夜の間に壁沿いを探しきれなくなりそうだ。


 月と追いかけっこをする羽目になるとはな。これが太陽だったら、教科書載ってしまうところだった。


 月が思いの外ぐんぐん沈む。

 かの英雄はこんなに追い立てられて走ってたのか。嫌になるな。疲れない身体ですら、こんなに嫌なのに、疲労のある人間だったら、俺なら数十メートルで諦めてるね。


 異世界なんだから、植物翼生えてろよ。なんで、生えて無いんだ。


 アルネアお嬢様の時も、今回も、見た目が進化したからといって、中身はどうにもならないらしい。どうしてこうも役立たずなのか。


 折角の異世界転生ですら、女の子一人華麗に助け出せやしない。

 異世界転生だぞ?今こそ新しいピンポイントな感知力に目覚めるか、それこそ、急に神が出てきて羽根でも生やしてくれるべきだろ。


 アリアはお転婆娘だが、護衛達に心配かけてまで、一日何処かに勝手に行くような子じゃない。なら、確実に事件に巻き込まれてるはずだ。事故なら、身なりのいいアリアを、下心持った人間が報酬目当てに助け出すだろうから、事件に違いない。


 月に負けじと走るが、いっこうに感知にかかる気配は無い。


 焦る。


 焦る。


 気持ちばかりが焦る。


 自分が、全然進んでない様な気さえする。


 もう、良いんじゃないだろうか。かの英雄も一度は諦めかけたのだ。英雄でも主人公でもない俺は、諦めるのが普通だろう。

 そう、俺の目的はアルネアお嬢様の元に戻ることだ。今なら、城壁をよじ登って、外へ出ればいい。モンスターなんだから、旅立つ準備なんていらない。いくらでも生きていけるのだ。


 元々アリア達は、森王の森から出る為に利用しただけだ。目的は達成したはずだろう。


 なのに、何故か俺は、まだ触手を必死にばたつかせている。


 まだ夜は明けてない。日本人じゃないんだ、夜が明けて直ぐに起き出すような奴はいないだろう。街が賑わうには、夜明けからそれなりに時間があるはずだ。


 そうだ。落ち着け。見つからないぐらいでしょげるなよ。まだ、街にいる可能性が高いだけ、いいじゃないか。俺はこの全世界から、アルネアお嬢様を探し出そうってんだから、街一つなんぼのもんじゃい!


 それに逃げるのは、人間に見つかってからでいいはずだ。囲まれる前に逃げればいい。最後の手段は、ちゃんと最後までとっとかないとな。秘伝最終奥義『遁走』をそう簡単に披露してはやらないぜ!


 アリア何処じゃコラー!心配かけてんじゃねーぞコラー!


 心が軽くなった分、さっきより、心做しか速い気がする!いいぞ!走れ走れ!


 あ、植物だから、体内の水分抜けただけか。


 アリアー!俺に水をあげる時間だぞー!出てこーい!


 入ってきた門も大分過ぎ、この大回りも残すところ四分の一程度だろう。


 それでも、まだ見つからない。


 空は白み、山は日を隠せなくなりつつある。月も山の裏側へ顔を隠してしまった。太陽と月、空の支配者が同時に消えた()く空。街には虚しく屋根を叩き付ける触手の雑音があるだけ。


 街はまるで静止したかのようだった。


 ん?熱感知を切ったはずなのに、なんで、空の白みや太陽と月が無いって分かるんだ?


 感知範囲を、試しに伸ばしてみると、グッと伸びる。


 そうか!熱感知を切って、魔力感知にずっと集中してたから、魔力感知のレベルが上がったのか!この世界のスキルは熟練度形式だった。熱感知と魔力感知で、感知経験値を折半していたのだろう。


 まあ、常時発動のスキルだから、切ったというより、正確には、意識を割かなくなったが正解かな?だから、熱感知に入る熟練度が減ったのだろう。


 アルネアお嬢様が寝てる時に、触手で遊んでたらレベルが上がったのが良い例だ。集中力というか、時間を割いたものが上がりやすくなるらしい。


 ……!


 居た!


 さっきまでの感知範囲だと、ギリギリ引っかからない位置に居た。

 感知が届かなくて、後で順番に見ようとしてたところだ。順番的には最後の方の予定だったので、間に合わなかった可能性が高い。


 全速力で向かう。


 やっぱり屋根最高だ!複雑な路地を行く必要が無い。決めたぞ。来世は忍者になる。


 現場に辿り着き、熱感知も戻す。


 あっはっはっ!どうも見つからない訳だ。部屋に監禁されてると勝手に思い込んでたけど、まさか、縛られて樽の中で寝てるとは。


 そうだな。そりゃそうだ。冷静に考えれば、子供を運ぶんだから、箱とか樽のが都合が良いわな。


 見張りの一人はうらつらしているので、擬態を使い、こっそりと、アリアを回収する。


 おいおい、触手で吊り上げられてもまだ寝てるよ。肝座ってんなぁ……。

 肝座ってなきゃ、縛り上げられてた樽の中で寝れる訳ないか。


 誰もいない事を確認し、路地でロープを切る。


 ミッションコンプリートだ。


 これでゲームなら、経験値と金がもらえるんだろうが、俺が手に入れたのは安堵だけのようだ。


 それだけだが、実に悪くない。


 アリアが近くにいれば、アリアが俺がテイムされたモンスターだと、説明してくれるしな。


「んっ……あら?レルレゲント?」


 お、起きたみたいだ。


「遅かったわね。従魔なんだから、とっととご主人様を助けに来るものよ!」


 ははっ、今は好きなだけ軽口を叩いてくれていい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前:モノリ 性別:不明


 種族:スティンガープラント(ヴドァ)


 Lv3/30

 HP90/90

 MP60/60


 状態:普通


 常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.4》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.4》《魔力感知Lv.4》


 任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.2》《植物成長速度Lv.2》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.4》


 獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.5》《打撃耐性Lv.3》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.2》《風耐性Lv.1》


 魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘


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